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5話 なんのために生き返ったの?
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意識が戻ってからもうすぐ2年になる。あの時、聞いたとおり、私は1年でほぼ10歳の子供くらいに動けるようになり、今では実年齢に追いついている。もう普通に歩けるし、話すこともできる。身の回りのことも自分でできるのだが、殿下、いやアルフレード様はいまだに私に何もさせてくれない。それどころか私の部屋には結界が張られ、入ることは可能だが、私は誰かと一緒でないと部屋を出ることができない。まるで監禁されているようだ。
「殿下、私はもう一人でなんでもできます。自分でやらせて下さい」
「殿下ではない。名前で、アルフレードと呼んでほしいといつも言っているだろう。私がやりたくてやっているのだ。気にすることはない」
気にするに決まっている。私はもう赤子ではないし、私にも意思がある。
年月が経つに連れて、自分の立場や状況がわかってきた。アルフレード様は現在大公としてこの地、ズューデンラント公国を治めている。私は魔導士のゲオルグ様の家の養女になり、公爵令嬢として、第2王子であったアルフレード様と結婚したようだ。身分違いは解消されたので結婚に問題はなかった。
あの事件のことは表に出ることはなく、秘密裏に片付けられたので、私の醜聞が出回ることもなかったと言う。あの時、私を拉致したエスメラルダ様と令息達は死んだ方がいいと思うくらい辛い罰を与え、学園で私に危害を加えていた者は貴族として生きられないようにし、家門にも厳しい罰を与えたとアルフレード様が仰っていた。それを話した時のアルフレード様の目は今まで見たこともないような冷徹なものだった。具体的にどんな罰を受けたのかは恐ろしくて聞くことをやめた。
私が眠っていた間に全てアルフレード様が片付けたそうだ。そして私はゲオルグ様の魔法で生き返った。目覚める前も目覚めてからも、アルフレード様が一から十まで私の世話をしてくれている。
私は一応大公夫人なのだが、この屋敷から一歩も出たことがないのでズューデンラント公国がどんな国でどんな人が住んでいるのかも全く分からない。
私は籠の鳥。まるで囚われているかのようだ。
こんなこと望んでいなかった。私はあの時確かにアルフレード様を愛していたが、こんなふうになりたいなんて思っていなかった。今の私には意思などない。私なのに私らしく生きていない。魂が実年齢な近づくにつれ、私の中で葛藤が生まれ大きくなっていった。
これならあの時死んでいた方がましだった。生き返らせるのなら私から感情を取り去って欲しかった。なんの感情もないお人形なら今の暮らしにも耐えられたのかもしれない。
一年半を過ぎた頃から私達は閨事を共にするようになった。夫婦であるのだから当たり前のことなのだろう。跡継ぎも必要だ。だがしかし、それ以来アルフレード様は仕事をする時間以外はずっと同衾し、私は身体も心も疲れ果てベッドから出ることが難しくなった。月のものが来ている時だけが心休まる時間だ。
私は何のために生き返らされたのだろう。もう死んだ方が楽かもしれない。一度逃げようとしてアルフレード様に見つかってしまった。その時から、目に見えない魔法の鎖で足を部屋に繋がれている。鎖は長いので部屋の中は移動できるが部屋から出ることはできない。部屋には浴室やご不浄もあるので、私の生活はこの部屋だけになってしまった。
死にたい。愛されているとみんな言うがこれを愛と言うのだろうか?
学園にさえ入学しなければ、アルフレード様と出会わなければ、私は身分の釣り合う人と普通に結婚して、普通に子供を産み、ささやかな幸せを感じ生きていたはずだ。
アルフレード様を愛していた。でも今は分からない。私が愛していたのはあの時までのアルフレード様。この屋敷に来てからのアルフレード様に対しては、もう今は恐怖しか感じない。
助けてほしい。助けられないのなら殺してほしい。それも無理なら心を壊してほしい。このままアルフレード様の人形で一生を生きる決心がつかない。私には無理だ。
いつの間にかハンナもリンダ様もギルバート様も姿を見せなくなった。もうこの屋敷にいないのか? それともこの部屋に来ないだけか、私には分からない。
アルフレード様と私しかいない。たまに魔力のメンテナンスのためにゲオルグ様が来るだけだ。そういえばそろそろメンテナンスの時期だな。ゲオルグ様に私を殺してくれるようにお願いしてみようかな。
そんなこと無理にきまっている。それなら心を壊してもらおう。いや、そんなことは頼まなくてもじきにそうなりそうだ。
学園に入学する前に戻りたい。アルフレード様と出会う前に戻りたい。私はそう願いながら目を閉じた。
「殿下、私はもう一人でなんでもできます。自分でやらせて下さい」
「殿下ではない。名前で、アルフレードと呼んでほしいといつも言っているだろう。私がやりたくてやっているのだ。気にすることはない」
気にするに決まっている。私はもう赤子ではないし、私にも意思がある。
年月が経つに連れて、自分の立場や状況がわかってきた。アルフレード様は現在大公としてこの地、ズューデンラント公国を治めている。私は魔導士のゲオルグ様の家の養女になり、公爵令嬢として、第2王子であったアルフレード様と結婚したようだ。身分違いは解消されたので結婚に問題はなかった。
あの事件のことは表に出ることはなく、秘密裏に片付けられたので、私の醜聞が出回ることもなかったと言う。あの時、私を拉致したエスメラルダ様と令息達は死んだ方がいいと思うくらい辛い罰を与え、学園で私に危害を加えていた者は貴族として生きられないようにし、家門にも厳しい罰を与えたとアルフレード様が仰っていた。それを話した時のアルフレード様の目は今まで見たこともないような冷徹なものだった。具体的にどんな罰を受けたのかは恐ろしくて聞くことをやめた。
私が眠っていた間に全てアルフレード様が片付けたそうだ。そして私はゲオルグ様の魔法で生き返った。目覚める前も目覚めてからも、アルフレード様が一から十まで私の世話をしてくれている。
私は一応大公夫人なのだが、この屋敷から一歩も出たことがないのでズューデンラント公国がどんな国でどんな人が住んでいるのかも全く分からない。
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こんなこと望んでいなかった。私はあの時確かにアルフレード様を愛していたが、こんなふうになりたいなんて思っていなかった。今の私には意思などない。私なのに私らしく生きていない。魂が実年齢な近づくにつれ、私の中で葛藤が生まれ大きくなっていった。
これならあの時死んでいた方がましだった。生き返らせるのなら私から感情を取り去って欲しかった。なんの感情もないお人形なら今の暮らしにも耐えられたのかもしれない。
一年半を過ぎた頃から私達は閨事を共にするようになった。夫婦であるのだから当たり前のことなのだろう。跡継ぎも必要だ。だがしかし、それ以来アルフレード様は仕事をする時間以外はずっと同衾し、私は身体も心も疲れ果てベッドから出ることが難しくなった。月のものが来ている時だけが心休まる時間だ。
私は何のために生き返らされたのだろう。もう死んだ方が楽かもしれない。一度逃げようとしてアルフレード様に見つかってしまった。その時から、目に見えない魔法の鎖で足を部屋に繋がれている。鎖は長いので部屋の中は移動できるが部屋から出ることはできない。部屋には浴室やご不浄もあるので、私の生活はこの部屋だけになってしまった。
死にたい。愛されているとみんな言うがこれを愛と言うのだろうか?
学園にさえ入学しなければ、アルフレード様と出会わなければ、私は身分の釣り合う人と普通に結婚して、普通に子供を産み、ささやかな幸せを感じ生きていたはずだ。
アルフレード様を愛していた。でも今は分からない。私が愛していたのはあの時までのアルフレード様。この屋敷に来てからのアルフレード様に対しては、もう今は恐怖しか感じない。
助けてほしい。助けられないのなら殺してほしい。それも無理なら心を壊してほしい。このままアルフレード様の人形で一生を生きる決心がつかない。私には無理だ。
いつの間にかハンナもリンダ様もギルバート様も姿を見せなくなった。もうこの屋敷にいないのか? それともこの部屋に来ないだけか、私には分からない。
アルフレード様と私しかいない。たまに魔力のメンテナンスのためにゲオルグ様が来るだけだ。そういえばそろそろメンテナンスの時期だな。ゲオルグ様に私を殺してくれるようにお願いしてみようかな。
そんなこと無理にきまっている。それなら心を壊してもらおう。いや、そんなことは頼まなくてもじきにそうなりそうだ。
学園に入学する前に戻りたい。アルフレード様と出会う前に戻りたい。私はそう願いながら目を閉じた。
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