9 / 26
アマーリエ殿下
「シル~、久しぶりね。足はどう?」
到着するなりアマーリエ様は熱い抱擁で歓迎してくれた。
「ぼちぼちですわ。まだ地獄のリハビリ中です。乗馬ができるようになるのはまだ少し先になりそうです」
「会のみんなも心配しているわ。本当にあの女は女の敵だわ」
アマーリエ様、そんなに握ったら扇子が折れちゃうよ。
「そうそう、お父様から聞いたわ。魅了らしいわね」
「はい」
「まだ証拠が出ていないらしいけど、証拠なんて無くてもいいじゃない魅了は極刑だけど、あっさり殺すのはつまらないわ。シルだけじゃなく、デルやイレーネ、ローザ、アンリ達に嫌な思いをさせた奴なんか許せないわ。ちょっと調べてみたけど、エロジジィ達とも仲良くしてるみたいだし、いままでも何人もの女の子を不幸にしてるようだわ。あんな女はキツい拷問をしたり、死んだ方がましだと思うくらい死ぬより辛い事したいわね」
いやいや、そこまでしなくても。
「私はエーベルハルトを廃嫡にさせようと思ってるの。モーリッツを王太子にしてデルと結婚させてはどうかと父母には話したの」
なるほどな。確かにモーリッツ殿下の方が国王に向いている気がする。デルフィーヌ様とも仲がいいし、モーリッツ殿下は婚約者がいないからいいかもしれない。エーベルハルト殿下の復活は難しいかもしれないし。
「デルフィーヌ様はなんと?」
「おまかせします……だって」
おまかせしますか。
「デルは小さい時から将来の王妃になるために物凄く努力してきたわ。頭もいいし、語学も万能だし、エーベルハルトよりデルの方がこの国には必要なの。魅了の魔法にかかるなんて王族の恥よ。そんな危機管理能力のない王太子、他国の王家は相手にしないわ。もうエーベルハルトは終わりなのよ」
そうなのか。エミール様といい、エーベルハルト殿下といい、親族からの評判が悪いな。
「それにしても、エミールは大丈夫なの? お父様から作戦を聞いたけど、魅了にかかったふりなんてできるのかしら? エミールは無骨で不器用でほんとに堅物でしょう? きっとザラもイマイチ気乗りしなかったから魔法のかかりが浅かったのかもね」
エミール様、言われ放題だな。
「ははは、崖っぷちなんでがんばるんじゃないですかね」
私は乾いた笑いを浮かべた。
エーベルハルト殿下や側近達、ザラ嬢は王子宮にいるので、王女宮にいるアマーリエ様と会う機会はないらしい。
「それで私ね、挨拶に来なさいって呼んだのよ。そしたらエーベルのやつ、苛烈な姉上に合わせるわけには行きませんって拒否したのよ」
まぁ、拒否したくなる気持ちもわからないではない。
「でね。今日はお茶会でシルも来るから来なさいって言ったの。これも作戦。エミールを援護射撃ね」
アマーリエ様も私を囮に使う気だな。
「影が沢山いるから心配ないわ。というか、シルも影を連れているじゃない。ふたりでびびらせて尻尾出させましょうよ。ザラはシルがひとりだけ婚約破棄されてないのが面白くないから、何かしてくるはず。ザラとエーベルが王女宮にいる間にエミールに後の側近達の魔法を解く薬を飲ませてもらうわ」
なるほどアマーリエ様の助け船か。
「ザラに思う存分喋ってもらいましょう」
私は持ってきた自白剤をアマーリエ様に見せた。
「ブラボー! 影! ザラの喋りを録画しておいてね。それにしてもシル、やばいもの持ってるわね」
骨折した時に絶対仕返ししてやろうと近衛騎士団長にお願いして分けてもらったのだ。『シルフィア嬢、仕返しですね。協力いたします』と言って手渡してくれた。
「あんな女に舐められたままではこの国の貴族が笑われます」
自白剤をザラ嬢に飲ませてエーベルハルト殿下に現実を見せる。もちろん殿下のお茶には解呪剤を入れるわ。
ザラにこの国は渡さない。
到着するなりアマーリエ様は熱い抱擁で歓迎してくれた。
「ぼちぼちですわ。まだ地獄のリハビリ中です。乗馬ができるようになるのはまだ少し先になりそうです」
「会のみんなも心配しているわ。本当にあの女は女の敵だわ」
アマーリエ様、そんなに握ったら扇子が折れちゃうよ。
「そうそう、お父様から聞いたわ。魅了らしいわね」
「はい」
「まだ証拠が出ていないらしいけど、証拠なんて無くてもいいじゃない魅了は極刑だけど、あっさり殺すのはつまらないわ。シルだけじゃなく、デルやイレーネ、ローザ、アンリ達に嫌な思いをさせた奴なんか許せないわ。ちょっと調べてみたけど、エロジジィ達とも仲良くしてるみたいだし、いままでも何人もの女の子を不幸にしてるようだわ。あんな女はキツい拷問をしたり、死んだ方がましだと思うくらい死ぬより辛い事したいわね」
いやいや、そこまでしなくても。
「私はエーベルハルトを廃嫡にさせようと思ってるの。モーリッツを王太子にしてデルと結婚させてはどうかと父母には話したの」
なるほどな。確かにモーリッツ殿下の方が国王に向いている気がする。デルフィーヌ様とも仲がいいし、モーリッツ殿下は婚約者がいないからいいかもしれない。エーベルハルト殿下の復活は難しいかもしれないし。
「デルフィーヌ様はなんと?」
「おまかせします……だって」
おまかせしますか。
「デルは小さい時から将来の王妃になるために物凄く努力してきたわ。頭もいいし、語学も万能だし、エーベルハルトよりデルの方がこの国には必要なの。魅了の魔法にかかるなんて王族の恥よ。そんな危機管理能力のない王太子、他国の王家は相手にしないわ。もうエーベルハルトは終わりなのよ」
そうなのか。エミール様といい、エーベルハルト殿下といい、親族からの評判が悪いな。
「それにしても、エミールは大丈夫なの? お父様から作戦を聞いたけど、魅了にかかったふりなんてできるのかしら? エミールは無骨で不器用でほんとに堅物でしょう? きっとザラもイマイチ気乗りしなかったから魔法のかかりが浅かったのかもね」
エミール様、言われ放題だな。
「ははは、崖っぷちなんでがんばるんじゃないですかね」
私は乾いた笑いを浮かべた。
エーベルハルト殿下や側近達、ザラ嬢は王子宮にいるので、王女宮にいるアマーリエ様と会う機会はないらしい。
「それで私ね、挨拶に来なさいって呼んだのよ。そしたらエーベルのやつ、苛烈な姉上に合わせるわけには行きませんって拒否したのよ」
まぁ、拒否したくなる気持ちもわからないではない。
「でね。今日はお茶会でシルも来るから来なさいって言ったの。これも作戦。エミールを援護射撃ね」
アマーリエ様も私を囮に使う気だな。
「影が沢山いるから心配ないわ。というか、シルも影を連れているじゃない。ふたりでびびらせて尻尾出させましょうよ。ザラはシルがひとりだけ婚約破棄されてないのが面白くないから、何かしてくるはず。ザラとエーベルが王女宮にいる間にエミールに後の側近達の魔法を解く薬を飲ませてもらうわ」
なるほどアマーリエ様の助け船か。
「ザラに思う存分喋ってもらいましょう」
私は持ってきた自白剤をアマーリエ様に見せた。
「ブラボー! 影! ザラの喋りを録画しておいてね。それにしてもシル、やばいもの持ってるわね」
骨折した時に絶対仕返ししてやろうと近衛騎士団長にお願いして分けてもらったのだ。『シルフィア嬢、仕返しですね。協力いたします』と言って手渡してくれた。
「あんな女に舐められたままではこの国の貴族が笑われます」
自白剤をザラ嬢に飲ませてエーベルハルト殿下に現実を見せる。もちろん殿下のお茶には解呪剤を入れるわ。
ザラにこの国は渡さない。
あなたにおすすめの小説
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
運命の人ではなかっただけ
Rj
恋愛
教会で結婚の誓いをたてる十日前に婚約者のショーンから結婚できないといわれたアリス。ショーンは運命の人に出会ったという。傷心のアリスに周囲のさまざまな思惑がとびかう。
全十一話
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。