【完結】冤罪で処刑された令嬢は、幽霊になり復讐を楽しむ

金峯蓮華

文字の大きさ
13 / 35
レティシア・バーレント

13話 ラルフ・シュタインの独白(ラルフ視点)

しおりを挟む
 俺がレティシア様と初めて会ったのはまだ王宮の騎士になったばかりの頃だった。

 伯爵家の三男の俺は継ぐ家がない。貴族でいるには、どこかに婿入りするか、騎士になって騎士爵をもらうしかない。

 貴族の世界にうんざりしているし、この容姿と性格では婿入りは難しい。身体が大きく、腕に自信があった俺は騎士になることにした。

 しかし、貴族の付き合いが嫌で騎士になったのに、騎士の世界も大して変わらなかった。俺は強いのは強いが、頭が固く融通が利かない。口下手で人付き合いも苦手だ。

 強かったせいで、入団してすぐに王宮勤務になった俺は周りからかなり妬まれていて、小さな嫌がらせをちょくちょく受けていた。

 あの日は他国から来賓があり、腕が立つからと新人の俺も警備に駆り出された。同じ持ち場の先輩達は俺ひとりに警備を押し付けサボっている。俺の持ち場は人通りが少なく暇といえば暇な場所だ。しかし、そんな場所こそしっかり警備しなくてはならい。いいかげんな先輩達に辟易していた。

 先輩から上役が呼んでいると言われ、案内のメイドについてその場所に行くと、そこには誰もいなかった。

「すぐに参りますので少々お待ちください」

 栗色の髪のメイドは頭を下げ、姿を消した。

 しばらく待ったが、上役が来る様子は全くない。もうすぐ点呼の時間だ。一旦戻って点呼を済ませた後、また来ることにしよう。

 俺は上役宛に手紙を残し、部屋から出ようとしたが、鍵がかかっていて扉が開かない。どうやら閉じ込められようだ。

 あぁ、またか。疎まれていることはわかっていたが、こんな卑劣な事をするなんて。点呼の時間に間に合わないように閉じ込めて、サボっていたとでも言うつもりだったのだろう。

 とにかくここから出なくては。

 閉じ込められたのは俺の不覚。上役に訴えたところで仕方のないことだ。こんなことで騎士団を首になるなんて悔しいがあんな奴らの嘘を見抜けなかった自分が悪い。

 この部屋にいる事を誰かに気づいてもらう為に、俺は大声を出し続けた。

「誰か! 誰かいませんか! 閉じ込められています!」

 どれくらい時間が経っただろう。もう無理かと諦めかけた時、扉の向こうから幼い子供の声が聞こえてきた。

「人の声がしたような気がするわ」

「ここです。この部屋に閉じ込められています。助けてください」

 恥を忍んで声を出した。

「まぁ、大変。エマ、鍵を持ってきてちょうだい」

「かしこまりました」

幼女はエマという女に鍵を持ってくるように言った。良かった。これで出られる。男の声が聞こえた。

「私はこの王女宮の侍従長をしておりますヨハンと申します。中におられるのはどなたでしょうか?」

 王女宮? ここは王女宮だったのか。

「私は騎士団員で本日の警備をしておりますラルフ・シュタインと申します」

「なぜ、こちらに?」

 俺は扉越しにヨハンに先輩達にこの部屋に閉じ込められたと話した。

「先輩達に意地悪をされたのね」

 幼女の憐れむような声が聞こえた。

 エマという女が鍵を持ってきたようで、ガチャリと音が鳴り、扉が開くと、目の前に年配の男と幼女、そして侍女服を着た中年の女がいた。

「助けていただき、ありがとうございます。いま何時ですか?」

 男はポケットから懐中時計を取り出して、時間を教えてくれた。

 もう、点呼の時間には間に合わない。勝手に持ち場を離れた俺はきっと首だな。

 項垂れている俺に幼女が声をかけた。

「このまま持ち場に戻っても、処分されてしまうわね。本当の事を話しても悪い先輩たちは嘘だと言うでしょう。そうだわ、シュタイン卿は私を助けてくれたことにしましょう」

 この、幼女を助けた事? ヨハンが頷く。

「それがよろしいですね。私とエマが証人になります。シュタイン卿は具合いが悪くなった姫様を見つけ、介抱していたということにしましょう」

 姫様? まさか、この幼女は身体が弱く、王女宮で静養されているレティシア姫か? 

「真実は後程、団長に伝えればいいわ。シュタイン卿、私を抱っこして下さる? そのまま、あなたの上役の元に行くわ」

「ありがとうございます。しかし、姫様、なぜ私のようなものにそこまでして下さるのですか」

「正しい者が邪悪な者に虐げられるのは嫌なの。あなたはきっと優秀な騎士で、妬まれているのでしょう? 優秀なあなたがこんなことで処分されては我が国の損失ですもの。あなたの不利にならないように、上手く。その先輩達も罰します。安心してね」

 こんなに幼いのに姫は姫なんだ。

 俺は具合いが悪くなった姫様を保護し、介抱していて、点呼時間に間に合わなかっと3人が上役に説明してくれた為、処分されずに済んだ。ただその時は誰かに伝えてから持ち場を離れろとお叱りは受けた。

 しかし、ヨハンが緊急を要することだったので、その場には誰もおらず、伝達もできなかったと言ってくれたので、あいつらが俺ひとりに警備を押し付け、サボっていたことも上役にバレ、反対にあいつらが処分された。

 それからしばらくして、俺が嫌がらせを受けている話がレティシア姫経由で騎士団長に伝わったようで、それに関係していた者達が皆、処分された。

 もちろん、俺がそんな目に会っていたことは表には出ず、俺の誇り護られた。

 それからは、あからさまに嫌がらせをされることはなくなった。

 俺はレティシア姫様の恩にむくいるために、それまで以上に鍛錬した。いつか姫様専属の護衛騎士になることが俺の目標になった。

 そして、俺は近衛騎士になり、国王陛下付きになった。

 近衛騎士になり、3年経ったあの日、突然、陛下に呼ばれた。

「ラルフ、お前、レティシアの専属になってくれんか」

 陛下がそうおっしゃられた時、身体が震えた。黙り込んでいる俺に陛下は勘違いをしたようだ。

「やっぱり嫌か? これは決して左遷ではないのだ。姫は身体が元気になり、これから社交の場に出ることも増える。お前なら安心して姫を任せられると思うのだ」

 誰が左遷などと思うものか。栄転どころか、これ以上の幸せはない。

「御意。有難き幸せ。この命に替えても姫様をお護り致します」

 俺は居住いを正し、陛下に即答した。

 やっと、やっと姫様に恩を返せる時が来た。俺は天にも昇る気持ちになった。

 死んでも姫様を護る。俺は決意を新たにした。


しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

婚約破棄された地味令嬢は、無能と呼ばれた伯爵令息と政略結婚する ~あなたが捨てたのは宝石でした~

新川 さとし
恋愛
「地味で可愛げがない」と婚約破棄された侯爵令嬢クリスティーヌ。 王子の政務を陰で支え続けた功績は、すべて無かったことにされた。 居場所を失った彼女に差し出されたのは、“無能”と噂される伯爵令息ノエルとの政略結婚。 しかし彼の正体は、顔と名前を覚えられない代わりに、圧倒的な知識と判断力を持つ天才だった。 「あなたの価値は、私が覚えています」 そう言って彼の“索引(インデックス)”となることを選んだクリスティーヌ。 二人が手を取り合ったとき、社交界も、王家も、やがて後悔することになる。 これは、不遇な二人が“最良の政略結婚”を選び取り、 静かに、確実に、幸せと評価を積み上げていく物語。 ※本作は完結済み(全11話)です。 安心して最後までお楽しみください。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完】王妃の座を愛人に奪われたので娼婦になって出直します

112
恋愛
伯爵令嬢エレオノールは、皇太子ジョンと結婚した。 三年に及ぶ結婚生活では一度も床を共にせず、ジョンは愛人ココットにうつつを抜かす。 やがて王が亡くなり、ジョンに王冠が回ってくる。 するとエレオノールの王妃は剥奪され、ココットが王妃となる。 王宮からも伯爵家からも追い出されたエレオノールは、娼婦となる道を選ぶ。

処理中です...