【完結】冤罪で処刑された令嬢は、幽霊になり復讐を楽しむ

金峯蓮華

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レティシア・バーレント

27話 アレンス王国へ

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 アレンス王国に軍隊を作るために、バーレント軍の副隊長と何人かの隊員達、事務方、そして最初だけ父が一緒にアレンス王国に向かった。

 みんなはしばらく在住するが、父はすぐにアレンス王国に戻ってくる予定だった。

 アレンス王国に行っている父の従者から伝書バードという魔道具で連絡が来たのはアレンスに到着して3日目のことだった。

 手紙を読んだ兄は顔をこわばらせた。

「父上が重傷を負ったそうだ」

 どういうこと? 母は青を顔になった。

「どうして? 何があったの? クレール王国との戦争は終わったのでしょう?」

「ええ、犯人はガイスト人のようです。国を分断された恨みから、国連から派遣されている父上を狙ったとされていますが、多分暗部の残党でしょうね」

「護衛は何をしていたの!」

 母は声を荒げている。

「入隊希望を装って、近づいたようです。気づくのが遅れたと」

「容体は?」

「命に別状は無いようです。ドメル王国の魔法医師が治療してくれているようですが、ゆっくりでないと身体が魔法に拒否反応を起こすようで、様子を見ながら治療していると書いています。とにかく今から私が向かいます。現地に行ってみないと細かいことがわからない」

 母が兄の腕を掴んだ。

「ダメよ。あなたまで何かあったらどうするの? 私が行きます。私なら簡単な治療もできるわ」

 そういえば母は簡単な傷や病なら魔法で治すことができたな。でも、本当に簡単なものだけだ。

 兄が母の手を押さえた。

「いや、母は父の代理です。我が国を離れる訳には行きません」

 ふたりはどちらが行くか押し問答をしている。

「私が行くわ。ラルフやフィーネも一緒に行ってもらう。そしてお父様を連れて帰ってくるわ」

 私の申し出にふたりは驚いているようだ。

 フィーネが母の顔を見た。

「王妃様、私もそれがいいと思います。クーアの者も沢山連れて行きます。姫様はとてもお強いですし、私とラルフがいれば問題はないと思います」

 母は頷いた。

「そうね。では、レティに私の魔力を分けるわ。レティは薬の副作用で魔力が弱くなってしまったけど、器自体は大きいの。魔力を分けるから、何か困ったことがあったら魔法を使いなさい。わかったわね」

「はい」

 魔法か。使ったことないし、多分いらないと思うけどあって邪魔にはならない。

「それと、何か困ったことがあったらゲイル公爵夫人を頼りなさい。わかったわね」

 母はそう言うと私に魔力を流し込んできた。母の魔力はとても心地よい。

 しかし、なんでゲイル公爵夫人? 母と母は知り合いなのか? そういえば母はドメル王国の出身だったような気がする。魔法も使っていたしなぁ。

 最後まで兄はゴネていたが、結局私達がアレンス王国に行くことになった。

 向こうに着いたら、魔道具であちらの様子を母や兄に連絡するのが条件で、私のアレンス王国行きをのんだ。水晶のお皿のような魔道具は色々なものを写すことができる。マジックボックスにも沢山の支援物資や必要そうなものを入れた。やはり魔法があると便利だ。

「では、行ってまいります」

「気をつけてね。早く戻ってくるのよ」

「レティ、無茶なことはするなよ。ラルフ、フィーネ、レティを頼む」

 母や兄達に見送られ、私達は魔馬車に乗り、アレンス王国に向けて旅立った。


~*~*~*~


  魔馬車はあっという間にアレンス王国に到着した。少し乗り物酔いのような感じがして気持ちが悪い。フィーネがペパーミントの葉から作った飴をくれた。

「これで少しマシになると思います。クーア家秘伝のレシピで作った乗り物酔いに効く飴です。ゆっくりと舐めて溶かしてくださいね」

 クーア家は秘伝がたくさんある。さすが暗部としかいいようがない。

 飴のおかげで少し楽になった。


 アレンス王国は思った以上に酷い状態だった。海岸線沿いの街くらいしか被害にあっていないと聞いていたのだが、王都もかなり被害を受けている。

 フィーネはため息をついた。

「これは潜入していたガイストの暗部の者達の仕業でしょう。軍隊が上陸するのと同時に街中でも攻撃を始めたと聞きましたが、ここまでとは……」

「予想以上で驚いたわ。国連軍が入って、制圧したと聞いたけど……」

「そうですね。国連の魔導師達が潜入しているガイスト人を捕縛したと聞いていましたが、残党がいたのですね」

「陛下が倒れてから、再び残党狩りをして、今はガイストの間者はいなくなったようだが、用心に越したことはない。フィーネ、気を引き締めていくぞ」

 ラルフの言葉にフィーネは頷く。


 私達は父が静養している王宮に案内された。案内してくれている人は見たことはあったが直接知らない人だ。よかった。いきなり知り合いに出てこられたらどうしようかと思っていた。

 子供の頃から王子妃教育で毎日のように通っていた王宮だ。懐かしい。勝手知ったる王宮。案内などされなくてもどこでもわかるが、はじめてのフリをしなくてはならない。

 案内された部屋の扉を開けると中には、ベッドに横たわる父がいた。

「お父様!」

「レティ、来てくれたのか」

 包帯を巻かれてはいるが元気そうだ。

「脚をやられて、魔法医師達が治療してくれているから回復は早いが、歩くのがまだ少しおぼつかない。まぁ、元気だ」

 父は軍隊の入隊希望者の面接を見学している時に不意を突かれ脚に傷を負ったそうだ。

「我が国の護衛騎士達がついていながら申し訳ない」

 この声はアレンスの国王陛下か。懐かしい声だ。

「アレンス王国の輝ける太陽であられる国王陛下にご挨拶もうしあげます。父がお世話になり、ありがとうございます。私はバーレント王国が次女、レティシアと申します」

「レティシア……」

 国王は私を見て固まっている。レティシア・ゲイルとレティシア・バーレントは似ても似つかない別人だ。それなのになんでだろう。

「すまない。昔、我が国にもレティシアという名の令嬢がいたのだ。素晴らしい令嬢で私の義娘になるはずだった。愚息のせいで……」

 陛下は俯いている。

「レティシア姫、私はアレンス王国の王妃です。バーレント王のこと、護れなくて申し訳ありませんでした」

 王妃は私の手を握った。

「いえ、我が国の護衛達もボンクラしていたのです。アレンス王国のせいではありません。父は思ったより元気だったので安堵しております」

 王妃ははらりと涙を流した。

「何故かしら、あなたとあのレティシアは全く似ていないのに、あなたにあの子を感じるの。ごめんなさいね。涙が止まらないわ」

 王妃様、凄い。私がレティシア・ゲイルだと本能で見抜いているのだな。

 カミングアウトするつもりはないが、せっかくアレンスに来たのだがらゲイルの父母にも会いたい。

「名前が同じだからでしょうか? 王妃様にとって大切な方だったのですね」

「ええ、実の娘のようだったわ」

 あら、どうしよう。涙が溢れてきた。



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