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ユリウスの長い独白(もちろんユリウス視点)

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 あの時、ヴィオと別れてから後悔ばかりだ。

 なぜあんな風に言ってしまったのか。まさかヴィオがあんなこと言うなんて思ってもみなかった。

 やっぱり俺が嫌なのだろうか?

 婚約を解消され、傷心だったはず。そんな時に俺と婚約させられた。
 今度は年の離れた冷酷で冷徹な騎士だと言われている俺だ。

 確かに俺は冷酷で冷徹だ。いつも無表情で冷たい男だと自分でも思う。
 でも、ヴィオに対しては、ヴィオにだけはそうではなかったはず。
 俺は初めて会った時からヴィオしか見えなかった。騎士になったのだって、あの時ヴィオが読んでいた絵本に出てくる騎士がカッコいい、大好きだとヴィオが言ったからだ。

 俺が「ヴィオは騎士が好きか?」と聞いたら、ヴィオは「うん。ヴィオは騎士様が好き! 騎士様のお嫁さんになるの!」と恥ずかしそうに頬を染めながら言った。

「俺が騎士になったら結婚してくれるか?」
 俺がそう聞くとヴィオはにっこり笑って「いいよ」と答えた。
 その時俺はヴィオに一生仕えることを誓った。

 もう騎士になるしかない。いや、騎士以外になるものなどない。
 俺は父上に公爵家の仕事もちゃんとやる。時が来たら騎士を辞め、必ず公爵家を継ぐからそれまで騎士をやらせて欲しいと願い、厳しい鍛錬を積み騎士になった。

 しかし、俺が鍛錬のために王都を離れている間にヴィオは第2王子の婚約者にされていた。

 騎士になる為に鍛錬などする前にどうして先にヴィオにきちんと婚約を申し込まなかったのかと死ぬほど後悔した。口約束ではなく、親も巻き込んできちんと書類上で婚約しておくべきだった。

 相手は王族。伯爵家も断れなかったのだろう。

 ヴィオの婚約者は嫌なやつだった。第1王子の側近だった俺は、王宮に出入りし、あいつがヴィオに何かしないかいつも目を光らせていた。
 あいつやあいつの母親の側妃、そしてあいつの妹がヴィオに高圧的な態度を取るたびに魔法で小さな嫌がらせをしてやっていた。俺は一生をヴィオに捧げている。もし、ヴィオがあいつと結婚しなければならないのなら一生騎士としてあいつらからヴィオを護る。あまりにも目に余るなら暗殺もしかりだ。

 ヴィオは王子妃教育の為に第1王子の婚約者のクリスティーナ嬢と一緒に王宮で勉学に励んでいる。どうやらヴィオも第2王子が嫌いなようで必要以上に接触はしなかった。

 3年前、俺は第1王子に呼ばれた。殿下のサロンに行くと、殿下の他に王妃様、母上、父上、殿下の婚約者のクリスティーナ嬢の父親のダントン侯爵、そしてヴィオの父親のメトロファン伯爵がいた。
 俺はそこで、王弟である叔父上が父上の側妃と結託し謀反を企てていると知った。
 
 ヴィオとの婚約はメトロファン伯爵と伯爵の実家である隣国の王家を味方にひきいれようとしていたためらしい。
 側妃の実家も叔父上の妃の実も下位貴族なので金はあっても力がない。叔父上は後ろ盾がほしかったようだ。

 情報はつかんでいるがなかなか尻尾を出さない。
 そこで我々は謀反阻止の為に動き出した。
 まず、他国からの視察団を我が国に迎えた。もちろん嘘の視察団だ。王妃様がグルなので話はスムーズだ。
 視察団の代表はその国の王女とした。王女はとても美人だ。王女に第2王子を誘惑させた。まぁ、王女といっても影が化けているだけだ。もちろん視察団も影たちだ。
 そう、我がアルブラン公爵家は昔から裏の顔は王家の諜報機関で影を使い人に言えない仕事をしていた。
 母上が我が家に降嫁したのもそのあたりの事情だろう。母上は影のドンだからな。

 第2王子は真実の愛を見つけたと言い、ヴィオとの婚約を解消し、使節団に着いて行ってしまった。
 叔父上や側妃に説得されたが聞く耳を持たなかったようだ。そりゃそうだろう。魅了の魔法でしっかり魅了されていたのだからな。
 それからあいつがどうなったのか俺は知らない。ただもう一生会うことはないだろう。

 俺はすぐにヴィオに婚約を申し込んだ。
 ヴィオはあまり乗り気ではなかったが、今度こそ遅れをとってヴィオをまた誰かに取られてはたまらない。

 そして、第2王子がいなくなった叔父上陣営は王女を俺と結婚させようと考えた。
 筆頭公爵家と繋がりができれば第1王子陣営に対抗できると。もちろん叔父上は我が家が王家の影を取り仕切る諜報機関とは知らない。ヴィオを捕らえ、人質にし、俺を操ろうとしていた。
 しかし、叔父上たちに邪魔者なのか追い風なのかわからないやつらが事件を起こした。それがキサナマバ伯爵家だ。俺に横恋慕し、ヴィオを傷つけようとしたあの事件だ。

 ヴィオがダメだと諦めたやつらはこんどはクリスティーナ嬢を攫い、第1王子を亡き者にしようとした。もちろんそんな計画はとっくにバレている。
 クリスティーナ嬢に囮になってもらい、一網打尽にできた。我が国から危険分子は消えた。
 もちろんキサナマバ伯爵家も叔父上達の仲間だったということにして処分した。

 俺は全てが終わり、気を抜いていたのかもしれない。

 結婚式も近づき、やっとヴィオを自分のものにできると調子に乗っていた。
 そしてヴィオを怒らせてしまった。


「ユリウス、昨日ヴィオレッタ嬢が、貴族街で、同じくらいの年の貴族令息らしき男と楽しそうにしていたらしいぞ」
 えっ? ヴィオが?

 殿下は意地悪い笑いを浮かべている。

「私見ましたの。あまりに楽しそうだったので声をかけそびれましたわ」
 クリスティーナ嬢までそんなことをいう。

 俺はすぐにメトロファン伯爵家に向かった。






*ユリウスの独白長くてすみません。この男、無口な設定だったのですが、結構よく喋りますね。4歳くらいからヴィオレッタに執着していたとはちょいと引きます。
 1人の時の一人称は俺なんですね。ユリウスはオンとオフをちゃんと分けてるようです。

 しかし、本当に側妃と王弟って謀反を企てていたのかしら? うっとおしいので王妃や元王女に嵌められたんじゃないの? と作者は思ったりするのですが、怖いのでその辺りは不問にしときます。

 なんだか第1王子もクリスティーナ嬢も腹黒っぽいですね。
 この話の登場人物はヴィオレッタ以外はみんな腹黒要素あるひとばかり。
 だって作者が腹黒好きなんで自然とそうなっちゃうみたいです。

 腹黒好きの皆さんに楽しんでもらえると嬉しいです*
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