【完結】王子から婚約解消されましたが、次期公爵様と婚約して、みんなから溺愛されています

金峯蓮華

文字の大きさ
20 / 50

ユリウスの長い独白(もちろんユリウス視点)

しおりを挟む
 あの時、ヴィオと別れてから後悔ばかりだ。

 なぜあんな風に言ってしまったのか。まさかヴィオがあんなこと言うなんて思ってもみなかった。

 やっぱり俺が嫌なのだろうか?

 婚約を解消され、傷心だったはず。そんな時に俺と婚約させられた。
 今度は年の離れた冷酷で冷徹な騎士だと言われている俺だ。

 確かに俺は冷酷で冷徹だ。いつも無表情で冷たい男だと自分でも思う。
 でも、ヴィオに対しては、ヴィオにだけはそうではなかったはず。
 俺は初めて会った時からヴィオしか見えなかった。騎士になったのだって、あの時ヴィオが読んでいた絵本に出てくる騎士がカッコいい、大好きだとヴィオが言ったからだ。

 俺が「ヴィオは騎士が好きか?」と聞いたら、ヴィオは「うん。ヴィオは騎士様が好き! 騎士様のお嫁さんになるの!」と恥ずかしそうに頬を染めながら言った。

「俺が騎士になったら結婚してくれるか?」
 俺がそう聞くとヴィオはにっこり笑って「いいよ」と答えた。
 その時俺はヴィオに一生仕えることを誓った。

 もう騎士になるしかない。いや、騎士以外になるものなどない。
 俺は父上に公爵家の仕事もちゃんとやる。時が来たら騎士を辞め、必ず公爵家を継ぐからそれまで騎士をやらせて欲しいと願い、厳しい鍛錬を積み騎士になった。

 しかし、俺が鍛錬のために王都を離れている間にヴィオは第2王子の婚約者にされていた。

 騎士になる為に鍛錬などする前にどうして先にヴィオにきちんと婚約を申し込まなかったのかと死ぬほど後悔した。口約束ではなく、親も巻き込んできちんと書類上で婚約しておくべきだった。

 相手は王族。伯爵家も断れなかったのだろう。

 ヴィオの婚約者は嫌なやつだった。第1王子の側近だった俺は、王宮に出入りし、あいつがヴィオに何かしないかいつも目を光らせていた。
 あいつやあいつの母親の側妃、そしてあいつの妹がヴィオに高圧的な態度を取るたびに魔法で小さな嫌がらせをしてやっていた。俺は一生をヴィオに捧げている。もし、ヴィオがあいつと結婚しなければならないのなら一生騎士としてあいつらからヴィオを護る。あまりにも目に余るなら暗殺もしかりだ。

 ヴィオは王子妃教育の為に第1王子の婚約者のクリスティーナ嬢と一緒に王宮で勉学に励んでいる。どうやらヴィオも第2王子が嫌いなようで必要以上に接触はしなかった。

 3年前、俺は第1王子に呼ばれた。殿下のサロンに行くと、殿下の他に王妃様、母上、父上、殿下の婚約者のクリスティーナ嬢の父親のダントン侯爵、そしてヴィオの父親のメトロファン伯爵がいた。
 俺はそこで、王弟である叔父上が父上の側妃と結託し謀反を企てていると知った。
 
 ヴィオとの婚約はメトロファン伯爵と伯爵の実家である隣国の王家を味方にひきいれようとしていたためらしい。
 側妃の実家も叔父上の妃の実も下位貴族なので金はあっても力がない。叔父上は後ろ盾がほしかったようだ。

 情報はつかんでいるがなかなか尻尾を出さない。
 そこで我々は謀反阻止の為に動き出した。
 まず、他国からの視察団を我が国に迎えた。もちろん嘘の視察団だ。王妃様がグルなので話はスムーズだ。
 視察団の代表はその国の王女とした。王女はとても美人だ。王女に第2王子を誘惑させた。まぁ、王女といっても影が化けているだけだ。もちろん視察団も影たちだ。
 そう、我がアルブラン公爵家は昔から裏の顔は王家の諜報機関で影を使い人に言えない仕事をしていた。
 母上が我が家に降嫁したのもそのあたりの事情だろう。母上は影のドンだからな。

 第2王子は真実の愛を見つけたと言い、ヴィオとの婚約を解消し、使節団に着いて行ってしまった。
 叔父上や側妃に説得されたが聞く耳を持たなかったようだ。そりゃそうだろう。魅了の魔法でしっかり魅了されていたのだからな。
 それからあいつがどうなったのか俺は知らない。ただもう一生会うことはないだろう。

 俺はすぐにヴィオに婚約を申し込んだ。
 ヴィオはあまり乗り気ではなかったが、今度こそ遅れをとってヴィオをまた誰かに取られてはたまらない。

 そして、第2王子がいなくなった叔父上陣営は王女を俺と結婚させようと考えた。
 筆頭公爵家と繋がりができれば第1王子陣営に対抗できると。もちろん叔父上は我が家が王家の影を取り仕切る諜報機関とは知らない。ヴィオを捕らえ、人質にし、俺を操ろうとしていた。
 しかし、叔父上たちに邪魔者なのか追い風なのかわからないやつらが事件を起こした。それがキサナマバ伯爵家だ。俺に横恋慕し、ヴィオを傷つけようとしたあの事件だ。

 ヴィオがダメだと諦めたやつらはこんどはクリスティーナ嬢を攫い、第1王子を亡き者にしようとした。もちろんそんな計画はとっくにバレている。
 クリスティーナ嬢に囮になってもらい、一網打尽にできた。我が国から危険分子は消えた。
 もちろんキサナマバ伯爵家も叔父上達の仲間だったということにして処分した。

 俺は全てが終わり、気を抜いていたのかもしれない。

 結婚式も近づき、やっとヴィオを自分のものにできると調子に乗っていた。
 そしてヴィオを怒らせてしまった。


「ユリウス、昨日ヴィオレッタ嬢が、貴族街で、同じくらいの年の貴族令息らしき男と楽しそうにしていたらしいぞ」
 えっ? ヴィオが?

 殿下は意地悪い笑いを浮かべている。

「私見ましたの。あまりに楽しそうだったので声をかけそびれましたわ」
 クリスティーナ嬢までそんなことをいう。

 俺はすぐにメトロファン伯爵家に向かった。






*ユリウスの独白長くてすみません。この男、無口な設定だったのですが、結構よく喋りますね。4歳くらいからヴィオレッタに執着していたとはちょいと引きます。
 1人の時の一人称は俺なんですね。ユリウスはオンとオフをちゃんと分けてるようです。

 しかし、本当に側妃と王弟って謀反を企てていたのかしら? うっとおしいので王妃や元王女に嵌められたんじゃないの? と作者は思ったりするのですが、怖いのでその辺りは不問にしときます。

 なんだか第1王子もクリスティーナ嬢も腹黒っぽいですね。
 この話の登場人物はヴィオレッタ以外はみんな腹黒要素あるひとばかり。
 だって作者が腹黒好きなんで自然とそうなっちゃうみたいです。

 腹黒好きの皆さんに楽しんでもらえると嬉しいです*
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

私は愛されていなかった幼妻だとわかっていました

ララ愛
恋愛
ミリアは両親を亡くし侯爵の祖父に育てられたが祖父の紹介で伯爵のクリオに嫁ぐことになった。 ミリアにとって彼は初恋の男性で一目惚れだったがクリオには侯爵に弱みを握られての政略結婚だった。 それを知らないミリアと知っているだろうと冷めた目で見るクリオのすれ違いの結婚生活は誤解と疑惑の 始まりでしかなかった。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

お義兄様に一目惚れした!

よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。 なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。 仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。 そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。 クリステルはセドリックに一目惚れ。 けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。 クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。 ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。 その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら…… 全38話

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

【完結】妻至上主義

Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。 この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。 本編11話+番外編数話 [作者よりご挨拶] 未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。 現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。 お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。 (╥﹏╥) お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

ラヴィニアは逃げられない

恋愛
大好きな婚約者メル=シルバースの心には別の女性がいる。 大好きな彼の恋心が叶うようにと、敢えて悪女の振りをして酷い言葉を浴びせて一方的に別れを突き付けた侯爵令嬢ラヴィニア=キングレイ。 父親からは疎まれ、後妻と異母妹から嫌われていたラヴィニアが家に戻っても居場所がない。どうせ婚約破棄になるのだからと前以て準備をしていた荷物を持ち、家を抜け出して誰でも受け入れると有名な修道院を目指すも……。 ラヴィニアを待っていたのは昏くわらうメルだった。 ※ムーンライトノベルズにも公開しています。

【完結】 生まれ変わってもあなたと

紬あおい
恋愛
政略結婚の筈が、いつの間にかあなたを愛していた。 あなたには溺愛する人が居るのに。 前世と今世で縺れる運命。

処理中です...