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まさかの

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 よかった。やっとヴィオと気持ちが通じ合えた。初めからカッコつけないで思いを伝えればよかったんだ。

 やっとヴィオの口から愛の言葉を聞くことができた。
 やっと男として見てもらえることができた。
 ちゃんと予定通り結婚すると言ってくれた。もう嬉しくて泣きそうだ。

 苦節11年、諦めなくてよかった。あんな婚約者から必ず奪い返すと決めていた。ヴィオは俺のものだ。騎士になったら結婚すると約束したんだ。
 だからどんな汚い手を使っても取り戻すと誓った。もちろんヴィオには汚い姿なんて見せない。裏でどんなことが起こっているかなんて知らなくていい。いつも笑っていてくれればそれでいい。
 俺は浮かれていた。まさかあいつが現れるなんてその時の俺は全く予想していたかった。


「第2王子が我が国に戻ってきています。捕らえますか?」

 影からの報告に耳を疑った。戻っていたのか?

「まだ、捕らえなくていいわ。何をするつもりなのか見極めたいわね」

 母上は扇子を手に考えている。

「とりあえずヴィオちゃんと影を入れ替えるぞ。私達の弱点はヴィオちゃんだ。もし、あいつが全てを知ったのならヴィオちゃんを狙うはずだ」

 父上の言うことはもっともだ。私はすぐにメトロファン伯爵家に向かった。

「影に幻影魔法でヴィオの姿になり、囮になってもらう。ヴィオとフィリップ殿下、エリザベス王女、それに夫人は安全のために私と一緒に我が家に移動してもらいます」

「第2王子が今更何の真似だ」

 私の言葉にメトロファン伯爵が腕を組む。

「南の国で楽しく暮らしていると思っていたのですが、やはり消しておくべきでしたね」
「まぁ、まだ目的がわからない。とにかく安全な場所に避難させてくれ」
 私は皆を乗せた馬車に幻影魔法をかけ、姿を消して我が家に向かった。

 我が家は鉄壁の守りを誇っているネズミ1匹入り込むことは不可能だ。


「パトリシア!」
「お姉さま、第2王子に狙われているというのは本当ですの?」

 夫人が母上に確認している。

「まだはっきりとはわからないけど、影の話によると、あの時国外に出ていた弟の側近が第2王子と接近して、共に秘密裏に我が国に戻ってきたらしいのよ」

 側近? あいつか。あいつは確か側妃の幼馴染だった。やはり復讐か?

「ユリウス様、第2王子は南の国の王女と真実の愛を見つけたので、一緒に着いて行ったのではなかったのですか? 真実の愛じゃなかったのかしら?」

 ヴィオは何も疑っていないようだ。

「そうだね。でも、母上の謀叛を知り、戻ってきたのかもしれない」
「第2王子も見つかったら処刑されるの?」
「それは国王が決めるから、私にはなんとも言えないな。ヴィオは安全の為にみんなとうちにいてくれればいい」

 何がしたくて戻ってきたのかわからないが、ヴィオをに指一本触れさせない。


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