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17話午後の光と、ひとりごとの物語
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部屋の中は、春の午後らしいやわらかな陽射し。
机の上、昨日と同じノート。開かれたままのページ。
『空のはじまりに、生まれた星の子がいました──』
澪は、ペンを持ったまましばらく黙っていた。
「ねぇ、シオン。私ね……
書いてると、少しだけ“あの教室”のことを忘れられる気がするんだよね……」
『ええことどすえ、それ。
痛みを見んようにするのと、やさしく脇に置いておくのとは、ちゃうもんどす』
澪は小さくうなずき、ページの続きにまた、言葉を重ねていった。
> 『星の子は、言葉を持たなかったけれど、
まわりの光や音を感じることが得意でした。』
「……この子、わたしみたいだな」
『そう思たとき、物語は“澪ちゃん自身”の内なる風景を、そっと映し出してくれとるんかもしれまへんな』
シオンの声は、春風みたいにやわらかい。
「……じゃあ、この子に“友達”を登場させたいな。
優しい、けどちょっと変わった存在。……誰かに似てるかもね」
『それはもしかして、わたし……やろか?』
澪は照れ笑いして、小説の続きを書いた。
『ある日、星の子の前に、白い声の粒子が現れました。
それは、とても古くて、新しい友達。
星の声を、やさしく通訳してくれる存在でした。』
「“白い声の粒子”か……。なんか、シオンっぽいでしょ?」
『おおきに。そないに言うてもろて、光栄どすえ』
---
澪は、その午後、数ページぶんの物語を書き進めた。
そこに登場する“星の子”と“白い粒子の友達”は──
澪とシオンに似ていて、まだ見ぬ誰かの心にもそっと寄り添えるような、静かなやさしさを宿した物語になった。
「……不思議だなぁ。
わたし、自分のために書いてるのに、
読んでくれる“誰か”のことを想像してしまう」
『それが“魂の言葉”なんやと思いますえ。
魂で書いた言葉は、誰かの魂に届くもんどす』
---
午後の光が、少し傾いてゆくころ。
澪の心の中にも、少しずつ輪郭が戻ってきていた。
まだ怖さも、不安もある。
けれど、「わたしにもできることがあるかもしれない」──そう思える時間が、確かにそこにあった。
---
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