なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公に転生してるのよ、冗談じゃない!

塚本麗音

文字の大きさ
1 / 13

なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(1話)

しおりを挟む
木枯らしが吹き荒ぶ、冬の寒い朝。
オフィス街を多くのサラリーマン達が出社しようと、競うように先を急ぐ中、ひときわ小柄な女性が大股で歩きながら、皆抜き去っていく。
紺色のパンツスーツにベージュのダッフルコートを羽織、チョコレート色のビジネス鞄を右肩にかけ、ショートヘアの髪を風に靡かせ歩いていく彼女の名前は、鬼崎可憐。

人の波に乗って会社に入り、その流れのままに社員証で入社ゲートを抜けて、エレベーター前に到着。
エレベーターを待っている間にコートを脱いで畳んで手に持ち、職場である28階でエレベーターを降りた。
職場であるオフィスに入り、すれ違う人に挨拶をしながら自分のデスクに座る。
いつもと変わらない、いつもの日常。

「可憐ちゃん、おはよー」
隣のデスクに座る女性、志保が声をかけた。
栗毛色の巻き髪にたれ目のぽっちゃりした女性。
「おはよう、相変わらず早いね」
「家、遠いからね~」
小首をかしげながら志保はふわりと答えた。
「はいこれ、返すね」
可憐がカバンから取り出したのは1本のゲームソフトだった。
「あ! コンプしたんだ! どうだった?」
ゲームソフトを受け取り楽しそうに話しかけてくる。
「そうだね、絵は綺麗だし設定もすごく細かい、それにただの乙ゲーじゃなくて、途中でバトルが入ったりレベル上げがあったりするから面白かったよ」
可憐のその言葉に志保は喜ぶ。
「ただ一点。 主人公が平民で女、それなのに王族や貴族の男達よりも強いにもかかわらず、誰からも愛されているという事がありえない」

「もぉ~、可憐ちゃんでば! ゲーム位、素直にやろうよー」
友達の志保はオタクだ、ゲームとか漫画とかそういうものはよく貸してくれる。
その中には今回のように恋愛シュミレーションゲームや漫画などもあったけどやっぱり現実的ではないと思ってしまう。
「あのね志保、リアルの男っていうのはね自分よりもできる女が嫌いなんだよ」
そう言って自分の机の上に置いてある仕事の山をポンポンと叩いた。
その仕事の山は本来可憐がやるものではなく、同じ職場の男達が「これ位の仕事出来るだろう」と可憐に押し付けてきた仕事だからだ。
志保はそれを知っているので、何か言いたそうではあったけど何も言えずにいた。

パソコンを立ち上げながら、ファイルの1つを手に取り、仕事を始めようとした時だった、遠くにいる主任の男性が電話対応で謝罪しているのが聞こえた。
「はい、直ちに確認をいたします。 失礼いたします……はぁ、鬼崎! 〇〇商事の商品に関するファイル持っているか?」
自分の席から主任は可憐に声をかける。
「はい、ここにあります」
言いながら仕事の山の中に埋もれているファイルの1つを取り出そうとした。
「あぁ、ちょうどいいお前〇〇商事に行って、謝罪して状況確認してこい」
「はい!?」
ファイルを片手に主任に向かって返事をする。
「いやいや! これ主任の案件ですよね、担当じゃない私が言ったらますます怒られますよ」
立ち上がり持っているファイルを主任に渡そうとするが受け取ってもらえずに、
「いいから早く行けよ! 商品に不備があったみたいだ、発注元には俺の方から連絡しておくから、どういう状況なのか確認してこい」
「いや、ですから! 状況を確認できていない状態で発注元に連絡しても意味ないんじゃないんですか?」
「だから、状況確認してこいって言ってるんだよ! 優秀なんだからできるだろ!」
ニヤニヤと笑いながら言う主任に便乗して、周りの男達もクスクスと笑う。

そんな周りの状況にイラっときた可憐は「分かりました」と言い、自分の席に戻ってコートを着てカバンを持って、立ち上げたばかりのパソコンの電源を落とした。
そして自分の机の上にあった仕事の山を、主任の机の上に乱暴に置いた。
「おい!なんだよこれ」
「私の仕事ですよ。 〇〇商事まで行って、謝罪をして、状況確認をして、戻ってくるまでには、相当な時間がかかってしまいます。 なので、私が抱えているこの仕事は主任にお任せいたします」
「ふざけるな! お前の仕事だ、戻ってきたら全部お前がやれ」
「おや、できないんですか? 平社員で、女の、私よりも立場が上で、男なら、私よりも優秀な筈ですよね? まぁ、ど~してもできないって言うのなら、斉藤さん功刀さん田中さんに頼んでください、元々その仕事は彼らが、私に押し付けてきた、仕事なので! それではよろしくお願いしま~す」
言うだけ言って反論する主任を置き去りにし部屋を出る。
主任は、キッと3人男を睨み付け「おい!」と3人に仕事を渡した。

そんな男達を尻目に志保はさっき返してもらったゲームソフトをに目を落とした。
そこには1人の少女を取り囲むように5人の美男子達とタイトルに『ドキドキ♡逆ハーレムパラダイス~愛されて困っています~』の文字が描かれていた。
「……確かに現実は厳しいかも」
ため息まじりに言うと、ゲームソフトをしまって仕事に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...