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12章 涼介、逃亡する!
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涼介は正座をしたままズルズルと後ろに下がった。大叔父はその様子を見ていぶかしむ顔つきになった。
「涼ちゃん?」
涼介は顔を上げて大叔父を見たが、ハッとした。何か…違う。涼介は改めて大叔父の顔をまじまじと見つめた。
何だろう…。そうだ、顔のシミだ!
涼介は大叔父の家に遊びに行った時にいつも注目することがあった。涼介の親や祖父母が大叔父と話をすると、大叔父は大きく口を開けて笑った。その時、顔の右横にある大きな黒い楕円型のシミが縮んだり伸びたりする。その変形が面白くて涼介はしげしげと眺めたものだ。
今、目の前にいる大叔父にはそのシミが…ない。いや、ないのではなく、別の場所にある。左の顎のすぐ下、首のところにあるのだ! 形も大きさもほぼ同じだ。
この人は俺の大叔父ではない…。とてもよく似ていて、もしかして双子なのかもしれない。いや、他の人が真似をしているのかもしれない。
ともかく顔のシミの位置が違う。少なくとも確かなことがある。この人は僕の大叔父ではない! 他人だ。
涼介はゾッとした。
涼介は迫り来る恐怖から逃れるような思いでジャケットの内ポケットを押さえた。あった! 携帯とお守りは確かにここにある。ドクンドクンと押しつぶれそうな心臓の音を聞きながら涼介は後ろにジリジリ下がり、ふらつきながら立ち上がった。
「大叔父さん。俺、ちょっとトイレ行ってくる」
「ん、そうか…?」
何か言おうとした大叔父を尻目に、涼介は部屋を出ると、別の部屋にいた女性にトイレの場所を聞いた。女性の姿が見えなくなると涼介はトイレに飛び込み、ドアを閉めた。
涼介は大きく深呼吸し、トイレの中を素早く見回した。幸いトイレは、ローサらがワゴン車を止めたところから家の反対側にある。トイレは田舎の古いトイレらしく、ちょっと高いところに小さな窓が付いている。
いちかばちか…。
涼介は手を伸ばして窓ガラスを枠ごと外し音を立てないように下に下ろした。そして窓枠に手をかけ、懸垂して身を乗り出した。裏庭には誰もいない。今のうちだ!
涼介は体を乗り出した。飛び降りる時も音を立てないよう、足を屈伸して降り立った。猫のように静かに地面に降り立った涼介は足早に家を離れる。
家の裏手の竹やぶの中に入り込んだ涼介はしゃがみこみ、目を固く閉じた。どうするか急いで決断しなければならない。
肩のマイクロチップにはGPS機能が搭載されていたのだろう。ローサらがそれをオフにしたのは、この場所はGPSで追跡できるということではないか。たとえここがどのような場所であっても。涼介は気がつかなかったが、携帯もその時にローサがシャットダウンしたのかもしれない。
涼介は胸のお守りに手を当てた。これはいつオンにすべきだろう?
GPSがオフにされたことで山本らは涼介の異変に気づき、救出対策を練ってくれているだろう。ここでお守りのGPSをオンにすれば山本らはすぐに捜索を初めてくれるはず。しかし同時にローサたちに見つかってしまう。
涼介は方針を決めた。ここから大回りをして来た道に戻ろう。ローサたちからできる限りの距離を取り、そこでオンにしよう。それしか方法はない。
涼介は立ち上がり、竹やぶを駆け出した。
数分間竹やぶを走り続けると開けた場所に出て、民家が見えた。両脇にある家々の並びから、元来た道であることがわかった。
走り抜けようとして、ふと右手を見ると、ある家の前に自転車が置いてあるのが見えた。
ー やった、ラッキー! いや、すみません、お借りします。
涼介は駆け寄って自転車に手をかけた。見たことのない形状の鍵がかかっていたが、足で二、三度蹴ると壊すことができた。心の中で謝りながら涼介は自転車に飛び乗った。
自転車でその一本道を走り出し、大叔父の家であったところから二キロは進んだと思われるところで止まった。涼介はシャツのボタンを外し、お守り袋を引きちぎって開けた。USBより小さいくらいのガジェットだ。ボタンを押すと、まるで油圧で作動しているようにゆっくりと元に戻るのが感じられた。ガジェットをまたお守り袋に入れてジャケットの内ポケットに入れ、涼介は自転車に飛び乗った。
「涼ちゃん?」
涼介は顔を上げて大叔父を見たが、ハッとした。何か…違う。涼介は改めて大叔父の顔をまじまじと見つめた。
何だろう…。そうだ、顔のシミだ!
涼介は大叔父の家に遊びに行った時にいつも注目することがあった。涼介の親や祖父母が大叔父と話をすると、大叔父は大きく口を開けて笑った。その時、顔の右横にある大きな黒い楕円型のシミが縮んだり伸びたりする。その変形が面白くて涼介はしげしげと眺めたものだ。
今、目の前にいる大叔父にはそのシミが…ない。いや、ないのではなく、別の場所にある。左の顎のすぐ下、首のところにあるのだ! 形も大きさもほぼ同じだ。
この人は俺の大叔父ではない…。とてもよく似ていて、もしかして双子なのかもしれない。いや、他の人が真似をしているのかもしれない。
ともかく顔のシミの位置が違う。少なくとも確かなことがある。この人は僕の大叔父ではない! 他人だ。
涼介はゾッとした。
涼介は迫り来る恐怖から逃れるような思いでジャケットの内ポケットを押さえた。あった! 携帯とお守りは確かにここにある。ドクンドクンと押しつぶれそうな心臓の音を聞きながら涼介は後ろにジリジリ下がり、ふらつきながら立ち上がった。
「大叔父さん。俺、ちょっとトイレ行ってくる」
「ん、そうか…?」
何か言おうとした大叔父を尻目に、涼介は部屋を出ると、別の部屋にいた女性にトイレの場所を聞いた。女性の姿が見えなくなると涼介はトイレに飛び込み、ドアを閉めた。
涼介は大きく深呼吸し、トイレの中を素早く見回した。幸いトイレは、ローサらがワゴン車を止めたところから家の反対側にある。トイレは田舎の古いトイレらしく、ちょっと高いところに小さな窓が付いている。
いちかばちか…。
涼介は手を伸ばして窓ガラスを枠ごと外し音を立てないように下に下ろした。そして窓枠に手をかけ、懸垂して身を乗り出した。裏庭には誰もいない。今のうちだ!
涼介は体を乗り出した。飛び降りる時も音を立てないよう、足を屈伸して降り立った。猫のように静かに地面に降り立った涼介は足早に家を離れる。
家の裏手の竹やぶの中に入り込んだ涼介はしゃがみこみ、目を固く閉じた。どうするか急いで決断しなければならない。
肩のマイクロチップにはGPS機能が搭載されていたのだろう。ローサらがそれをオフにしたのは、この場所はGPSで追跡できるということではないか。たとえここがどのような場所であっても。涼介は気がつかなかったが、携帯もその時にローサがシャットダウンしたのかもしれない。
涼介は胸のお守りに手を当てた。これはいつオンにすべきだろう?
GPSがオフにされたことで山本らは涼介の異変に気づき、救出対策を練ってくれているだろう。ここでお守りのGPSをオンにすれば山本らはすぐに捜索を初めてくれるはず。しかし同時にローサたちに見つかってしまう。
涼介は方針を決めた。ここから大回りをして来た道に戻ろう。ローサたちからできる限りの距離を取り、そこでオンにしよう。それしか方法はない。
涼介は立ち上がり、竹やぶを駆け出した。
数分間竹やぶを走り続けると開けた場所に出て、民家が見えた。両脇にある家々の並びから、元来た道であることがわかった。
走り抜けようとして、ふと右手を見ると、ある家の前に自転車が置いてあるのが見えた。
ー やった、ラッキー! いや、すみません、お借りします。
涼介は駆け寄って自転車に手をかけた。見たことのない形状の鍵がかかっていたが、足で二、三度蹴ると壊すことができた。心の中で謝りながら涼介は自転車に飛び乗った。
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