絶対無敵の優等生《陰陽師》

彩夏

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波乱の一週間

帰り道の炎帝

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「それで私達は気絶してたと……」
あかりに多目的ホールから連れ出した経緯を話すと頭を抱えてため息をついた。
「まさか私が将棋部に入るなんて言うとわね」
「ま、お前には将棋なんて無理だろうな」
無理無理と賢人が首をふる。
「あんたよりはましよ!この脳筋!」
「脳筋なのはお前もだろ!」
たぶんいつもこんな感じなんだろうと考え、文也は何も言わない。
「まぁそんなこといいからあかり、それで文也くん一つ質問」
「なんだ?」
「将棋部の連中はどうやって術を使ったの?術を使えば回りの人、少なくとも教師や生徒会なんかにはばれると思うんだけど」
もっともな質問だ。
術は発動及び展開をした時点で術機から霊子と想子が合わさる時におこる微弱な波動が漏れるのだ。だが今回の精神干渉術にはそれがなかった。
「それは精神干渉術が古式に近いものであって、それを術者が術機を通さず使用したからだ」
「術機を使わずに!?そんなことできるの?」
「頼む文也、俺にも解るように説明してくれ」
佐織が派手に驚きを見せ、賢人は話についていけるように予め話の難易度を下げてくれるよう頼んだ。
「わかった。賢人にでも解るように説明しよう。まず最初に精神干渉術は精神、というより人の考えや感情の流れ、想子の流れに異物つまり術者の想子を入れてコントロールとまではいかないが思考的な誘導や扇動くらいの力しか持たん小さい術だ。だが、これくらいの術の式なら術機なしでも直接答えを出して霊子と想子を操れば使えないことはない。あくまでも術機は術を発動するまめの《サポーター》でしかないからな。そしてもう一つ、古式やこのての術はノイズ、つまり微弱な波動がほとんどない。まぁ同じ術を術機を使って発動したら微弱な波動は解るようになるだろうがな」
「なんでですか?」と來未。
「術機は術発動を高速化するために微弱な波動を増幅させてしまうんだよ、これは今の陰陽会でも議題になってる問題点の一つだな」
一応の話が終ったところで賢人の方を見て、わかったかどうか確かめる。賢人は目が合うと笑顔で親指を立てて来たのでどうやら半分くらいはわかっていないようだ。
ここで文也に変わりエリカが話しだす。
「しかも術者は恐らくは将棋部部長、白城弧鉄。あの人はかなりの実力者だからそれくらいならできると思う」
エリカの言葉は皆の緊張感をさらに高めた。
術発動時のノイズはほぼ感知できず、さらにその上自分たちにはエリカや文也と違いそれを防ぐ手だてがない。
「こればかりは自分達で警戒しようにもできませんね」
「あぁ、俺も同じクラスのあかりや賢人のことなら大丈夫だろうが、違うクラスの來未と佐織はカバーしきれない」
來未は文也の言葉に少し不安の顔を見せたが、佐織はこわばった顔をした。それは文也の言葉を來未とは違う捉え方をしたからだ、「もし、洗脳で敵に回ればその時は……」という意味に。
「とりあえず、今日は帰るか」
賢人がそうきりだすと、エリカが皮肉を吐く。
「あんたは勉強教えてもらわなくていいの?馬鹿なのに」
「やかましわ!まぁ俺は実技推薦だから座学はいいんだよ」
「妥当だろうな、今日は帰ったほうがいい、波動でまだ気分も優れないだろ?」
文也が波動を打ち込んだ四人を見回す。四人とも強がってはいるがあまり顔色は少し悪い。
「そうね、皆は駅までいく?」
あかりが一緒に帰らないか?というニュアンスの質問をする。
「俺の家はは駅から近いからいくよ」と文也。
エリカはこくんとうなずき、賢人はあかりの家と隣り合わせらしく「当たり前だ」と答え、今日は駅まで一緒に帰ることになった。

◆◆◆◆

学校でやることがあるらしい來未と佐織と別れ(危険なんだが……)文也、エリカ、賢人、あかりのメンバーで駅まで歩いていた。
「文也くんはさ、古式陰陽師のシキガミ使いなの?」 
お互いの術や術機の話になっていたのであかりが文也に聞いた。
「否定的はしないが、俺は一応近代陰陽術師だよ」
文也はヘッドフォンのような外見をした、術機から認識阻害術を解いた。
「エリカにしか見えていなかったと思うが、今は見えるだろ?」
術機に手を当てて二人に見せる。
「これって……思考型の術機!?しかも一ヶ月前に発表された最新モデルじゃない!文也くんって思考型使えたの?」
目を見開き驚いているあかりとそれを何がすごいの?と首をかしげる賢人に文也は言った。
「あぁまぁな、音声認識型とモーション型も便利だし起動も速いけど思考型の方が格段に速いからな、まぁそれなりの額はするし、使い手の実力しだいだが」
「私も初めて見た。思考型が使える人」 
エリカが関心の眼差しを向けてくる。
「なぁ?その思考型ってのはそんなにすごいのか?」
知識力が乏しい賢人がエリカに質問すると、エリカが答える前にあかりの毒舌が飛んだ。
「あんた、どんだけ馬鹿なの?馬も鹿も、もっと頭いいわよ?いっぺん医者に見てもらったら?」
あまりにもあかりの勢いが強かったのか、賢人は後退った。
「思考型のメリットは術の発動に番号を打ち込む訳でなく、モーションをとるでもなく、音声を認識させることでもない、イメージだけで出来るの。思考型の術機は頭から何かをイメージしたときに発せられる微弱な想子をキャッチして術を発動させるの、だからたぶん、術機の中では一番発動が速いの。でもその容量がデメリットで従来型の術機と比べると術式の保存数が少なくて八個しか入らないの」
「エリカの言う通りだ。思考型の術機の容量改善は今、確かイギリスが中心になってやっている」
「へぇー」と賢人は理解したのかしてないのかわからない声をもらす。
「三人はどんな術を使うんだ?」
文也が三人にきく。
「私は結界だけ、でも結界だけだからってあまく見ないでよね」
あかりはどうやら結界師だったらしく、その腕にも自信があるらしい。
「俺は加速術、硬化術、自己強化術、自己治癒術の同時展開での体術戦闘だな、俺の場合体術つうかただ殴るだけだがな」
「そんなにか、処理能力が相当高いみたいだな。でも自己治癒術は何に使うんだ?」
「俺は強化術を身体能力をオーバーする勢いで使うから壊れた体を直す必要があるんだよ、しかも強化術を使っている時はずっと」
賢人は壊れた体を瞬間的に治してまた壊すの繰返しをしているのだ。
(相当な苦痛だろうな……)
「こいつは単に脳筋なだけだから関心しなくていいわよ文也くん」とあかり。
「脳筋、脳筋言うな!俺はな、他にも重力制御術のグラビティが使えんだよ!」
二人は一世紀前の幼馴染みのようににらみ合っている。
そんな二人をよそにエリカが話を始める。
「私は銃型の特化術機。使う術は大体が光素のエネルギー変換術よ」
「三人とも高難度の術ばかりだ……」
な、と言いかけたその時、文也の第六感が負のエネルギー体を察知した。
方角は駅とは逆、ショッピングモールなどが立ち並ぶ都市部。
(回りに陰陽師はいないのか……)
十キロ先まで感知できる文也の第六感では陰陽師は感知できない。運悪く出払っているようだ。
適当な理由を作り、負を感知した方へと行こうと考えた時には理由は意味をなさなかった。
「怪異が出たんだろ?」
「一人では行かせないわよ」
「私達もいく」
どうやら三人とも行く気、満々のようだ。
(ハァー仕方ないか……)
文也はあきらめて三人も連れて行くことにした。ただし。
「ただし、今術機を持ってない賢人と、攻撃的な術のエリカは住民の非難誘導、怪異は俺とあかりがおさえる。いいか、おさえるだけだからな?」
「わかってるわよ!そんなに言われなくても」
「レベルは幾つなんだ?」
レベルとは怪異の進化の度合いを表したものだ。
「推定3だな、型は蜘蛛」
「レベル3は危なわ、速く行かないと犠牲者がでる」
そうして文也たちは現場へと向かった。

◆◆◆◆

到着に二分もかからなかった。
レベル3が出たと言うのに犠牲者は一人もまだいなかった、どうやら都市部防衛システムが正常に稼働したらしい、蜘蛛型の怪異は拘束されていた。 
(拘束していられるのも時間の問題だが……)
「エリカと賢人は住民の非難!あかりは手はず通りに蜘蛛を結界内に閉じ込めろ、負の気を吸うのは危ない!」
あかりはうなずくと手首につけている術機に番号を打ち込み、脳内領域にて座標を計算、出た座標に術陣を展開、それを四辺に一つずつ置き、それを結ぶように立方体の結界を作りあげた。
(速いな……)
そんなことを脳裏に浮かべたのをすぐに消し、イメージを入力、座標計算を終わらせ、蜘蛛の腹に術陣を一つ、腹に面する道路に一つ展開させると蜘蛛の腹は道路に吸いつけられ、動けなくなった。
磁力制御術、文也が使った術の名前だ。磁力制御術はプラス極とマイナス極の二つを定める陰陽術。簡単に言えば術陣が展開された場所を磁石にする術だ。
今回は蜘蛛をプラスに道路をマイナスにしたため、お互いに引き寄せられ身動きを封じたのだ。
「文也くんってそんな高等術まで使えたの?」
「あかりの結界の方が高等術だと思うが?」
結界は現代陰陽術と古式の間のような物で、空気中に結素と呼ばれるみちの物質を作り出し、それをコントロール、並べ構築することで結界になる高等術だ。
エリカと賢人を横目で見るとどうやら非難は上手くいっているようだ。
「あかりこのまましばらく抑えこむぞ!」
「いや、その必要はないよ」 
二人の会話にもう一人男の声が入った。
(気配にきずけなかった……!)
術を展開したまま後ろを振り返るとそこには陰陽師特有の装束を身に着た髭ずらの男がたっていた。そして文也はその男を知っていた。
「炎帝……」
「おー嬉しいねー僕を知ってくれてるんだー、でも、その呼び方はあまり好きじゃないからやめてね?」
炎帝、赤倉炎介は気配を殺したままで一歩、また一歩とこちらへ
いや、蜘蛛へと向かう。
「僕の詠唱が終わったら結界の子だけ術を解いてくれる?」
そう言うと炎介は呪文を唱え始めた。
『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前(りん・びょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)』 
呪文を唱えている間、中指と人差し指で刀をイメージし、空を切り、切ったところに紫色の光の線がはしる。古式陰陽術特有の破邪の法だ。
縦に二本、横に二本切った所で詠唱が終わり、末尾にこう告げる。
「あかり!結界を解け!」
「急急如律令!!」
四本の光の線は勢いよく蜘蛛へと向かった。
あかりの結界は光の線すれすれで解かれ、光の線は身動きがとれない蜘蛛に直撃、砂ぼこりが派手に舞い、蜘蛛の六本の足のうち、四本の足が無くなっていた。
「うーん、やっぱこんな弱い術じゃだめか~、仕方ない」
炎介は両手で手印を作り先程とは別の呪文を唱えた。
「五行の火を持って負の敵を討ち滅ぼさん!急急如律令!!」
すると、蜘蛛の回りを円を書くようにして火が回り始め、それがどんどん高くなってゆく。
「炎柱」 
火は炎に変わり、蜘蛛を炎の柱で焼き付くした。
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