即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第2章 変わりゆく者達

第十五話 東の地へ

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 ああ、眠いな。
 俺は今、朝食を摂りながらある事を考えていた。
 それはナテールに着いてテイロニアに着い後、どうするかだ。

 いつも通り薬屋や魔道具屋、市場などを見に行くのもいいが他にも見るところは無いかと考えていた所だ。

「どうしたの? そんなに考えて」

 俺が黙って考えこんでいると、リアンが声をかけてきた。

「いや、いつも行くところが大体決まっているから他に見に行けるところはないかなってね」

 なんか前にも似たような感じの事があったな。
 トラリィアに来るときも同じ事を言っていた気がする。
 すると、リアンがまた話しかけてきた。

「テイロニアにはお菓子が美味しい所が多いって聞いたわね」

 菓子か、ちょっと興味あるかな。
 ともかく行ってみるかな。

「じゃあ、あっちに着いたら先にお菓子屋に行ってみる?」

 リアンにそう聞くと、リアンは首を縦に振った。
 俺には、リアンが何処か嬉しそうな気がした。

「お客様、間もなく港に着きますので部屋にお戻り、降りる準備をしてください」

 どうやら話したり考えている内に、港にもう着くようだ。

 本来ならもっと早くに着くはずだったのにな......
 盗賊達のせいでかなり遠回りしたみたいだしな。
 本来奴らはこの船を乗っ取って、シベロニアに向かおうとしていたらしい。

 それが結果的に失敗して今、一室にまとめられて閉じ込められているなんて本当にどうしようもないなこりゃ。

 さて、部屋に向かって降りる準備をするかな。
 ちなみに奴らへの仕返しは、白の騎士にまとめて引き渡すことにした。

 正直途中からめんどくさいと思ったのが本音である。
 それから俺達は、船を下りる準備をして船のサイドデッキにいた。

 何か黄昏たくなるな~。
 といっても、もうすぐ着くけどね。
 しばらくして船は港に着いた。

 そして、盗賊達は白の騎士に引き渡した。
 これが多分一番いい選択だったんじゃないか。
 さて、そんなことはさておき、今は何時かな?

 時計を見ると、針は九時を指していた。
 この時間帯なら、テイロニアに着いた頃には菓子屋も空いているだろうし、ちょうどいいだろう。

 俺達は港を出て、テイロニアに向かった。

「しかし、この草原はなんか色々な素材が生えているな」

 一番よく見かけるのは、雑草を除くとヒリン草が多く、次に多いのは睡眠薬の材料の夢草。
 そのまま使用すると、効果は精々五分程度の効果だろう。

 なのでこっちの人は、昼寝や軽い睡眠をとるのに使うようだ。
 取りあえず、タダで手に入るならかなり素材代が浮くな。

 ただ、乾燥させるのに時間がかかるのはしょうがないな。
 そう思っていると、俺はふと思った。

 もしかしたら魔道具屋にそういう乾燥させる道具があるかもしれない。

 といっても、前の世界にあったドライヤーみたいな物ではなく、できれば筒状の物が好ましいな。
 それなら色々便利そうだしな。

 俺はそう思いながら道を歩いていると、久しぶりに魔物に遭遇した。

「うわ!? ってなんだスライムか、前と少し色が......」

 やばい、俺はコイツの事が記憶にあるか調べると、どうやらこいつはスライムなのは間違いないが、毒を持っているらしい。

 しかも、こいつは麻痺系の毒で、体内に小さい針が有りそれに刺されると十分近くはかなり動きにくくなるようだ。

「くそ、面倒な奴だな」

 俺は鞄の中から爆薬を取り出した。
 このスライムは、どうやらコアは胴体にあるようなのでそれならこいつでもいけそうだと思ったからだ。
 とにかく今はこれを投げなければ。

「くらえ!」

 スライムめがけて投げると、見事に命中してコアを粉砕した。
 あれ?

「もしかしてこのスライム、普通のとは違って案外弱いのか?」

 そういうと、リアンがその事を話した。

「このスライムは、普通のとは違って体力は少ないけどその分毒が厄介ね」

 まあ、体力はさておき、毒の存在は知っていたから接近はしない方がいいのは間違いないな。
 俺は、針に気を付けながらコアの破片を回収して、その場を離れた。

 よく見たら他にも周りにいるじゃないか、目を付けられないようにしないとな。
 だが俺達は、テイロニアに着く前にその後も三、四回くらいスライムたちと戦った。

 中には麻痺以外にも、眠らせる成分を含んだスライムや、他にも爆発までしてくる奴も中にはいた。
 正直、勘弁してくれってところだよ。

 そんなこんなあって、今俺はいつも通り門の前で通行証を作ってもらった。
 リアンは、もう持っていたので作る必要は無いようだ。

 まあ、中には入れるし、ここまではいつも通りだな。
 この先この前のようなトラブルには巻き込まれたくないな。

 偽物の王の件と盗賊の件、俺はただ静かに薬草師という職業でこの異世界ライフを満喫したいだけなんだよ。

 まあ、何事もないことを祈っているかな。

「わぁ......凄いな」

 次の日の午後、俺達は昼食を食べ終えて有名な菓子屋に行ったら、すでに列が出ていた。
 待ち時間を聞いたら、大体一時間くらいかかるようだ。

 これ待つしかないのか......
 うーん、仕方ないか。
 リアンも並ぶようだしいいか。

 それから俺達は並んでから三十分くらいが経過した。

「はぁ、あと二十分近くか......そうえばリアン、この店の菓子は何が有名なんだ?」
「ここはクッキーが有名なお店よ、チョコチップや紅茶の葉を使ったクッキーとか他にも色々種類が多いみたいよ」

 紅茶の葉を使ったクッキーか......
 ユーリが好きそうだな。
 すると、何処からともなく声が聞こえた。

「シン、その紅茶クッキー買っといて」

 何か聞こえたな、まあ予想はしていたけど。
 取りあえず紅茶クッキーは確定だな。
 リアンはどのクッキーを買うのだろうか?
 俺はリアンに聞いてみた。

「リアンはどの買うんだ?」
「私はチョコチップよ、シンはどうするの?」
「俺は取り合えず見てから決めるかな」

 色々話している内にもうあと二、三人ほどで俺達の番のようだ。
 店の中に入るのにここまでかかるとは......

 いや、でも前の世界では二時間とか普通に並ぶ事もあるようだし、それと比べるとまだマシか。
 ともあれ、もうすぐで店に入れるようだし待った甲斐があったってもんだ。

 すると、俺の後一人の時に店の前のボードに気がついた。

「ん? 本日のおすすめ?」

 俺は、そのボードに書いてあるおすすめを見た。
 どうやら今日のおすすめは、ハーブ入りのクッキーがおすすめのようだ。

「ハーブクッキーか、俺はこれにするかな」

 すると、とうとう俺達の番になり店員が注文を聞いてきた。

 クッキーを注文している時、俺がハーブと一緒に紅茶クッキーを頼んで支払いをしている時、リアンが何故余分に頼んだか聞いてきた。

「その紅茶クッキーは誰かに渡すの?」
「ああ、こっちに来てかなりお世話になっている人に頼まれてね」
「もしかしてその人って......」
「うん、たぶんリアンが探している人、ユーリって人にね」

 そういうと、店員がクッキーの入った袋を包みに入れて渡してきた。
 俺はその包みを受け取り、リアンと一緒に魔道具屋に向かった。

「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」

 店に入ると、中年ぐらいの男性店員がそう聞いてきた。

「中の物を乾燥させる筒とかってありますか?」
「少々お待ちください」

 店員はそう言い、奥の方に行った。
 流石にそんな無茶な道具は無かったか。
 そう思っていたら店員が戻ってきた。

「申し訳ございませんお客さま、今はそのような道具は置いてありませんでした」
「そうですか......」

 俺はどうしようか考えていると店員が話続けた。

「特注でならご用意できますがどうされますか?」
「どれくらい日数は掛かりますか?」
「二日は掛かります、費用は金貨一枚でございます」

 まあ、特注ならそんなもんか......
 俺は店員に金貨を渡して二日後に受け取りに来ることにした。

「後は市場か、いい素材があればいいな」

 俺は、市場を覗きに行った。
 リアンには宿の部屋をとってもらいに行った。
 色々見ていると、隅っこの店である変わった素材が売ってあった。

 それは奇妙な色をした草で、俺は何の薬の素材になるのか頭の中で調べたが、この草を素材で作る薬は俺の記憶には無かった。

 だけどこの色どこかで見たことあるような......
 すると、椅子に座っているローブを着た老人が話しかけてきた。

「お客さん、この草が気になるのかい?」
「ええ、見たことない草ですから」

 すると老人は笑いながら話を続けた。

「そりゃあそうじゃろう、なんせわしと後もう一人しか知らない草じゃからな」

 ん? でも確かユーリからは大半の知識は貰っていたはず。
 もしかしてこいつ......

 老人に化けているアイツなのか?
 すると、老人は笑みを浮かべた。

「ようやく気付いたようだな、だがもう遅い」

 奴は一瞬で消えてその場に残ったものは奴が身に着けてたローブだけだった。
 すると、何処からかまた声がした。

「次会った時が貴様の最後だ、肝に免じておくんだな」

 くそ、また逃げられたか。
 しかしこんな所で問題を起こしたら後々面倒だしな。

 はぁ、本当に関わりたくないよ、めんどくさいし。
 しかし、あの草があの時の薬の材料だったのかもな。

 一度化け物になっていたはずなのに、何で人に戻れたのだろう?
 そう思いながら俺はリアンを探していると、広場でリアンに会った。

「あら、どうしたの? 何かいい材料でも見つけたの?」

 俺はさっきまでの事を話そうかと思ったが口にしなかった。
 今ここで話すと奴に聞かれるかもしれないしな。

「いいや、リアンを探して走っていただけだよ、そっちは部屋はとれた?」
「ええ、ちょうど開いていたから運がよかったわ」

 俺はその後リアンにその宿まで案内され、その宿で一息ついた。
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