双子の転生者は平和を目指す

弥刀咲 夕子

文字の大きさ
1 / 3

いち

しおりを挟む





「フェリナル・シルフィード、私は貴様との婚約を破棄させてもらう。」



大勢の貴族令息嬢が集まるパーティーホールのど真ん中で私に向かって言い放ったのは金髪碧眼のこの国の皇太子殿下。
名前をアレキウス・ダンベルン。
横にはピンクブロンドに空色の目の最近転校してきた平民上がりの子爵令嬢、サンリアナ・ウェイトゥルン。
二人のまわりにはこの国の主要役職の子息たち。
面倒なので紹介は省かせていただきます。


「聞いているのか、この悪女め!!」


なんだか私は物凄く罵られている気がするわね。

「なぜ、私は貴方と婚約破棄しなければならないのですか?」

とりあえず、聞いてみる。
どうせ、私との婚約破棄などできはしないのだから。
私は持っていたグラスの淵に口をつけた。
中は、レモネード。

······レモネード···?

今、なんだか頭の中にすごい違和感を感じた。

「なぜだと···?決まっている。
お前は、このサンリアナを散々いじめ、辱しめただろう。
私たちは調べ上げて王にも証拠を提出した。
観念しろ!」

「そのような、でたらめ、私には痛くも痒くもございませんわ。
だいたい、いじめたわけではなく社交界での礼儀を教えて差し上げていただけですわ?」

まぁ、あの女をいじめたのは事実ですけれど。
私は殿下の横にいる女を軽く睨んだ。
女は怯えたように殿下の後ろに下がった。

あんなふうに殿下に引っ付いて媚びを売って恥ずかしくはないのかしら?

「皇太子殿下の言われることは誠である。」

声の方を振り向けばそこには、この国の宰相である男が立っていた。

「王は皇太子殿下からの書類を全て確認した上でフェリナル・シルフィードと皇太子殿下の婚約を破棄することを認めた。」

宰相が高らかに言った。

「···!っな、なんですって!!」

信じられない、私との婚約破棄を認めた!?
嘘だと思いたいけど、宰相が出てきたのだから事実と捉えるしかないわ。
私もそこまでバカじゃありませんもの。
でも、でもでも!

「一体どういうことなの!?
私は公爵令嬢よ!
こんなこと許されるはずありませんわ!」

「黙れ、散々サンリアナを虐めておいて公爵家も何もあるか!!
身分をかさにきて下位のものを見下す者をこの国の王妃にできるわけがないだろう!」

······そんな···。

どうして、だって私は···。

「この悪女をここから連れ出せ!!」

殿下が衛兵に叫んだ。
私は必死に暴れた。

だって私は、貴方の隣に立つためにやっていたのに。
どうして。

衛兵につかまれ、押さえ込まれる。
私は殿下の方を見た。
殿下がサンリアナを守るように、周りの者は二人を守るように立ち、私を睨んでいた。

······なんか、この光景見たことあるわね。

私がそう思ったとき、後ろから衝撃を受けて視界がシャットアウトした。

···私、なんでシャットアウトなんて言葉を知ってるのかしら···?





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

前世を越えてみせましょう

あんど もあ
ファンタジー
私には前世で殺された記憶がある。異世界転生し、前世とはまるで違う貴族令嬢として生きて来たのだが、前世を彷彿とさせる状況を見た私は……。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...