3 / 3
さん
しおりを挟む──うっ、うーん···──
まだ寝ていたい···。
「こらこら、起きなくちゃダメだよ。」
──そだそだ、はよ起きろぅ!──
仕方ない、と目を開けるとそこは一面が白い空間。
しかし、何故か眩しさは感じない。
ここには、私の他に長い黒髪をひとつに後ろで束ねた切れ長の金目の背の高いイケメンと幼い子供の姿の姉が立っていた。
──うーん、まだ寝たり無い──
「君のお姉さんも寝起きにおんなじこと言ってたよ。
さすが双子。」
──言ってないし。( ̄^ ̄)──
姉がむくれた。
「それにしても、今回もダメだったね。」
──てか、記憶が戻るの遅すぎ!
私、ギロチンに固定された後だったんだけど!!
刃が落ちてくる合間に一体、何しろっての!?──
──私に関しては、刺された後だったし──
「ごめんよ、でもいつ戻るかはランダムだし、君たちの意識や行動によって違うから~」
イケメンが指をもじもじさせながらくねくね動く。
──神ならそれくらいなんとかできないの?──
「転生したあとの記憶のない君たちに干渉できないからね···。」
──使えない。 ──
姉の言葉が刺さったイケメンが崩れ落ちた。
このイケメン、実は神様なのだ。
ちなみに、私たちはただの人間だった魂みたいなもの。
私は大波千陽(おおなみちはる)、姉は大波千月(おおなみちづき)、先ほど言われた通り双子の姉妹である。
私たちはもともと、地球という星の日本という平和と詠われる国に生きていた。
しかし、私たちが生まれた家に平和はいなかった。
両親からの度重なる暴力と食事を与えられないことで起こった栄養失調で私たち二人はわずか五歳で生涯に幕を下ろした。
しかし、そこからが問題だった───
「こんにちわぁ~、神様だよぉ~」
気づけば私と姉は真っ白な空間にいた。
そして、目の前には胡散臭いイケメン···。
──はる、きおつけて。
あぶないひとだよ、きっと。──
姉が私の前に出て言った。
──ちづもあぶないよ。──
私は姉の隣に立って手を繋いだ。
「いやいや、危なくないよ~。
大丈夫だよ、お兄さんは神様だから~。」
『じぶんでかみさまっていってるじてんであぶないとおもう!!』
「そんな~、なにもそこまではっきり言わなくても~。
小さい子ってほんと素直だよね~。(泣)」
神様?がしくしくと言いながらわざとらしく泣き真似をする。
なんか、めんどくさい人だな。
──あの、わたしたちはどうしてここにいるんですか──
「それはだねー、と、その前に名前を聞いていい?
二人とも双子だけあってそっくりだから。」
──いま、しゃべったわたしは、おおなみちはるです。──
──わたしは、はるのおねえちゃんの、おおなみちづきです。──
私たちの自己紹介を聞いて神様がうんうん頷いた。
「なるほど、つり目のちづきちゃんがお姉さんでたれ目のちはるちゃんが妹だね。
千の月と千の太陽か。
どっちも地球がある場所の星だね。
といっても、月は衛星だけど。
にしても、ある意味破壊的な名前だね。
月も太陽も千もあったら大変だよ。」
((なんのはなし···?))
「うん、まあいいや。
僕はさっきも言った通り神様だよ。
よろしく。」
「さて、君たちがここにいる理由だけれど、
「この子たちは五歳という若さで死んじゃったのか···。
よし、かわいそうだから転生させてあげよう♪ヽ(´▽`)/」
っていう僕の上司の思いつきが主な理由かな?」
『思いつき···』
「そうそう。
んで、ついでに僕の仕事を手伝ってもらおうと思って、君たちは上司のところではなく僕のところへ来たんだよ。」
五歳児に仕事の手伝いをさせようなんて、なんて神だ、と思った。
「ちなみに、仕事がはかどりやすいように君たちの精神年齢は上げたけれど、知識はそのままだからそれは転生してから勉強頑張って。」
──それで、てつだいってなにをすればいいんですか?──
「···精神年齢を上げたところは突っ込まないの···?
まあ、いっか。
君たちには、ヒロインと悪役令嬢に転生してもらって、その世界で人探しをして欲しいんだ。」
──ひろ···?──
──あく···やく···?──
私たちは揃って首をかしげた。
「あー、後程説明するね。
んで、人探しなんだけれど、···」
回想が長くなるのでまとめると、
なんだか厄介な人が転生したみたい
↓
世界を乱そうと企んでるみたい
↓
神様側はそれを阻止しなくちゃいけない
↓
しかし神様は世界に降りれない
↓
あ、上司が双子を転生させるみたい
↓
じゃあ手伝ってもらおう(人´∀`*)
と、いうことだった。
ちなみに、どっちがヒロインと悪役令嬢に転生するかは神様が決めた。
「うーん、悪役令嬢はちづきちゃんでいいかな。
名前がフェリナルだからね。」
──どういうことですか?──
「ほら、フェリナルの最後の二文字の順番変えると「ルナ」になるでしょ?
ちづきちゃんも最後は「月」だからね。
だからヒロインはちはるちゃんね。
サンリアナって名前だから、「サン」と太陽ってことで。
決定~!!」
((無理矢理感がある···。))
しかし、記憶がない状態で二人ともべつべつの場所で産まれるので、なかなか人探しは進まなかった。
何度も何度も繰り返し同じ世界の同じ時代、同じ場所に転生を繰り返し、記憶を取り戻しても
時既に遅しな場合がほとんど。
二人とも十六歳で、断罪と刺殺で生涯を終え、精神の状態で白い空間に戻って来て愚痴るというのが恒例になっていた。
──あー、なんかもうこれだけ繰り返しても上手くいかないなんて、心が折れそうだよ──
──ちづは死んじゃうときみんなに悪意を向けられてるからね、本当にお疲れ様──
──はるだって、毎回好きな人に刺されるわけでしょ?
他人に向けられる悪意よりきついと思うけどな──
こうして私たちはいつも労いあう。
そして──
「ねー、ねー、君たちもっと早く記憶を戻せない?
そしたらもっと早く済むんだけど。」
──神様、誰のせいで私たち毎回残念な結末を迎えてると思ってるの?──
──はるのいう通りだよ。
神様に記憶を残したまま転生させる力があったらこんなにかからないでしょ──
「···ごめんなさい。」
私たちはいつも二人で偉そうな神様に土下座をさせる。
──神様、最近思うんだけどさ、ヒロインと悪役令嬢である必要ってある?
モブだったらもっと自由に動けるし、長生きできると思うんだよね──
──あ、はる頭いい。確かにそうだよね──
「必要って、だってヒロインと悪役令嬢だったらその時が来るまで死にはしないだろう?
それに、見つけやすいし。
二人ともモブになったらどこにいるかわからないから、記憶が戻ったときにサポートしやすいんだ。」
つまり、私たちを探したくないという職務放棄のための職権濫用というわけか。
──ねぇ、はる。
今度から、記憶早く取り戻せたときは二人が幸せに暮らすために生きない?──
──え、どういうこと?──
不意にちづが小声で言った。
──私たち、もう散々転生して、殺されて、また転生して、殺されて、をずっと繰り返してるじゃん。
だから、もう私たちそろそろ平和で幸せに暮らすために動いてもいいと思うんだよね──
──でも、手伝いはどうするの?──
──そんなの、平和に暮らすついでにやればいいじゃん?
そいつ見つけ出さない限り完全な平和はやって来ないわけだし。
でも、そもそも私たちが生きないと探せないわけだし──
──わかった、じゃあ、今度からそうする──
このあと、私たちはまたそれぞれヒロインと悪役令嬢として転生したのだった───。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる