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悪党の末路
しおりを挟む私はなぜか侍従棟の大浴場でくつろいでいる姫さまと対峙していた。
「なんで姫さまがここにいるんですか。」
「湯浴みをしたかったからよ。」
「姫さま専用の浴場があるじゃないですか。」
「広い浴場がよかったの。」
姫さま専用の浴場は確かこことあまり大きさが変わらなかったような···。
「姫さま、護衛や侍女さんたちはどうしたんですか。」
「そんなの、まいてきたに決まってるじゃない。」
えっへん、と胸を張って言う姫さま。
いや、胸を張って堂々と言うことじゃない。
「とにかく、早くもどっ───ハックシュッ!」
あー、ずっと裸で立ってるから体が冷えてきたみたいだ。
「もう、そのままじゃ風邪をひくわよ。
いつまでもそこに立ってないで早く入りなさいよ。」
「誰のせいでまだ湯船につけてないと思ってるんですか。」
とはいえ、さすがにこのままでは本当に風邪をひきかねないので仕方なく入ることにした。
「ねぇ、リーナ、前に二人きりのときは敬語なしって約束したわよね。」
「あー、そんなこともありましたね。」
あれは確か初日のあいさつをしに行ったときのことだったっけ。
初めは無理やり第三者を呼び寄せたりして二人きりの時間を避けていたのですっかり忘れていた。
「今、二人きりよ?」
湯船に浸かって顔を火照らせた姫さまが隣でくつろぐ私に上目遣いで迫った。
13歳の美少女が、裸で上目遣いで迫ってくる···。
うーん、···エロい。
「···まー、約束ですし。
私はただいまオフなので構わないですよ。」
姫さまの危ない上目遣いに違う意味で屈しないように視線を逸らしつつ答える。
「の、割には敬語ね。」
「はーい、なおしま···直す直す。」
さらに近づいて誘惑してくる(私がそう思っているだけ)姫さまに私の理性の危険を感じたので折れることにした。
···胸が、胸が当たってるんだもん!!
美少女の胸が!!!!
私が敬語を外して話せば、そのあとは姫さまもいつも通り話しかけてきたので二人でなんでもない日常の話をした。
姫さまの歴代の護衛の話や私の孤児院での話なども。
「そういえば姫さま、祭りの時どうして城を抜け出したりしたの?」
「外が賑わっていて楽しそうだったのよ。
屋台のもの食べてみたかったし。」
姫さまは思い出して都合が悪くなったのか鼻先まで湯船に沈めてブクブクし始めた。
「屋台のものって、城にも献上されて皇族も食べれるんじゃ?」
「何度も毒味されて冷えきったものを食べさせられてるだけよ。
私は目の前でできた熱々の料理を食べたかったの。
リーナは知らないだろうけど、実は献上されるときに王宮のシェフによって味付けに手を加えられていたりするのよ?」
「なるほど。」
だからといって抜け出していい理由にはならないけれど、あの賑やかな雰囲気の中で城に閉じ込められっぱなしは可哀想な気がした。
「そういえば、あの悪党たちはどうなったの?」
「あの男たちは捕らえられた後に死んだそうよ。」
「そうで───えっ?」
姫さまがあまりにもさらっと言うので私は流しそうになった。
「捕まえた後に計画犯かとか誰かに依頼されたのかとか調べていたら突然倒れてぽっくりと。って私は聞いているわね。」
彼女は目を伏せて指で水面を揺らした。
おそらく、あのときの悪党の話ぶりからすると何者かからの依頼だろう。
手練れが混じっていたのも気になるし。
「まぁ、おかげでいい専属護衛が見つかったからいいわ。
ふぅ、私はもう行くから残りの時間ゆっくりしなさい。」
勢いよく立ち上がって湯船から出た姫さまはそのまま脱衣場へ歩いて行った。
───が、すぐ戻ってきた。
「服を着るのだけ手伝ってくれないかしら?」
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