魔力は成長と共に…

satomi

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平和だったある日、チェーン侯爵家から使いが陛下宛にやってきた。
なんでも俺が(俺だけが)王宮で暮らしていることが不満らしい。今更。

「でもさぁ。正直、ラルフが長男でしょ?虚偽の報告してんじゃん?で、ロルフもって図々しいにもほどがあるんだけど?」
面目ありません。

ん?
「殿下、俺が長男ってご存じで?」

「えーだって、“ラ”ルフと“ロ”ルフでしょ?‘ラ’の方が先だと思ってたんだよねぇ。どうせ、ロルフの生後すぐの魔力量が多かったからロルフを長男にしたんでしょう?」

「当たりです」

「でも、最近ロルフの魔力量が減ってるらしいけど?」

「それには関与してない」
うーん、俺の魔力量が増えてるのと関係してるかもなぁ。しかし、あの両親が俺にしてきたことを思うと言いたくないなぁ。

「ラルフの魔力量が最近増えてるのと関与してるかもね♪」
マリウス師匠―!

「あとは陛下の決断だなぁ。俺達がここでどうこう言ってもどうしようもないだろ?」
グビーズ師匠、流石です。場が引き締まった。



直接チェーン侯爵夫妻が謁見の間にやってきた。

「面をあげよ。さて、侯爵家嫡男を王宮で暮らすようにはからわないのは何故か?という事だが…。侯爵家嫡男とは誰の事だ?」

「もちろん、ロルフ=チェーンでございます」

「うむ、間違いないな?」

「「もちろん」」

「私が耳にしているチェーン侯爵家長男というのは、魔力量が多く、多彩な魔術を用いることが出来る。尚且つ、剣術にも優れている。ああ、そうそう魔眼を持っていると聞いているが、この者は嫡男ではないのか?」

「そんな者は我が家にはいません」

「で、王宮で暮らさせたい侯爵家嫡男というのはどのような?」

「魔力量が他の者よりも多いです」

「それだけか。私が耳にしている情報とは随分異なるな。さっき私が言ったのはラルフ=チェーンの特長だ。しかし、残念ながら侯爵家長男ではなく次男と公式に報告がある…」

「ラルフは特長がある故に王宮で暮らす価値があるのだ。ロルフと言ったか?王宮で暮らす価値はあるだろうか?わかれば下がれ!」

侯爵家夫妻は謁見の間から出るしかなかった。

「何なの?ラルフが魔眼持ち?多彩な魔術を使える?知らないわよ。知ってたらラルフが長男でラルフが侯爵家の嫡男よ」

ロルフは聞いてしまった。侯爵夫人の言葉を。自分は生涯この場所で暮らしていくのかと思うと、なんだか情けなくなった。
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