家出をした令嬢~捨てた家の没落は知りません

satomi

文字の大きさ
9 / 10

9.旧代官→新代官

しおりを挟む
 当たり前と言えば当たり前なんだけど、ダッシュは有能な人材だった。領地経営において完全に領民のハートをゲット!
 
 この間、領地に視察に行った時の事。
 あまりの惨状に驚いた。あんの侯爵代理は能無しか?あぁ、私の体にあの男(侯爵代理)の血が半分流れていると思うと嫌な気分になる。

「何だ?この状態。資料での報告よりも酷いじゃないか?配置していた代官は何をしていたんだ?」

「あのオジサンなら、いつもおさけくさくて、『しょうかんにいりびたってる』っておかあさんがいってた」

 衝撃の事実。代官は横領してたとみえる。その金で酒を飲み、娼館に入り浸っていたんだろう。
「ありがとね。お嬢ちゃん。これからこの土地もどんどんよくなるからね!」
「おねえちゃんとあのかっこいいおにいちゃんがなんとかしてくれるならあんしんだよ」
 さらにハードルが上がった気がする……。


 代官との面接。
「そんな平民の子供の言う事を信用するのですか?」
「では、ここに送ってたはずの金はどこに消えたんだ?本当なら領地を豊かにするためにつかわれているはずだが?」
「……」
 ダッシュは尋問も得意なの?
「まぁ、本当なら領民が使っている鍬とか鋤とか新しくするとか?そういう事に使われて、もっと領地の収入があったはずだけど、現実は鍬も鋤も錆びてて、領地も荒れ放題。どういうことなんだ?」
「……」
「これより沈黙は肯定の意味とする」
 さて、どう出る?悪代官?
「領地への予算を横領してその金で酒を買い、娼館に通ったな?」
「……」
「どうする?侯爵様?この代官クロだとさ」
「もちろん、解雇よ」
「女の方が侯爵なのか?」
 ここにも女性蔑視の男が……。
「そうよ。それがどうしたの?世の中の流れってものね~。イマドキ女性蔑視の思想なんて古いのよ」
 代官(元?)が私に殴りかかろうとした。
「あー、ちなみに俺は第3王子だ。彼女の婚約者♡彼女を害そうとした罪は重い。王宮騎士団に引き渡す」
「あーあ」
 と、私は呟いてしまった。

 その数時間後元・代官は王宮騎士団に引き渡された。私とダッシュにシバかれるよりも、王宮騎士団に捕まってる方が安全と言えば安全じゃないかな?


 新しく代官になってくれる人いるかなぁ?と思った時に頭に浮かんだのは王城の門番さん。ダッシュに握手を求めていた方。門番の仕事があるからダメかなぁ?

「ねぇ、ダッシュ。新しい代官さんについてなんだけど、前に王城の入り口で会ったダッシュの事が大好きな門番さんはダメかなぁ?」
「俺も彼が頭を過ぎったんだけどなぁ。彼はあくまで王城勤務の門番だからなぁ。一応アタックしてみるけど?」
「そうこなくちゃ!領民のみなさん。必ず私達でダイズ領地を豊かなものへと変えていくので、ついてきてくださいね!」
「若いお姉ちゃんと兄ちゃんで心配だったが、実力は折り紙付きみたいだな!前のへっぽこ領主が嘘みたいだ」
「違いねー」
「「「ハハハハハ」」」
 よかった。領民に笑顔が戻って。問題は新しい代官にあの人がなってくれるかよね?


 私達は王都に戻ってすぐに王城へと行くことにした。
「これは、ダッシュ様。王城に用が?」
 私は?ココにいるよ?目に入ってないの?
「君に折り入って話があるんだが、俺は今この女侯爵の補助をしているんだ。それでだ。この間、領地でちょっともめごとがあってだなぁ、代官を解雇することになって。その後継に君がなってくれたら?と思っているのだが…?」
「謹んで引き受けさせていただきます!」
 返事が速い!
 もう一人の門番さんがいる前だし、いろいろ問題があるんじゃなかなぁ?
「話はここではなんだから、ダイズ侯爵邸で詳しく。門番の補填は騎士団の方からしてもらおう」
 勝手にいいのか?第3王子。門番の補填まで……。


 ダイズ侯爵家での面接(?)が始まった。
「えーっと君の名前は?」
「アレクサンドル=ライアンと申します!」
 ライアン侯爵家?名門じゃない?いいのかしら?ドキドキするんだけど?
「アレクとお呼びいただけると、天にも昇る気持ちです!」
 名前一つで昇天とは、ダッシュに対する忠誠心が半端じゃないわ……。
「もめごとっていうのは「ダイズ領での横領ですよね?騎士団の皆さんがこぞって出ていかれたので、御用をお聞きしたのです」
 なかなか有能。対して騎士団員口軽いなぁ。
「王宮勤めだったのに、いいの?アレクの家の人が反対しないかなぁ?」
「自分は4男なので、正直どうでもいいのではと思います。いままで王宮勤めが出来ててラッキーくらいに思ってますよ」
 なるほどなぁ。ダッシュもそんな感じか?
「ダイズ領で代官を務めるにあたり、給金はもちろん支払う。ただ、王都からちょっと離れてるぞ?」
「自分は自然の中で生活する方が好きなんです。それに代官とは言え、領民とともに畑を耕したいです!」
 素晴らしいわ!こんな人なかなかいないもの。貴族でこんな人にはなかなかお目にかかれないわ。

「なんて有能な方なんでしょう?私はこの邸の執事のキルと申します。よろしくお願いいたします」
 キルまで太鼓判を押すんだから間違いないわ。
「アレクを採用!なるべく早く領地に行ってくれる?今、領地に代官不在なのよ~」
「了解いたしました。ダッシュ様に簡単にはお会いできないのでしょうが、全力で代官の仕事を全うしてきます!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

そうですか、私より妹の方を選ぶのですか。別に構いませんがその子、どうしようもない程の害悪ですよ?

亜綺羅もも
恋愛
マリア・アンフォールにはソフィア・アンフォールという妹がいた。 ソフィアは身勝手やりたい放題。 周囲の人たちは困り果てていた。 そんなある日、マリアは婚約者であるルーファウス・エルレガーダに呼び出され彼の元に向かうと、なんとソフィアがいた。 そして突然の婚約破棄を言い渡されるマリア。 ルーファウスはソフィアを選びマリアを捨てると言うのだ。 マリアがルーファウスと婚約破棄したと言う噂を聞きつけ、彼女の幼馴染であるロック・ヴァフリンがマリアの元に訪れる。 どうやら昔からずっとマリアのことが好きだったらしく、彼女に全力で求愛するロック。 一方その頃、ソフィアの本性を知ったルーファウス…… 後悔し始めるが、時すでに遅し。 二人の転落人生が待っていたのであった。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました

朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。 ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す── 「また、大切な人に置いていかれた」 残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。 これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。

「お前とは結婚できない」って言ったのはそっちでしょ?なのに今さら嫉妬しないで

ほーみ
恋愛
王都ベルセリオ、冬の終わり。 辺境領主の娘であるリリアーナ・クロフォードは、煌びやかな社交界の片隅で、ひとり静かにグラスを傾けていた。 この社交界に参加するのは久しぶり。3年前に婚約破棄された時、彼女は王都から姿を消したのだ。今日こうして戻ってきたのは、王女の誕生祝賀パーティに招かれたからに過ぎない。 「リリアーナ……本当に、君なのか」 ――来た。 その声を聞いた瞬間、胸の奥が冷たく凍るようだった。 振り向けば、金髪碧眼の男――エリオット・レインハルト。かつての婚約者であり、王家の血を引く名家レインハルト公爵家の嫡男。 「……お久しぶりですね、エリオット様」

『君とは釣り合わない』って言ったのはそっちでしょ?今さら嫉妬しないで

ほーみ
恋愛
「……リリアン。君は、もう俺とは釣り合わないんだ」  その言葉を聞いたのは、三か月前の夜会だった。  煌びやかなシャンデリアの下、甘い香水と皮肉まじりの笑い声が混ざりあう中で、私はただ立ち尽くしていた。  目の前にいるのは、かつて婚約者だった青年――侯爵家の跡取り、アルフレッド・グレイス。  冷たく、完璧な微笑み。  でも、私を見下ろす瞳の奥には、うっすらと迷いが見えていたのを私は見逃さなかった。 「……そう。じゃあ、終わりね」

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...