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Ep.3
しおりを挟む私達はなんとか魔界に到着した。
途中のモンスターに合った時は大変だった。聖女のラルがいても役には立たなかっただろうけど。
勇者は泣きながら剣を振るし(曰く「だって、斬られたら痛いだろう?」)、タンクがへっぴり腰だし、でなんだかんだと私は薬師だというのに毒を盛ったりしてなんとかここまでやってきた。
ここは…本当に魔界と呼ぶのだろうか?
途中で半殺しにして、自白剤を盛った会話が可能なモンスターに聞いた場所はここなのだけど?
「魔界というと、イメージ的に暗くてコウモリかカラスが飛んでいるイメージ」
わかる。それで、白骨が転がってたりするんだよね。
「俺、考えただけで泣きそう…」
勇者が何を言うのか?勇ましい者が‘勇者’だろうに…。
私達が足を踏み入れたそこは例えるならば、楽園。
そこで、意外な人物に出会った。
「「「あっ、前任の勇者!」」」
国王からは「魔界から帰らないから、おそらく命を落としたんだろう」と聞いていたその人。
「あ~、俺の事知ってるの?いやぁ、俺もなかなかの有名人だなぁ」
のんきだ。いったい彼に何が?
「ご無事だったのですね?国王もお喜びでしょう」
「いやいや、俺はシラハナ王国に帰る気はないよ。こっちでさぁ、なんというか恥ずかしいなぁ。うん、まぁ将来の伴侶っていうのができたからさぁ」
「奥さまですね?おめでとうございます!」
「どのような方で?」
普段はへっぴりで腰が引けてるのに、身を乗り出すように元・勇者サムに聞いている。
「うん、えーとこういうのも恥ずかしいなぁ。そうだなぁ。美人で気立てもよく、性格も良い」
ふむふむ。まぁ元とはいえ勇者だもんね。奥様もそうだろうね。
「魔族の方だよ。うーん、魔王様の侍女をしていたって言ったかなぁ?結構な重要な役職だったのに、寿退社みたいな事させちゃって申し訳なかったなぁ。でも、彼女今妊娠中でさぁ。もうすぐ俺と彼女の間の子が産まれるんだ♪女の子かな?男の子かな?ハーフの子は可愛いって言うからなぁ?」
魔族の方と結婚をなさったんですか…。驚きです。
ハーフの子が可愛いというのは、人間の人種間ではないんでしょうか?
種族間でのハーフの子を見るのは初めてになりそうです。
「あら、お客様?どっこいしょっと。やっぱり妊婦って動きにくいわね。妊娠前はもっと動けたのに」
そうでしょうね。魔王様の侍女をなさっていたとか?ですし。見た感じ普通ですけど…。奥様、角!頭に角が生えてます。
「初めまして。サム様の後釜で勇者をしていますロベルトです」
涙目で失礼でしょう?奥様美人なのに、泣きそうなの?
「初めまして。このパーティーでタンクをしていますブラッドです。よろしくお願いします!」
なんなの?いつもはへっぴり腰なのに、奥様が美人だから?食いつき気味じゃないの。
「初めまして。このパーティーで薬師をしています。ライラと申します。よろしくお願いします。何かお困りのことはありませんか?」
「うーん、悪阻が酷かったなぁ。そのあとはお腹が重いとかそのくらいだけど?」
「あらあら、奥様のような方が苦労するほどの大きな子がお腹にいるの?双子かしら?」
「種族間の妊娠ではよくある事なのよ?」
そうなんだ。覚えておこう。
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