職業・聖女~稼ぐわよ!

satomi

文字の大きさ
5 / 11

5.風邪騒動@アール村

しおりを挟む

 私達が暮らす村『リヒト村』よりもかなり北に位置する村、『アール村』では今、1シーズン風邪を引かないという薬が大流行!

「私達はそうねぇ、親に反対されて駆け落ちしてきたとでも言いましょうか?」
「嘘は好かないが、この場合やむを得ませんね」

「うちは風邪を引かないって薬を家族全員が飲んだから絶対にひかないでしょうね!ほほほ」
 アレは何?村人だけど、貴族ごっこでもしてるのかしら?
「あぁ、村人あるあるですね。ちょっとでも裕福な人がマウントを取る。みたいな?私が見るとなんだか滑稽で哀れですけれど」
 うん。ポールが言う通りだね。ちょっとお金があるからって偉ぶってるけど、所詮村人。そういえばうちの兄弟妹は大丈夫かな?
「貴女の兄弟妹は大丈夫でしょう。兄君はお金の管理にしっかりしているようですし、二人がごえいしているのですから」
 そうよね!兄とフェンとレスを信じよう!
「あの薬って高価なのかな?」
「だからあの女が‘家族全員が飲んだ’とマウントを取っているのでしょう。実際いくらなんでしょうね?」

 私は家族全員が飲んだという女に接触することにした。
「あのー、私達駆け落ちしてきて行く当てもなく……このままではこの冬に風邪を引いてどちらかが死んでしまうわっ。その薬っておいくらくらいなの?」
「私が特別に用意してあげてもいいわよ?薬の値段は1瓶で金貨2枚よ。つまり、一人金貨2枚ってことね。私のうちはぁ、まぁこの村で一番金持ちって言うかぁ。そんな訳で家族全員飲んだけど?」
「え?家族何人ですか?」
「そうねぇ、12人かしら?」
「・・・金貨24枚」
 多分ふっかけてるんだろうなぁ。
「飲みませんから、薬を見せていただけますか?」
「飲んだら金貨2枚は必ず請求するよ。嘘吐いたんだから、追加で金貨もう1枚」
 すごい暴利。この女、多分この村で人望ないだろうなぁ。
 
 私は渡された小瓶を鑑定した。
 ~無色透明の液体。90%以上がただの水。残りの10%に問題アリ。依存性アリ。大麻に近い成分を検知。
「ありがとうございました。わかりました」
 依存性あるって言うのが一番の問題よね。この薬を信じ切ってる村人から信頼を得る事ってできるかな?
「あ、ポール!会いたかったわ」
 私はポールに薬の鑑定結果を告げた。
「依存性アリで大麻に近いってもうこの国で販売停止ものじゃないか?風邪とは全く関係ないな。そのうち風邪を引く民が出てくるだろう」

 確かに風邪を引く人は現れた。でも……。
「ほら見なさい。薬を飲まなかったから風邪なんか引くことに……。あ~らゴメンなさい。薬を飲まなかったじゃなくて、の間違いだったわね。オホホ」
 そう言って、例の女は去っていった。

 うーん、この場合無償で力を出しましょう。
「初めまして。通りすがりの聖女です。これから、貴方の風邪を治します」
 この人がよくなるように私は祈った。
「どういうことだ?今まで怠かったし、辛かった体が嘘のように軽く。アンタのおかげだ。有難い」
「えーと、しばらく病人のフリをしていていただきたいのですが構いませんか?」
「アンタの頼みならなんでも聞くぜ?病人のフリ?大人しく寝てればいいんだろ?」
 まぁ、そうなんですけど。

 その後も風邪を引く人が現れては、あの女が薬の話をする。ということは続いた。
 そんな中、私は風邪を引いた方の治療をして回っていた。聖女だし。

 どんなに精神力が強くても引くときは引くものです。ついにあの女が風邪をひいた。
「あの薬を飲めば1シーズン風邪を引かないんじゃなかったの?まさか量が少なかったんじゃ……」
 などと言い、さらに飲もうとしたので、流石に私はポールと止めに入りました。
「この薬は風邪とは無縁のものです」
「通りすがりでこの村にいる貴女に何がわかるの?」
「一応、聖女なので薬の成分を外部より鑑定いたしました。この薬は9割がただの水。残りの1割が問題です。大麻と同じ成分を含んでおり、依存性が確認できました」
「そんなの嘘よ!」

「嘘じゃねーよ。この人のおかげで俺らの風邪がすっかりよくなったんだからなぁ」
「油断したらダメですよ。いつまた風邪をひくかわからないのですから」
 私がこれまで風邪を治してきた村人たちが、風邪をひいた女の所にやってきた。
「私の風邪も治してよ!」
「そうねぇ、金貨12枚ってところかしら?」
「え?他の村人はただで治したんじゃないの?」
「まぁそうなんですけど。私は貰えるところからは貰うというスタンスでこの職業をしてるので」
「聖女なんでしょ?」
「そうですけど?」
「のちに王妃になるんだからいいんじゃないの!」
「ハッ、冗談じゃないわよ。働かせられた挙句、会ったこともない王太子に嫁ぐなんてまっぴらごめんよ。そのうえ、連中私に言う事聞かせようとして私の家族を殺そうとしたのよ?国に操られるなんてごめんだわ。そういうわけで、ビタ一文まけないわよ。金貨12枚!」

 こういう家には絶対にいるのよね。用心棒的なのが。そのためのポールよ。
「まけないなら、少しは痛い目に遭った方がいいのかしら?」
 どうして悪役は似たような事を言うんだろう?
 背の高いというか、縦にも横にも幅のあるゴツイ男が現れた。
「ちょっとあの女に痛い目に遭わせてやってちょうだい」
 その男が私にとびかかろうとした瞬間に、ポールがゴツイ男の急所という急所に多分拳を入れた。ゴツイ男は白目を剥いて倒れてしまった。
「そう?そんなに金貨12枚が不服なの?それじゃあ、金貨15枚!」
「増えてるじゃない!わかったわよ。支払うわ、だから直してください」
「毎度アリ♡」
 私は結果的にこの女も治すことになった。金貨……もっとふっかけてもよかったなぁと後悔している。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

婚約破棄のお相手は

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。 幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。

落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった

風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」 王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。 しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。 追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。 一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。 「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」 これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ
恋愛
余命は、十八歳の卒業式まで。 彼女の死は、そのまま世界の終わりを意味していた。 世界を救う条件は――「恋をすること」。 入学式の朝、神様は笑って言った。 「生きたいなら、全力で恋をしなさい」 けれど誰かを選べば、誰かの未来が壊れる。 魔法学園で出会った三人の少年は、それぞれの形でアイリスを必要としていた。 守ることに人生を捧げ、やがて“忠誠”を失っていく従者。 正しさを失わないため、恋を選択として差し出す王族。 未来を視る力ゆえに、関わることを拒み続けた天才魔術師。 「恋は、選択なのか」 「世界より、大切なものはあるのか」 これは、「正解のない選択」を何度も突きつけられながら、最後に“自分の意志”で未来を選び取る少女の物語。 ――世界よりも、運命よりも、 ひとりにしないと決めた、その選択の先へ。 【毎日更新・完結保証作品(全62話)🪄】 ※運命選択×恋愛、セカイ系ファンタジー ※シリアス寄り・溺愛控えめ・執着・葛藤・感情重視 ※ハッピーエンド

追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。

ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。 辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。 ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。 その後、王都から助けを求める使者が現れる。 追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。 エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。 全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。 ◇ 命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。 ◇ ※他サイトにも投稿しております。

処理中です...