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5.風邪騒動@アール村
しおりを挟む私達が暮らす村『リヒト村』よりもかなり北に位置する村、『アール村』では今、1シーズン風邪を引かないという薬が大流行!
「私達はそうねぇ、親に反対されて駆け落ちしてきたとでも言いましょうか?」
「嘘は好かないが、この場合やむを得ませんね」
「うちは風邪を引かないって薬を家族全員が飲んだから絶対にひかないでしょうね!ほほほ」
アレは何?村人だけど、貴族ごっこでもしてるのかしら?
「あぁ、村人あるあるですね。ちょっとでも裕福な人がマウントを取る。みたいな?私が見るとなんだか滑稽で哀れですけれど」
うん。ポールが言う通りだね。ちょっとお金があるからって偉ぶってるけど、所詮村人。そういえばうちの兄弟妹は大丈夫かな?
「貴女の兄弟妹は大丈夫でしょう。兄君はお金の管理にしっかりしているようですし、二人がごえいしているのですから」
そうよね!兄とフェンとレスを信じよう!
「あの薬って高価なのかな?」
「だからあの女が‘家族全員が飲んだ’とマウントを取っているのでしょう。実際いくらなんでしょうね?」
私は家族全員が飲んだという女に接触することにした。
「あのー、私達駆け落ちしてきて行く当てもなく……このままではこの冬に風邪を引いてどちらかが死んでしまうわっ。その薬っておいくらくらいなの?」
「私が特別に用意してあげてもいいわよ?薬の値段は1瓶で金貨2枚よ。つまり、一人金貨2枚ってことね。私のうちはぁ、まぁこの村で一番金持ちって言うかぁ。そんな訳で家族全員飲んだけど?」
「え?家族何人ですか?」
「そうねぇ、12人かしら?」
「・・・金貨24枚」
多分ふっかけてるんだろうなぁ。
「飲みませんから、薬を見せていただけますか?」
「飲んだら金貨2枚は必ず請求するよ。嘘吐いたんだから、追加で金貨もう1枚」
すごい暴利。この女、多分この村で人望ないだろうなぁ。
私は渡された小瓶を鑑定した。
~無色透明の液体。90%以上がただの水。残りの10%に問題アリ。依存性アリ。大麻に近い成分を検知。
「ありがとうございました。イロイロわかりました」
依存性あるって言うのが一番の問題よね。この薬を信じ切ってる村人から信頼を得る事ってできるかな?
「あ、ポール!会いたかったわ」
私はポールに薬の鑑定結果を告げた。
「依存性アリで大麻に近いってもうこの国で販売停止ものじゃないか?風邪とは全く関係ないな。そのうち風邪を引く民が出てくるだろう」
確かに風邪を引く人は現れた。でも……。
「ほら見なさい。薬を飲まなかったから風邪なんか引くことに……。あ~らゴメンなさい。薬を飲まなかったじゃなくて、飲めなかったの間違いだったわね。オホホ」
そう言って、例の女は去っていった。
うーん、この場合無償で力を出しましょう。
「初めまして。通りすがりの聖女です。これから、貴方の風邪を治します」
この人がよくなるように私は祈った。
「どういうことだ?今まで怠かったし、辛かった体が嘘のように軽く。アンタのおかげだ。有難い」
「えーと、しばらく病人のフリをしていていただきたいのですが構いませんか?」
「アンタの頼みならなんでも聞くぜ?病人のフリ?大人しく寝てればいいんだろ?」
まぁ、そうなんですけど。
その後も風邪を引く人が現れては、あの女が薬の話をする。ということは続いた。
そんな中、私は風邪を引いた方の治療をして回っていた。聖女だし。
どんなに精神力が強くても引くときは引くものです。ついにあの女が風邪をひいた。
「あの薬を飲めば1シーズン風邪を引かないんじゃなかったの?まさか量が少なかったんじゃ……」
などと言い、さらに飲もうとしたので、流石に私はポールと止めに入りました。
「この薬は風邪とは無縁のものです」
「通りすがりでこの村にいる貴女に何がわかるの?」
「一応、聖女なので薬の成分を外部より鑑定いたしました。この薬は9割がただの水。残りの1割が問題です。大麻と同じ成分を含んでおり、依存性が確認できました」
「そんなの嘘よ!」
「嘘じゃねーよ。この人のおかげで俺らの風邪がすっかりよくなったんだからなぁ」
「油断したらダメですよ。いつまた風邪をひくかわからないのですから」
私がこれまで風邪を治してきた村人たちが、風邪をひいた女の所にやってきた。
「私の風邪も治してよ!」
「そうねぇ、金貨12枚ってところかしら?」
「え?他の村人はただで治したんじゃないの?」
「まぁそうなんですけど。私は貰えるところからは貰うというスタンスでこの職業をしてるので」
「聖女なんでしょ?」
「そうですけど?」
「のちに王妃になるんだからいいんじゃないの!」
「ハッ、冗談じゃないわよ。働かせられた挙句、会ったこともない王太子に嫁ぐなんてまっぴらごめんよ。そのうえ、連中私に言う事聞かせようとして私の家族を殺そうとしたのよ?国に操られるなんてごめんだわ。そういうわけで、ビタ一文まけないわよ。金貨12枚!」
こういう家には絶対にいるのよね。用心棒的なのが。そのためのポールよ。
「まけないなら、少しは痛い目に遭った方がいいのかしら?」
どうして悪役は似たような事を言うんだろう?
背の高いというか、縦にも横にも幅のあるゴツイ男が現れた。
「ちょっとあの女に痛い目に遭わせてやってちょうだい」
その男が私にとびかかろうとした瞬間に、ポールがゴツイ男の急所という急所に多分拳を入れた。ゴツイ男は白目を剥いて倒れてしまった。
「そう?そんなに金貨12枚が不服なの?それじゃあ、金貨15枚!」
「増えてるじゃない!わかったわよ。支払うわ、だから直してください」
「毎度アリ♡」
私は結果的にこの女も治すことになった。金貨……もっとふっかけてもよかったなぁと後悔している。
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