高いヒールが世界を救う?!

satomi

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1.高いヒールが全て

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 私の名前はロロ=ロワール。傾いた侯爵家ですが、これでもこのロール王国の王太子と婚約をしております。

 今夜は王城での夜会です。
 王太子様はドレスなどを送ってくださいました。
 ですが、ハイヒールはその家門の財産の証です。

 この国の格言です。 『ヒールの高さがステータスを表す』
 もう、ステータスの高い方ともなるとヒールが高く、つま先で歩いているのでは?と思うような靴(?)になります。

 我が家はそんなに財産もありませんし、私の見目も麗しいと言えないでしょう。社交界で私の事を『地味子』と呼んでいるのを私は知っています。

 しかし、婚約者として夜会に参加しないわけにはいきません。


 ハイヒールで靴擦れで痛く、つま先も痛くなりますが私のヒールは8センチ。10センチ越えの令嬢など余るほどいます。
 王太子殿下とダンスを踊っていた時です。


ぐきっ


 足首を捻ったようです。痛い。ジンジンと足首が悲鳴をあげているようです。
 とてもじゃないけれど、ハイヒールを履くなどとても無理です。
 
 足首を捻った時でしょうか?同時にハイヒールのヒールも折れてしまったようです。

「ふんっ、お前の俺を想う気持ちなんてその程度なんだろ!もうお前とは婚約破棄をする。お前の顔など見たくもない。国外追放だな」


 そんなぁ~。


 私は折れたハイヒールで帰宅せねばならないのでしょうか?婚約破棄の報せを持って。

「お困りのようですね、お嬢様。私がお手を貸します」
 そのように殿方は言うと、お姫様抱っこをされて馬車まで誘導されました。
 借りるのは手だけだったはずですが、腕まで借りてしまいました。
 
 その殿方は御者席で馬を操り、馬車を我が家まで運んでくださいました。

「お嬢様。申し遅れました。私の名前はオーディン=ジルと言います」
 えーっと、ジル…。ジルが家門というと…。⁉⁉…。ジル王国の王太子様?
「知らなかったとはいえ、失礼なことを。王太子様の御手を煩わせてしまって…」
門番の報せを聞いたのか家の中からお父様が出てきた。
「オーディン王太子様には申し訳なく。歓待したいのですが、なにぶん我が家は落ちぶれていまして碌な茶葉もありません」
「礼なら、一晩休ませてもらえると助かるのだが?」
「お安い御用です。皆の者、一番良い部屋によい寝具を!」
「いやいや、床でもいいのです。私は雨風がしのげればいいのですから。それよりも、令嬢がハイヒールによって靴擦れと足首の捻挫の被害を受けたみたいだから、そっちの方を診てあげてほしい」
「何て謙虚なお人なんだ!!」
 お父様を始め、使用人達までウルウルとした目でオーディン様を見つめている。


 翌日、私はこれでも王立の学園に行かねばなりません。学費もバカにできませんからね。
 それに…一応ステータスのためということで、私が通う学園は所謂お金持ち学園です。
 高位の貴族と一部大商人の子供(平民)のみが通うのです。

「あら、昨日殿下に婚約破棄されたロロ侯爵令嬢よ。やっぱり…今まで無理してたのね。今日はあんなに低いヒールの靴を履いてらっしゃるわ」
 捻挫をした足でハイヒールなど履けません。
 嫌味を言ってくる令嬢達ですが、私の後釜で『殿下の婚約者になりたい』という雰囲気がミエミエです。どなたもヒールが高いですね~。
 つま先で歩いているのでしょうか?器用ですね。
 制服で隠れていますが、ふくらはぎがやたらと筋肉質なのでは?
 女性らしからぬ逞しい脚をお持ちなのでは?と邪推してしまいます。
 ああ、嫌味ですが前から「婚約者ですのに、ヒールがあまり高くないんじゃなくって?王太子殿下の婚約者様なら誰よりも高いヒールで然るべきだと思うのですが?」とか言われていたので、結構平気です。
 ぺったんこの靴って安心感もあるし、捻挫した脚に優しいですね。


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