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二楽章
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とりあえずそこに座ってくれと頼み彼女を座らせた。
名前は夢原かなえ。聞くところによれば俺と同い年らしい。その割には背も低く幼く見える。
「それで、歌姫の歌を教えて欲しいって言ってたけど、それは俺にはできないな。」
彼女の目を見て俺はこう返した。彼女は少し悲しそうな顔をしてからこう返してきた。
「だけどあなたは歌姫の息子でしょ。同じ血が流れてるんでしょ。だったらあなたにだって教えることはできるはずでしょ?」
俺は少し頭をかいてから、彼女を見た。どうやら真剣なようだ。
「あのな、歌姫は俺の母なだけであって俺にはなんの才能もない。もし歌を習いたいならもう一人の部員の吉村雪歩ってやつに習ってくれ。」
「そうゆうことじゃないのよ.....。」
そう言って彼女は席を立ち部屋を去った。
『歌姫』
かつて俺の母はそう呼ばれていた。誰にも奏でることのできない唯一無二の歌声と称賛され、瞬く間に有名人になった。そして母はあっという間に世界の認める歌姫になった。有名になっていくと同時に、母は俺たち家族といる時間が少なくなっていった。それは喜ばしいことであると同時に少し寂しかった。そしていつからかその距離は遠くなり、俺たち家族は母と別々に暮らすようになった。そして俺は、音楽から遠のくようになった。
昔のことを思い出している間に俺はピアノの前に座ってそのまま鍵盤に手を添えていた。もう長らくピアノなんて弾いていなかったが、どうしてか弾きたくなった。
『ベートヴェン ピアノソナタ第17番 テンペスト』
母が4歳の頃の俺に弾いて聞かせてくれていた曲だ。ずっと聞いていたからかいつのまにか弾けるようになった。
静かな部屋で一人風に吹かれながら弾いていると、背後に気配を感じた。俺は弾くのをやめそっと背後を確認すると、そこには夢原かなえが立っていた。
「その曲、昔歌姫がコンクールで弾いてた曲よね。」
彼女の問いかけに俺はYesと答えた。
「やっぱりあなたしかいない。お願い。私に歌姫の歌を教えてちょうだい。」
そう言って俺の方に手をかけ揺らしてきた。
「わかった、わかったからとりあえず手を離してくれ。」
そう言うと彼女はすんなり手を離した。
「いいか、俺に母のような歌の才能を求めるな。今から教えることは昔母に言われたこと。それを教えてやるからもうこれ以上は求めるなよ。」
「えぇ、わかったわ。」
そう彼女は小さく頷いた。
それから3時間。俺は彼女に母から教えてもらったことを全て教えた。口だけでは不安だったためノートに文字で起こして渡した。
もう完全下校時刻ギリギリだった。彼女を部屋から出し俺は鍵をかけた。そのまま職員室に鍵を戻しに行き下駄箱に行くとそこで夢原かなえが待っていた。
「なんだ、まだ何か用事か?」
「えぇ、よかったら....よかったら一緒に帰ってくれないかしら。」
俺は少し呆れた表情を浮かべてからYesと答えた。
名前は夢原かなえ。聞くところによれば俺と同い年らしい。その割には背も低く幼く見える。
「それで、歌姫の歌を教えて欲しいって言ってたけど、それは俺にはできないな。」
彼女の目を見て俺はこう返した。彼女は少し悲しそうな顔をしてからこう返してきた。
「だけどあなたは歌姫の息子でしょ。同じ血が流れてるんでしょ。だったらあなたにだって教えることはできるはずでしょ?」
俺は少し頭をかいてから、彼女を見た。どうやら真剣なようだ。
「あのな、歌姫は俺の母なだけであって俺にはなんの才能もない。もし歌を習いたいならもう一人の部員の吉村雪歩ってやつに習ってくれ。」
「そうゆうことじゃないのよ.....。」
そう言って彼女は席を立ち部屋を去った。
『歌姫』
かつて俺の母はそう呼ばれていた。誰にも奏でることのできない唯一無二の歌声と称賛され、瞬く間に有名人になった。そして母はあっという間に世界の認める歌姫になった。有名になっていくと同時に、母は俺たち家族といる時間が少なくなっていった。それは喜ばしいことであると同時に少し寂しかった。そしていつからかその距離は遠くなり、俺たち家族は母と別々に暮らすようになった。そして俺は、音楽から遠のくようになった。
昔のことを思い出している間に俺はピアノの前に座ってそのまま鍵盤に手を添えていた。もう長らくピアノなんて弾いていなかったが、どうしてか弾きたくなった。
『ベートヴェン ピアノソナタ第17番 テンペスト』
母が4歳の頃の俺に弾いて聞かせてくれていた曲だ。ずっと聞いていたからかいつのまにか弾けるようになった。
静かな部屋で一人風に吹かれながら弾いていると、背後に気配を感じた。俺は弾くのをやめそっと背後を確認すると、そこには夢原かなえが立っていた。
「その曲、昔歌姫がコンクールで弾いてた曲よね。」
彼女の問いかけに俺はYesと答えた。
「やっぱりあなたしかいない。お願い。私に歌姫の歌を教えてちょうだい。」
そう言って俺の方に手をかけ揺らしてきた。
「わかった、わかったからとりあえず手を離してくれ。」
そう言うと彼女はすんなり手を離した。
「いいか、俺に母のような歌の才能を求めるな。今から教えることは昔母に言われたこと。それを教えてやるからもうこれ以上は求めるなよ。」
「えぇ、わかったわ。」
そう彼女は小さく頷いた。
それから3時間。俺は彼女に母から教えてもらったことを全て教えた。口だけでは不安だったためノートに文字で起こして渡した。
もう完全下校時刻ギリギリだった。彼女を部屋から出し俺は鍵をかけた。そのまま職員室に鍵を戻しに行き下駄箱に行くとそこで夢原かなえが待っていた。
「なんだ、まだ何か用事か?」
「えぇ、よかったら....よかったら一緒に帰ってくれないかしら。」
俺は少し呆れた表情を浮かべてからYesと答えた。
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