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ほどける心(2)
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「わたしには、16歳の頃に婚約をした婚約者がいてね」
ハルムートのその口ぶりから、その相手は今度結婚をする女性ではない、ということが伝わる。ミリアは唇を引き結んでじっと耳を傾けた。
「19歳になった頃、事故で死んでしまった。彼女の家の近くの川に転落をしてね」
「まあ……」
「本当は、その日、わたしと会う約束をしていたんだ。だけど、直前になってうちの傍系の伯父が亡くなってね。そちらの式に出ることになって」
なるほど。詳しい素性は知らないけれど、婚約者は傍系でもなく、少し遠い立場の人間だったのかとわかる。
「もちろん、もしも……なんてことは意味がない。死んでしまった者に対しては特に。だけど、その日にわたしがキャンセルをしなければ、とは思ってね。それから、どうにも彼女のことを忘れることが出来ず、この年まで一人で過ごしてしまった。女々しい話だ」
「ハルトムート様」
「そんなわたしに気を使ったヴィルマーには『自分には婚約者なんていらない』とまで言わせてしまっていた。問題ない、先に誰かと結婚をしてくれと言っても、やつはああ見えて情け深いところがあるし、大雑把に見えて案外と型は破らない。それに、自分が先に結婚をしてしまったらわたしの立場がなくなるだけではなく、わたしが逆に『じゃあこのままでもいいか』と開き直ると思っていたんだろう」
そう言って、困ったようにハルトムートは笑った。
「だが、やつは一度もわたしに『さっさと結婚をしろ』とは言わなかった。父はずっと言っていたけれどね。ヴィルマーと一番年が近い妹は結婚をして家を出たが、彼女もまあまあ言っていた。しかし、ヴィルマーは言わなかったな」
その言葉に、ついミリアは声を小さくあげて笑う。会ってからまだ一日めだけれど、サーレック辺境伯の人となりはなんとなくはわかるからだ。
「ありがたいことに、2年前に今の婚約者と知り合ってね。ようやく、この度結婚をすることになった。婚約をした時点で、ヴィルマーにも『もう大丈夫だ、頼むからお前も自由に結婚をしてくれ』と言ったが、やつはただ笑って、自分のようなやつのところに嫁いでくれる女性なんて、なかなか見つからないだろうと言うだけでね」
ハルトムートは少し苦笑いを浮かべて、ミリアを見た。
「日々忙しく外を走り回って、そのせいで彼女が出来ない、婚約者なんて出来やしないと言って笑っていたが、本当はそうではないとわたしも父も知っている。周囲から、サーレック辺境伯のところの息子は2人とも変わり者で婚約者がいない、と言われても笑っている。そういう男だ。ありがとう。あなたがやつと出会ってくれて、本当によかった」
そう言って深く頭を下げるハルトムート。貴族は生半可なことではそのように頭を下げることはない。ミリアは「やめてください」と言い放った。その声音は慌ててもいなかったし、冷たいものでもなく、ただ、静かにまっすぐと紡ぎだされたものだ。ハルトムートはそれに気づいたのか、すっと頭をあげるとミリアを見ながら数回瞬いた。
彼女はハルトムートを真顔で見つめながら
「笑って、歓迎していただければ、それだけで」
と言って、かすかに口端をあげる。それへ、ハルトムートが「うん」と言って笑みを漏らすのと、ノックの音が響くのが同時だった。開けなくても、声を聞かなくてもわかる。ヴィルマーだ。
「じゃあ、わたしはこれで」
そう言って腰を浮かせるハルトムート。ミリアがノックに「どうぞ」と答えれば、扉を開けたヴィルマーが出ようとするハルムートを見て驚く。
「失礼する……あれっ、兄貴」
「届け物をしただけだ」
そう言って、ハルトムートは軽く一礼をして出ていった。ミリアもそれへ一礼を返す。それ以上の言葉は双方ともに必要がなかった。
ぱたん、と扉が閉まる音。ヴィルマーはテーブルの上に置かれている刺繍が入ったハンカチを見て「母上からのものか」と尋ねた。
「はい。こちらをいただきました」
「うちの家族は気が早すぎるんだよな……」
「とはいえ、ハルトムート様の婚礼にご招待していただくかどうか、それを決めないといけない様子なので」
「あ」
ヴィルマーは声をあげて「そうか」と小さく呟いた。なるほど、彼もミリアと同じでそこまで考えが至っていなかったのか、と思う。
「そうか。今日、ここに来て会ったわけだし、折角だから君も招待したいという話かな」
そう言って、ヴィルマーは先ほどまでハルトムートが座っていたソファに腰をかけた。
「ええ」
「俺は君と結婚をしたいと思っている。どういう形になるかは、話し合って決めたいと思うのだが……素直に話すと、君と結婚をして、親父が言っていたようにサーレック辺境伯領地の一部を統治する手伝いを君にしてもらいたいと思っている。だが、君が手伝いたくないというなら、それでもかまわない」
「……」
「君がレトレイド伯爵領に長く戻りたいと言うなら、それも受け入れる。その、遠距離になるのは正直少し寂しいが、我慢もする。それでもいいから、君と……君に、俺の花嫁になって欲しい。いいだろうか」
そう言って、彼はテーブルの反対側からミリアの瞳をじっと見つめる。破格な相手だ、とミリアは思う。そこまでしてでも、自分がいいと言ってくれるなんて、と今さらながら心が満たされていく。
「わたしでよろしければ」
「そうか。ありがとう。とはいえ、婚約を交わすには、レトレイド伯爵に話をしにいかなければいけないな……」
「ええ。共に来いと、父には言われました」
なるほど、と頷くヴィルマー。
ハルムートのその口ぶりから、その相手は今度結婚をする女性ではない、ということが伝わる。ミリアは唇を引き結んでじっと耳を傾けた。
「19歳になった頃、事故で死んでしまった。彼女の家の近くの川に転落をしてね」
「まあ……」
「本当は、その日、わたしと会う約束をしていたんだ。だけど、直前になってうちの傍系の伯父が亡くなってね。そちらの式に出ることになって」
なるほど。詳しい素性は知らないけれど、婚約者は傍系でもなく、少し遠い立場の人間だったのかとわかる。
「もちろん、もしも……なんてことは意味がない。死んでしまった者に対しては特に。だけど、その日にわたしがキャンセルをしなければ、とは思ってね。それから、どうにも彼女のことを忘れることが出来ず、この年まで一人で過ごしてしまった。女々しい話だ」
「ハルトムート様」
「そんなわたしに気を使ったヴィルマーには『自分には婚約者なんていらない』とまで言わせてしまっていた。問題ない、先に誰かと結婚をしてくれと言っても、やつはああ見えて情け深いところがあるし、大雑把に見えて案外と型は破らない。それに、自分が先に結婚をしてしまったらわたしの立場がなくなるだけではなく、わたしが逆に『じゃあこのままでもいいか』と開き直ると思っていたんだろう」
そう言って、困ったようにハルトムートは笑った。
「だが、やつは一度もわたしに『さっさと結婚をしろ』とは言わなかった。父はずっと言っていたけれどね。ヴィルマーと一番年が近い妹は結婚をして家を出たが、彼女もまあまあ言っていた。しかし、ヴィルマーは言わなかったな」
その言葉に、ついミリアは声を小さくあげて笑う。会ってからまだ一日めだけれど、サーレック辺境伯の人となりはなんとなくはわかるからだ。
「ありがたいことに、2年前に今の婚約者と知り合ってね。ようやく、この度結婚をすることになった。婚約をした時点で、ヴィルマーにも『もう大丈夫だ、頼むからお前も自由に結婚をしてくれ』と言ったが、やつはただ笑って、自分のようなやつのところに嫁いでくれる女性なんて、なかなか見つからないだろうと言うだけでね」
ハルトムートは少し苦笑いを浮かべて、ミリアを見た。
「日々忙しく外を走り回って、そのせいで彼女が出来ない、婚約者なんて出来やしないと言って笑っていたが、本当はそうではないとわたしも父も知っている。周囲から、サーレック辺境伯のところの息子は2人とも変わり者で婚約者がいない、と言われても笑っている。そういう男だ。ありがとう。あなたがやつと出会ってくれて、本当によかった」
そう言って深く頭を下げるハルトムート。貴族は生半可なことではそのように頭を下げることはない。ミリアは「やめてください」と言い放った。その声音は慌ててもいなかったし、冷たいものでもなく、ただ、静かにまっすぐと紡ぎだされたものだ。ハルトムートはそれに気づいたのか、すっと頭をあげるとミリアを見ながら数回瞬いた。
彼女はハルトムートを真顔で見つめながら
「笑って、歓迎していただければ、それだけで」
と言って、かすかに口端をあげる。それへ、ハルトムートが「うん」と言って笑みを漏らすのと、ノックの音が響くのが同時だった。開けなくても、声を聞かなくてもわかる。ヴィルマーだ。
「じゃあ、わたしはこれで」
そう言って腰を浮かせるハルトムート。ミリアがノックに「どうぞ」と答えれば、扉を開けたヴィルマーが出ようとするハルムートを見て驚く。
「失礼する……あれっ、兄貴」
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そう言って、ハルトムートは軽く一礼をして出ていった。ミリアもそれへ一礼を返す。それ以上の言葉は双方ともに必要がなかった。
ぱたん、と扉が閉まる音。ヴィルマーはテーブルの上に置かれている刺繍が入ったハンカチを見て「母上からのものか」と尋ねた。
「はい。こちらをいただきました」
「うちの家族は気が早すぎるんだよな……」
「とはいえ、ハルトムート様の婚礼にご招待していただくかどうか、それを決めないといけない様子なので」
「あ」
ヴィルマーは声をあげて「そうか」と小さく呟いた。なるほど、彼もミリアと同じでそこまで考えが至っていなかったのか、と思う。
「そうか。今日、ここに来て会ったわけだし、折角だから君も招待したいという話かな」
そう言って、ヴィルマーは先ほどまでハルトムートが座っていたソファに腰をかけた。
「ええ」
「俺は君と結婚をしたいと思っている。どういう形になるかは、話し合って決めたいと思うのだが……素直に話すと、君と結婚をして、親父が言っていたようにサーレック辺境伯領地の一部を統治する手伝いを君にしてもらいたいと思っている。だが、君が手伝いたくないというなら、それでもかまわない」
「……」
「君がレトレイド伯爵領に長く戻りたいと言うなら、それも受け入れる。その、遠距離になるのは正直少し寂しいが、我慢もする。それでもいいから、君と……君に、俺の花嫁になって欲しい。いいだろうか」
そう言って、彼はテーブルの反対側からミリアの瞳をじっと見つめる。破格な相手だ、とミリアは思う。そこまでしてでも、自分がいいと言ってくれるなんて、と今さらながら心が満たされていく。
「わたしでよろしければ」
「そうか。ありがとう。とはいえ、婚約を交わすには、レトレイド伯爵に話をしにいかなければいけないな……」
「ええ。共に来いと、父には言われました」
なるほど、と頷くヴィルマー。
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