婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり

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10-2:ふたりの未来設計

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「クラリス、少し散歩しないか?」

 昼下がりの図書館。利用者が途切れた静かな時間を見計らって、リュカが声をかけてきた。

「はい。では、川辺の道へ」

 私は頷き、彼と肩を並べて歩き出した。

 アッシュ川のほとりは、春の陽光に満ちていて、水面がきらきらと揺れていた。風はやわらかく、どこか懐かしい匂いを運んでくる。

「この町は、僕にとって特別な場所になった」

 リュカが、ふとつぶやいた。

「私もです。ここで、自分という存在を見つけられた気がします」

 足元には、小さな野の花が咲き誇っていた。青や白の可憐な花々が、まるで道を縁取るように揺れている。

 川沿いの道を歩きながら、私たちはこれからの未来について語り合った。

「王宮での務めは、時に息が詰まる。だが、君がいると、どこにいても安らげる」

「私も……貴方と一緒なら、王宮でもこの町でも、自分らしくいられる気がします」

 その言葉に、リュカは少し目を細め、立ち止まった。そして真剣な瞳で、私を見つめる。

「君には、自由にいてほしい」

「え……?」

「王妃になることに縛られず、自分の好きな場所で、好きなことをしていていい。図書館に関わり続けてもいい。子どもたちに本を読み聞かせるのも、町の人に知識を伝えるのも――全部、君のままでいてほしい」

 その一言一言が、心の奥に静かに染み入ってくる。

「……ありがとうございます。私、たぶんこの町と、図書館を離れられないと思います。でも、それを理解してくださって……本当に嬉しいです」

「当たり前だ。僕が愛したのは、君の“今”なのだから」

 リュカはそっと私の手を取った。

 その掌の温もりが、未来を約束するもののように感じられて、胸が熱くなる。

「アシュベリーと王都。二つの場所を往復しながら、私たちなりの形を見つけていきましょう」

「……ああ。ふたりで築く未来を、大切に育てていこう」

 風が草を撫で、小鳥のさえずりが耳に届く。

 川の流れは変わらず穏やかで、優しく、確かだった。

 この町で、これからも、私たちの物語は続いていく――変わらぬ日常の中に、静かに息づく未来の鼓動とともに。
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