スキル【等価交換】で異世界商会革命！元社畜、現代知識でざまぁ成り上がる！

第54話：レンの挑戦、護衛見習い始動

ウィンドルフの森の奥深くへと続く古い道が、何者かによって封鎖されている――。
雑貨商人エドからその不穏な噂を聞いた御門優斗は、リヴィアと共に古文書の解読を進めつつも、ミカド商会の日常業務を滞りなくこなしていた。
しかし、ユウトの胸の内には、常に森のことが引っかかっていた。
いつか、あの場所を調査する必要があるかもしれない。
そのためにも、ミカド商会自身の「力」を、少しでも高めておく必要があった。

そんなユウトの思いを察してか、あるいは彼自身の成長の証か、レンが自ら、ある申し出をしてきたのは、エドから話を聞いた数日後のことだった。

「ユウトさん、俺……冒険者ギルドの、護衛の仕事を手伝ってみたいです」

朝食後のミーティングの席で、レンは緊張した面持ちながらも、はっきりとした口調でそう言った。
その瞳には、以前のような怯えはなく、強い意志の光が宿っている。

ユウトは、レンの突然の申し出に少し驚いたが、すぐにその真意を理解した。
彼は、ミカド商会を守るために、そして何よりも大切な妹ティナを守るために、もっと強くならなければならないと感じているのだ。
鍛冶屋のトマとの交流も、彼に良い刺激を与えているのだろう。

「護衛の仕事か……。確かに、レン君なら、そろそろ実地訓練を始めてもいいかもしれないな」

ユウトは、レンの成長を頼もしく思いながら、リヴィアに視線を送った。
リヴィアもまた、静かに頷き、レンの申し出を後押しする。

「レン様の身体能力は、同年代の子供たちと比べても抜きん出ております。ユウト様から剣術の基礎も学んでおられますし、ギルドの簡単な護衛任務であれば、良い経験になるかと存じますわ。もちろん、最初は必ず経験豊富な冒険者の方と組んでいただくという条件付きですが」

リヴィアの冷静な分析と提案に、ユウトも同意した。

「よし、分かった。一度、冒険者ギルドに相談してみよう。レン君の実力を認めてもらえれば、見習いとして簡単な任務に参加させてもらえるかもしれない」

その日の午後、ユウトはレンを伴って冒険者ギルドを訪れた。
受付で事情を説明すると、ギルド職員は最初こそ「子供の道楽か」といった訝しげな表情を浮かべたが、ユウトがミカド商会の代表であること、そしてレンが真剣に護衛としての技術を学びたがっていることを伝えると、少し態度を軟化させた。

「ふむ……ミカド商会のレン君か。確かに、最近は市場の配達なんかでも見かけるな。真面目に仕事をしているという評判は聞いているが……」

職員は腕を組み、レンの全身を値踏みするように見つめる。
レンは、その視線に怯むことなく、まっすぐに職員を見返した。

「ちょうど、明日、近隣の村へ薬草を届ける商人の護衛任務がある。比較的安全なルートだし、ベテランのCランク冒険者も同行する。もし、その冒険者が了承するなら、見習いとして参加させてやってもいいが……どうする？」

それは、レンにとって願ってもないチャンスだった。

「や、やります！ やらせてください！」

レンは、即座に力強く答えた。
その声には、喜びと興奮が隠せない。

翌日、レンはユウトとリヴィア、そして心配そうに見送るティナに励まされ、冒険者ギルドへと向かった。
そこで引き合わされたのは、屈強な体格をした、少し強面だが人の良さそうなCランク冒険者の男だった。
最初は「こんなガキを連れて行けるか」と難色を示した冒険者だったが、レンの真剣な眼差しと、ユウトからの「何かあればミカド商会が責任を持つ」という言葉、そして何より、レンが振るった訓練用の木剣の鋭い太刀筋を見て、渋々ながらも同行を許可した。

初めての護衛任務。
レンは緊張でガチガチだったが、ベテラン冒険者の指示に従い、必死に周囲を警戒し、荷馬車の護衛を務めた。
道中、森の中から飛び出してきた数匹のゴブリンに遭遇するという小さなトラブルもあったが、ベテラン冒険者があっという間に片付け、レンはその戦いぶりを目の当たりにして、プロの厳しさと強さを肌で感じた。
自分も、いつかあんな風に戦えるようになりたい。
その思いが、レンの胸を熱くした。

無事に任務を終え、ミカド商会に帰ってきたレンの顔には、疲労の色と共に、確かな達成感が浮かんでいた。

「ユウトさん、リヴィアさん、ティナ……ただいま戻りました！」

その声は、以前よりもずっと大きく、自信に満ち溢れていた。
ミカド商会の若い狼は、こうしてまた一つ、大きな壁を乗り越え、護衛見習いとしての確かな第一歩を踏み出したのだった。
その背中には、頼もしさの片鱗が、確かに見て取れた。