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第62話:護る者の試練~ルミアの戦い~
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ウィンドルフの森の奥深く、月の紋章が示した地下遺構。
そこで御門優斗たちを待ち受けていたのは、古の叡智だけではなかった。
暗い通路の奥から姿を現したのは、ズルズルと音を立てて蠢く、粘液にまみれた不定形の魔物。
リヴィアの推測によれば、古代のゴーレムの一種か、あるいは魔法によって生み出された自律型の防衛機構かもしれない。
「グルルルルゥゥッ……!!」
ルミアが、その異形の魔物に対して、威嚇の唸り声を上げる。
白銀の毛並みを逆立て、エンシェント・フェンリルとしての闘争本能を剥き出しにしている。
彼女は、ユウトたちを守るため、一歩も引くつもりはないようだ。
「ユウト様、あれはおそらく、この遺構に侵入する者を排除するために配置された『ガーディアン』のようなものでしょう。言葉は通じそうにありませんわね……!」
リヴィアが、冷静に状況を分析しながら叫ぶ。
その手には、護身用の短剣が握られている。
「レン、俺とリヴィアさんの後ろに下がってろ! ルミア、行けるか!?」
ユウトは、レンを庇うように前に立ち、ルミアに指示を出す。
レンは、まだ剣術の訓練を始めたばかりで、実戦経験はない。
こんな得体の知れない魔物を相手にできるはずもなかった。
「ウォンッ!!」
ルミアは、ユウトの言葉に力強く応えると、一瞬にしてその場から姿を消した。
いや、消えたのではない。
常人には目で追えないほどの、神速の動き。
次の瞬間、ルミアは魔物の側面に回り込み、鋭い爪を振り下ろしていた。
ギャヂンッ!
しかし、魔物の不定形の体は、まるで硬いゼリーのような弾力を持っており、ルミアの爪撃を深々と受け止め、押し返してきた。
魔物の表面からは、ジュワリと腐食性の高い粘液が飛び散る。
「ルミア、気をつけろ! あの粘液に触るな!」
ユウトが叫ぶ。
ルミアは、素早く身をかわし、再び距離を取った。
魔物は、ゆっくりとした動きながらも、確実にユウトたちの方へと迫ってくる。
その巨体からは、言いようのない圧迫感が放たれていた。
(こいつ、思ったより厄介だぞ……! 直接攻撃が効きにくい上に、あの粘液も危険だ。どうすれば……)
ユウトは、必死に打開策を考える。
【等価交換】で何か武器を作り出すか?
いや、そんな時間はない。MPも温存しておきたい。
「ユウト様! あの魔物の動き、鈍重ですが、休むことなくこちらへ向かってきております! このままではジリ貧ですわ!」
リヴィアが、短剣を構えながら警告する。
彼女の額にも、緊張の汗が滲んでいた。
その時だった。
ルミアが、再び大きく吠えた。
そして、その白銀の体毛が、まるで月光を凝縮したかのように、淡い光を放ち始めたのだ。
それは、以前、ユウトがMP効率化の実験をした際に見た光とは、明らかに異なる、より強力で、そして神々しいまでの輝きだった。
「ルミア……? お前、まさか……!」
ユウトが息をのむ。
ルミアは、その輝きをさらに増しながら、天に向かって遠吠えを上げた。
アオォォォォン―――!!
その声は、地下遺構全体に響き渡り、壁をビリビリと震わせる。
そして、次の瞬間、ルミアの口元に、白銀の光が集束し始めた。
それは、まるで小さな月そのもののような、眩い光の玉だった。
(あれは……! 古文書にあった、月光狼族の伝説の力の一部なのか……!?)
ユウトは、目の前で起きている超常現象に、ただ圧倒されるしかなかった。
ルミアは、その光の玉を、迫り来る異形の魔物に向けて、力強く解き放った。
シュゴォォッ!
白銀の閃光が、魔物の巨体を直撃する。
断末魔のような、気味の悪い叫び声と共に、魔物の体は一瞬にして蒸発し、跡形もなく消え去ってしまった。
残されたのは、床にわずかに残る粘液の痕跡と、そして、荒い息を繰り返しながらも、誇らしげにユウトを見上げるルミアの姿だけだった。
「ルミア……! すごい……! お前、そんな力も持ってたのか……!」
ユウトは、駆け寄り、ルミアを力いっぱい抱きしめた。
彼女の体は、まだ興奮で微かに震えている。
しかし、その瞳には、確かな達成感と、そしてユウトへの絶対的な信頼が宿っていた。
「ユウト様……今の技は……?」
リヴィアもまた、驚きを隠せない様子で尋ねる。
「俺にもよく分からない……。でも、きっと、ルミアが俺たちを守るために、隠していた力を出してくれたんだ」
ユウトは、ルミアの頭を優しく撫でながら答えた。
この地下遺構には、まだ多くの謎が隠されている。
そして、ルミアの中にもまた、計り知れないほどの可能性が秘められている。
しかし、今はただ、この頼もしい相棒の勇気と力に、心からの感謝を捧げたい。
ユウトは、改めて、仲間たちと共にこの試練を乗り越える決意を固めるのだった。
その一方で、彼は自覚せざるを得なかった。
今の自分は、あまりにも無力で、ルミアに守られるばかりだということを。
このままではいけない。
ユウトの胸に、新たな、そして切実な課題が芽生えた瞬間だった。
そこで御門優斗たちを待ち受けていたのは、古の叡智だけではなかった。
暗い通路の奥から姿を現したのは、ズルズルと音を立てて蠢く、粘液にまみれた不定形の魔物。
リヴィアの推測によれば、古代のゴーレムの一種か、あるいは魔法によって生み出された自律型の防衛機構かもしれない。
「グルルルルゥゥッ……!!」
ルミアが、その異形の魔物に対して、威嚇の唸り声を上げる。
白銀の毛並みを逆立て、エンシェント・フェンリルとしての闘争本能を剥き出しにしている。
彼女は、ユウトたちを守るため、一歩も引くつもりはないようだ。
「ユウト様、あれはおそらく、この遺構に侵入する者を排除するために配置された『ガーディアン』のようなものでしょう。言葉は通じそうにありませんわね……!」
リヴィアが、冷静に状況を分析しながら叫ぶ。
その手には、護身用の短剣が握られている。
「レン、俺とリヴィアさんの後ろに下がってろ! ルミア、行けるか!?」
ユウトは、レンを庇うように前に立ち、ルミアに指示を出す。
レンは、まだ剣術の訓練を始めたばかりで、実戦経験はない。
こんな得体の知れない魔物を相手にできるはずもなかった。
「ウォンッ!!」
ルミアは、ユウトの言葉に力強く応えると、一瞬にしてその場から姿を消した。
いや、消えたのではない。
常人には目で追えないほどの、神速の動き。
次の瞬間、ルミアは魔物の側面に回り込み、鋭い爪を振り下ろしていた。
ギャヂンッ!
しかし、魔物の不定形の体は、まるで硬いゼリーのような弾力を持っており、ルミアの爪撃を深々と受け止め、押し返してきた。
魔物の表面からは、ジュワリと腐食性の高い粘液が飛び散る。
「ルミア、気をつけろ! あの粘液に触るな!」
ユウトが叫ぶ。
ルミアは、素早く身をかわし、再び距離を取った。
魔物は、ゆっくりとした動きながらも、確実にユウトたちの方へと迫ってくる。
その巨体からは、言いようのない圧迫感が放たれていた。
(こいつ、思ったより厄介だぞ……! 直接攻撃が効きにくい上に、あの粘液も危険だ。どうすれば……)
ユウトは、必死に打開策を考える。
【等価交換】で何か武器を作り出すか?
いや、そんな時間はない。MPも温存しておきたい。
「ユウト様! あの魔物の動き、鈍重ですが、休むことなくこちらへ向かってきております! このままではジリ貧ですわ!」
リヴィアが、短剣を構えながら警告する。
彼女の額にも、緊張の汗が滲んでいた。
その時だった。
ルミアが、再び大きく吠えた。
そして、その白銀の体毛が、まるで月光を凝縮したかのように、淡い光を放ち始めたのだ。
それは、以前、ユウトがMP効率化の実験をした際に見た光とは、明らかに異なる、より強力で、そして神々しいまでの輝きだった。
「ルミア……? お前、まさか……!」
ユウトが息をのむ。
ルミアは、その輝きをさらに増しながら、天に向かって遠吠えを上げた。
アオォォォォン―――!!
その声は、地下遺構全体に響き渡り、壁をビリビリと震わせる。
そして、次の瞬間、ルミアの口元に、白銀の光が集束し始めた。
それは、まるで小さな月そのもののような、眩い光の玉だった。
(あれは……! 古文書にあった、月光狼族の伝説の力の一部なのか……!?)
ユウトは、目の前で起きている超常現象に、ただ圧倒されるしかなかった。
ルミアは、その光の玉を、迫り来る異形の魔物に向けて、力強く解き放った。
シュゴォォッ!
白銀の閃光が、魔物の巨体を直撃する。
断末魔のような、気味の悪い叫び声と共に、魔物の体は一瞬にして蒸発し、跡形もなく消え去ってしまった。
残されたのは、床にわずかに残る粘液の痕跡と、そして、荒い息を繰り返しながらも、誇らしげにユウトを見上げるルミアの姿だけだった。
「ルミア……! すごい……! お前、そんな力も持ってたのか……!」
ユウトは、駆け寄り、ルミアを力いっぱい抱きしめた。
彼女の体は、まだ興奮で微かに震えている。
しかし、その瞳には、確かな達成感と、そしてユウトへの絶対的な信頼が宿っていた。
「ユウト様……今の技は……?」
リヴィアもまた、驚きを隠せない様子で尋ねる。
「俺にもよく分からない……。でも、きっと、ルミアが俺たちを守るために、隠していた力を出してくれたんだ」
ユウトは、ルミアの頭を優しく撫でながら答えた。
この地下遺構には、まだ多くの謎が隠されている。
そして、ルミアの中にもまた、計り知れないほどの可能性が秘められている。
しかし、今はただ、この頼もしい相棒の勇気と力に、心からの感謝を捧げたい。
ユウトは、改めて、仲間たちと共にこの試練を乗り越える決意を固めるのだった。
その一方で、彼は自覚せざるを得なかった。
今の自分は、あまりにも無力で、ルミアに守られるばかりだということを。
このままではいけない。
ユウトの胸に、新たな、そして切実な課題が芽生えた瞬間だった。
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