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第1章 転移と出会いと、初めてのごはん
第15話『給食センターで国が変わる話(飯テロ警報)』
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「……ここが、“調理室”?」
ユウトは、王都に新設された“共同厨房”の前に立っていた。
王都グラン・ベルトで初となる公的な給食センター、それは──神子の「おなかすいた」の一言から始まった。
「ぼくが毎回ごはん作るより、みんなでごはん食べた方がいいと思ったんだよね」
その発言が、まさか“国家プロジェクト”になるとは、本人は知る由もない。
***
施設内部。ピカピカの大鍋と魔法火炉(まほうかろ)、そして「氷魔法庫」に満ちた冷却室。
試作段階で用意されたのは、なんと1日1万食を提供できる巨大調理場だった。
「きゅ、給食ってそんなレベルのものじゃ……!」
「いえ! 神子様の味を1万分再現せねばならぬのです!!」
「再現って、そんなの無理だよ!? 調味料も目分量だし!!」
……が。
その瞬間、ユウトは手を叩いた。
「よーし、今日は“コロッケ定食”にしよう!」
──ここからが、神子ユウトの飯テロ、いや“国家転覆級の調理”の始まりだった。
***
「まずね、じゃがいもを蒸すんだよ。茹でると水っぽくなるから。
皮ごと蒸して、熱いうちにむくと、甘みも香りも逃げにくいの」
「ほぉぉぉ……!」
「玉ねぎは、みじん切りにして飴色になるまで炒める。水分を飛ばして、甘さを引き出すの。
……焦げ茶色になる寸前、そこで止めるのがポイントだよ!」
「メモ取れぇぇ!!」
──そして、合挽き肉。
「これは炒めないの?」
「ううん、炒めない。コロッケの中身って“肉の香り”が残ってる方が美味しいから。
火を通すのは揚げる時だから、ここでは混ぜるだけ。ぎゅっと旨みが閉じ込められるんだ」
「すでに……神域……」
さらに。
「パン粉は市販のじゃなくて、自分でパンを乾かしておくといいよ。
魔法で水分だけ飛ばして、カリカリにして、それを粉砕機で細かくするの!」
「尊い……すべてが……尊い……」
そして、ついに揚げの工程へ。
魔法火炉で温度を一定に保ち、180度をキープ。
「衣は薄めで、表面にだけバリっとした食感が出るように……。中はしっとり、とろっとね」
ユウトの指先が、コロッケの油の中で踊る。
揚がった瞬間──
「さくっ……っ」
その音に、場が静まった。
誰もが無言で、試作品を見つめた。
「……食べても、いい?」
ユウトが差し出す一口を、ユリウスが震える手で受け取る。
──その瞬間。
「んっ……うまっ……!? うま、う、う、うまああああ!!?」
頬が震え、目が潤み、全身から恋の息が漏れ出した。
「おいしいだけじゃない……幸福が詰まってる……! これ、恋だ……!!」
そしてなぜか、全員がプロポーズした。
「結婚してくれ!!」
「神子様ァァァ!!!」
「婚姻届ここに用意してますッ!!」
「嫁に来てくださいッ!! いや婿でもいいですッ!!」
ユウトは、きょとんとした顔でコロッケをもぐもぐしていた。
***
その日の午後。
王都の各地に、コロッケ屋台が自然発生し、瞬く間に経済が動いた。
・ジャガイモ農家の取引価格が高騰
・パン工房が一斉に“生パン粉”製造を開始
・魔法火炉の注文が10倍に
・「コロッケ通貨(仮称)」なる商品券が市場を流通
ギルハルトの記録によれば:
『神子の作る揚げ物は、国家の通貨よりも価値を持つ』
と、正式に記された。
──そして、全員が恋をした。
ただの定食で、国が動いた。
だが、その中心にいた少年は、ただこう言ったのだった。
「……うん、今日のはちょっと塩が強かったかも」
──それだけ。
ユウトは、王都に新設された“共同厨房”の前に立っていた。
王都グラン・ベルトで初となる公的な給食センター、それは──神子の「おなかすいた」の一言から始まった。
「ぼくが毎回ごはん作るより、みんなでごはん食べた方がいいと思ったんだよね」
その発言が、まさか“国家プロジェクト”になるとは、本人は知る由もない。
***
施設内部。ピカピカの大鍋と魔法火炉(まほうかろ)、そして「氷魔法庫」に満ちた冷却室。
試作段階で用意されたのは、なんと1日1万食を提供できる巨大調理場だった。
「きゅ、給食ってそんなレベルのものじゃ……!」
「いえ! 神子様の味を1万分再現せねばならぬのです!!」
「再現って、そんなの無理だよ!? 調味料も目分量だし!!」
……が。
その瞬間、ユウトは手を叩いた。
「よーし、今日は“コロッケ定食”にしよう!」
──ここからが、神子ユウトの飯テロ、いや“国家転覆級の調理”の始まりだった。
***
「まずね、じゃがいもを蒸すんだよ。茹でると水っぽくなるから。
皮ごと蒸して、熱いうちにむくと、甘みも香りも逃げにくいの」
「ほぉぉぉ……!」
「玉ねぎは、みじん切りにして飴色になるまで炒める。水分を飛ばして、甘さを引き出すの。
……焦げ茶色になる寸前、そこで止めるのがポイントだよ!」
「メモ取れぇぇ!!」
──そして、合挽き肉。
「これは炒めないの?」
「ううん、炒めない。コロッケの中身って“肉の香り”が残ってる方が美味しいから。
火を通すのは揚げる時だから、ここでは混ぜるだけ。ぎゅっと旨みが閉じ込められるんだ」
「すでに……神域……」
さらに。
「パン粉は市販のじゃなくて、自分でパンを乾かしておくといいよ。
魔法で水分だけ飛ばして、カリカリにして、それを粉砕機で細かくするの!」
「尊い……すべてが……尊い……」
そして、ついに揚げの工程へ。
魔法火炉で温度を一定に保ち、180度をキープ。
「衣は薄めで、表面にだけバリっとした食感が出るように……。中はしっとり、とろっとね」
ユウトの指先が、コロッケの油の中で踊る。
揚がった瞬間──
「さくっ……っ」
その音に、場が静まった。
誰もが無言で、試作品を見つめた。
「……食べても、いい?」
ユウトが差し出す一口を、ユリウスが震える手で受け取る。
──その瞬間。
「んっ……うまっ……!? うま、う、う、うまああああ!!?」
頬が震え、目が潤み、全身から恋の息が漏れ出した。
「おいしいだけじゃない……幸福が詰まってる……! これ、恋だ……!!」
そしてなぜか、全員がプロポーズした。
「結婚してくれ!!」
「神子様ァァァ!!!」
「婚姻届ここに用意してますッ!!」
「嫁に来てくださいッ!! いや婿でもいいですッ!!」
ユウトは、きょとんとした顔でコロッケをもぐもぐしていた。
***
その日の午後。
王都の各地に、コロッケ屋台が自然発生し、瞬く間に経済が動いた。
・ジャガイモ農家の取引価格が高騰
・パン工房が一斉に“生パン粉”製造を開始
・魔法火炉の注文が10倍に
・「コロッケ通貨(仮称)」なる商品券が市場を流通
ギルハルトの記録によれば:
『神子の作る揚げ物は、国家の通貨よりも価値を持つ』
と、正式に記された。
──そして、全員が恋をした。
ただの定食で、国が動いた。
だが、その中心にいた少年は、ただこう言ったのだった。
「……うん、今日のはちょっと塩が強かったかも」
──それだけ。
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