この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO

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第164話 北から来た氷の王子

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西の王国との同盟を結び、王都に戻ってきたボクたちは、束の間の休息を……取れるはずだった。

 ──はずなのに。

「神子ルカ様ッ! 北方“氷結の国”よりの急使です!」
 城門で息を切らした兵士が叫んだ。
 その声を合図に、白銀の毛皮を纏った一団が姿を現す。

 先頭の男は、氷のように透き通った青い瞳。
 しかも背が高い……というか、他の誰よりも頭一つ分は高い。
 ……って、この世界みんな大きいけど、君はさらに大きくない?

「遠路はるばる、お初にお目にかかります。北の王子、セレン=アークライトと申します」
 低く澄んだ声が耳に響く。
 その瞬間、周囲の空気が一瞬で凍りついた……いや、本当に気温が下がった。息が白い。

「貴方を迎えに参りました。北の国は、貴方を必要としております」
 セレンは跪き、氷の花を差し出す。
「……これは?」
「“永遠の誓い”の花。贈られた者は、贈り主と魂を共にする……」
「ちょっと待って、さらっと何そのプロポーズめいた説明!?」
 ボクの叫びに、周囲の兵士がどよめいた。

 カインが眉をひそめる。
「待て、北の王子。神子を口説くのは条約違反だ」
 ユリウスは口元を押さえて笑っている。
「やはり来たか……ルカ殿の“全方位モテ”の新章が」
 レオンは完全に呆れ顔。
「また増えるのか……追っかけが」

 セレンはボクの手を取り、指先に唇を寄せた。
「私は本気です。貴方の存在が、我が国を救う光なのです」
 その言葉は、まるで氷の刃のように冷たいのに、妙に熱かった。

 ──西の国の再建も、アスとの約束も、まだ心の奥で温かく燃えている。
 そんな中で、また新しい鎖(恋愛フラグ)が伸びてきた気がする。

 ……これ、平穏な日々なんて、やっぱり来ないんじゃないかな。
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