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第197話 「風が運んだ匂い」
中庭の冷たい空気の中で、カディルの視線は一瞬だけ周囲を舐めるように走った。
その目が向けられたのは、ボクでもセレディスでもない——夜の闇そのものだ。
「……で?」セレディスが低く問う。
「試すだけのために、短剣を投げる奴がどこにいる。」
カディルは肩をすくめた。
「だから“ついで”だって言ってんだろ。……お前らの後ろに、妙な風の流れがあった。」
「風?」ボクは首を傾げる。
ただの夜風とは違う、微かな湿り気を帯びた空気が確かに中庭を横切っている。
その風には、かすかに鼻を突く匂いが混じっていた。
——血と、香草。
「……誰か、怪我してる?」
ボクの言葉にカディルは頷く。
「しかも城の人間じゃねえ。あの匂いは街の地下水路から来たもんだ。」
セレディスが目を細める。
「侵入者か。」
その瞬間、遠くで甲高い鐘の音が響き渡った。
夜間警戒の合図。
城門の方角から兵士たちの叫び声がかすかに届く。
カディルが腰の剣に手をかけ、ボクに視線を向けた。
「ルカ、お前は——」
「行くよ。」
迷いはなかった。
この匂い、この気配。何か大きなことが起きようとしている。
セレディスが短く息を吐き、マントを翻す。
「……なら、俺の後ろから離れるな。」
月明かりの中、三人は城門へと駆け出した。
足音が敷石を打ち、風が背中を押す。
夜の空気が、これから起きる騒乱を告げていた。
その目が向けられたのは、ボクでもセレディスでもない——夜の闇そのものだ。
「……で?」セレディスが低く問う。
「試すだけのために、短剣を投げる奴がどこにいる。」
カディルは肩をすくめた。
「だから“ついで”だって言ってんだろ。……お前らの後ろに、妙な風の流れがあった。」
「風?」ボクは首を傾げる。
ただの夜風とは違う、微かな湿り気を帯びた空気が確かに中庭を横切っている。
その風には、かすかに鼻を突く匂いが混じっていた。
——血と、香草。
「……誰か、怪我してる?」
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夜間警戒の合図。
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「……なら、俺の後ろから離れるな。」
月明かりの中、三人は城門へと駆け出した。
足音が敷石を打ち、風が背中を押す。
夜の空気が、これから起きる騒乱を告げていた。
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