アメフト物語

第５０話 朝練の登校途中

部活奮闘記 ― 朝練の登校途中

冬の朝。
吐く息が白く染まる。
アメフトの朝練に向かうため、まだ空が薄暗い時間に家を出た。

校門へ続く道の角を曲がったとき、
前を歩く見覚えのある姿が目に入った。

――幸子ちゃんだ。

女子サッカー部も朝練があると聞いていた。
いつもより少し早い登校。
彼女の肩にかかる髪が、朝の光を受けてきらめいていた。

「おはよう！」
思わず声をかける。

振り返った幸子ちゃんが、少し驚いた顔をして、
すぐにふわりと笑った。

「おはよう。朝練、行くの？」
「うん。幸子ちゃんも？」
「うん、今日はランメニューだから、ちょっと早めに。」

並んで歩く。
二人の靴が霜の降りたアスファルトを踏む音だけが響く。

最初は何を話せばいいかわからなかったけど、
部活の話、授業の話、好きな音楽の話――
少しずつ、言葉が自然に溶けていった。

校門の前に着く頃には、
寒さよりも心の中の温かさの方が強くなっていた。

「じゃあ、また放課後！」
幸子ちゃんが小さく手を振ってグラウンドへ駆けていく。

その背中を見送りながら、
胸の奥がふわりと熱くなった。

（よし、今日も頑張ろう。）

冷たい風が吹いても、心は不思議と暖かかった。