東大受験物語

けんしろー

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第62章 夏の出逢い

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第62章 夏前の出会いと夏季講習の決意

前期の河合塾の授業が終わり、悠真は夏季講習を日本史と世界史だけに絞ることに決めた。
効率よく、好きな科目を伸ばしたいという気持ちからだった。

ある日、西原と共に大田区の洗足池へ足を運んだ。
話題になっていた勝海舟記念館を訪れるためだった。

洗足池の穏やかな水面を見つめながら、二人はボートに乗った。
静かな波の揺らぎが心地よく、日常の喧騒を忘れさせてくれる。

その後、洗足池のすぐ横にある洗足池図書館へ向かうと、ひとりの男性が東大の青本を開いていた。
彼は30代前半くらいに見えたが、悠真と目が合うと柔らかい笑顔で会釈した。

トイレで偶然再会したとき、悠真は勇気を出して声をかけた。
「僕も東大を目指しているんです」

その男性は自己紹介をした。
「俺は畠山健太郎。東大理科三類を目指している。医者になるのが夢だ」

しばらくして、西原も合流し、三人は図書館のベンチに座って話し始めた。

悠真は夏の勉強計画について話すと、健太郎は少し真剣な表情で言った。
「センター試験や共通テストのマーク式問題は、記述式で解いてみるんだ。しかも22年分だよ」

その熱意に心を動かされた悠真は感謝を伝えた。

帰り道、悠真はぽつりとつぶやいた。
「なんだか健太郎さんって、勝海舟みたいな人だよね。不思議なオーラをまとっている」

西原は笑いながら応えた。
「確かに、健太郎さんも魅力的な人だけど、君ほどはカッコよくはないけどね」

悠真の胸には、新しい夏への覚悟が静かに芽生えていた。

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