東大受験物語

けんしろー

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第20章 問い直す夜

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第20章 問い直す夜

新緑がまぶしい五月、学校主催の勉強合宿が開催された。
場所は郊外にある研修施設。静かな山間に建つ、三泊四日の集中学習の場。

集められたのは、各学年から選ばれた希望者たち。
悠真、高村、西原もその中にいた。


---

それぞれの課題と向き合う

1日目、開会式のあとに配られたのは、一人一人の課題表。
それをもとに、午前・午後・夜の3部構成で各自の学習が組まれる。

悠真の課題は、数学ⅡBの演習強化と国語の記述。
高村は英語の文法整理と日本史の暗記。
西原は英語の長文読解と古文が重点だった。

図書室のような自習室では、皆が真剣に教材に向き合っていた。
ときおり、西原が問題を前に首をかしげている姿を見て、悠真は静かに頬が熱くなるのを感じた。

> ——自分も頑張らなきゃ。負けていられない。




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夜の風と、静かな告白

3日目の夜、予定されていた学習時間が終わり、全体での振り返りも終わったあと。
宿舎の裏にある小さなウッドデッキで、悠真と高村は缶コーヒー片手に並んで腰をかけていた。

「……なあ、悠真」

「ん?」

「おれさ……実は最近、家がけっこうヤバくてさ」

「……え?」

高村は缶を見つめたまま、ぽつりぽつりと語りはじめた。

父親がリストラされ、母親がパートで支える家計。
兄も大学を諦めて就職した。
自分だけが「大学受験」を目指していいのか、そんな思いに毎晩押しつぶされそうになるという。

「東大とかさ、夢見てるのが悪いことみたいに思えてくるんだよ。
 ——おれが勉強してる意味って、なんなんだろうって」

悠真は返す言葉が見つからなかった。

けれど、気づけば口を開いていた。

「……たぶんさ、誰かに“許される夢”なんてないと思う。
 でも、“本気で願った夢”って、意味があると思うんだよ」

高村が、初めて少し笑った。

「お前、たまにカッコいいこと言うな」

「いつもカッコいいだろ?」

「ははっ、そりゃない」

二人は笑い、しばらく夜風の中に身を任せていた。


---

西原のまなざし

翌朝。朝の自習時間が始まる直前、廊下で西原が声をかけてきた。

「昨日の夜、少し聞こえてた。……高村くんの話」

「……そっか」

「……私も、誰かに夢をもらってきた。
 今は、その“誰か”に、少しでも届きたくて勉強してる。
 だから私も、諦めないって決めたんだ」

悠真は静かに頷いた。

勉強とは、ただの競争じゃない。
誰かと、誰かの人生と、未来をつなぐ橋のようなものかもしれない。


---

最終日のまとめの時間。
一人一人が「合宿で学んだこと」を書き出すワークで、悠真はこう書いた。

> 「勉強の意味は、まだ完全には分からない。
でも、大切な人のために頑張るのは、きっと間違ってないと思う。」
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