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第30章 春の決意、合格への加速
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第30章 春の決意、合格への加速
三月、春の風が少しずつ冷たさを緩めていく中で、校舎の空気はますます熱を帯びていた。
あと数週間で、三年生になる。
誰もがその事実を意識していた。
悠真は、冬の模試の結果と先生方の講評プリントを何度も見返していた。
「やるべきこと」は、はっきりしていた。
共通テストでの確実な得点力と、二次試験での“記述力”の完成。
それはまるで、二つの山を同時に登るような感覚だった。
---
東進の共通テスト対策
春の初め、東進の校舎では「新高三生向けの春期特別講座」が始まっていた。
悠真は、共通テスト対策の英語リスニングと国語(現代文・古典)を重点的に選んだ。
西原は同じ時間帯で古文・漢文の講義に出ており、教室の前でばったり会うことも増えた。
「最近、リスニングどう?」
「うーん、内容はだいたい取れるようになってきたけど、速読と同時処理が課題かも」
そんなやりとりが、自然と交わせるようになっていた。
勉強が、二人の距離をゆっくりと縮めていく。
---
永井先生の春期ゼミと記述演習
春休み後半は、永井先生の記述強化ゼミに参加した。
内容は、東大の過去問を軸にした実戦演習と添削指導。
「“わかっている”と“書ける”の間には、海ほどの距離がある。
今からその海を泳ぎ切る練習を始めよう」
英語の自由英作文、現代文の要約・記述、数学の論証問題——
一問一問に“思考”と“構築”が必要だった。
高村は数学の論述力が一気に伸びていた。
西原は記述型の現代文に鋭さを増していた。
そして悠真は、「丁寧に書く」「論理をつなげる」「採点者に伝わる文章」という三つの柱を意識することで、記述答案に“芯”が通り始めていた。
---
それぞれの進路の輪郭
春期ゼミの最終日、永井先生が言った。
「志望理由書や面接は、“なぜ東大か”ではなく、“なぜ自分が東大でなければならないか”を語れるかが鍵になる」
その言葉が、悠真の胸に刺さった。
その夜、ノートに自分なりの言葉を書きつけた。
> 「自分の可能性を、最も広く開ける場所で、最も深く学びたい。
それが東大であると、今の自分は信じている。」
高村は、「工学部でAIの研究がしたい。将来、社会を変える技術者になりたい」と宣言し、理一を志望に据えた。
西原は、「教育に関わる仕事がしたい。心とことばの繋がりに興味がある」と言って、文三を第一志望に決めた。
三人のビジョンが、それぞれ“輪郭”を持ち始めていた。
---
高村との再宣言
春休み最後の日、学校の図書室で、悠真と高村は向き合っていた。
「いよいよ、だな。高三」
「そうだな。でも、怖くない。今は」
高村が笑う。
「怖いままでいいんだよ。ただ、それでも前を向いて、勉強し続ける。それが、強さだと思うから」
ふと、高村が手帳を取り出し、赤い文字でこう書いて見せた。
> 「2026年2月25日 東大合格発表。全員、笑っていること。」
悠真はそれを見て、小さくうなずいた。
「必ず、な」
---
進級と、新しい春
四月。いよいよ三年生へ進級。
廊下のクラス表に、悠真の名前が見つかる。西原も同じクラスだった。
新しい一年が始まる。
受験という長い旅の、ラストステージ。
ここからは“本気の一年”だ。
三月、春の風が少しずつ冷たさを緩めていく中で、校舎の空気はますます熱を帯びていた。
あと数週間で、三年生になる。
誰もがその事実を意識していた。
悠真は、冬の模試の結果と先生方の講評プリントを何度も見返していた。
「やるべきこと」は、はっきりしていた。
共通テストでの確実な得点力と、二次試験での“記述力”の完成。
それはまるで、二つの山を同時に登るような感覚だった。
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東進の共通テスト対策
春の初め、東進の校舎では「新高三生向けの春期特別講座」が始まっていた。
悠真は、共通テスト対策の英語リスニングと国語(現代文・古典)を重点的に選んだ。
西原は同じ時間帯で古文・漢文の講義に出ており、教室の前でばったり会うことも増えた。
「最近、リスニングどう?」
「うーん、内容はだいたい取れるようになってきたけど、速読と同時処理が課題かも」
そんなやりとりが、自然と交わせるようになっていた。
勉強が、二人の距離をゆっくりと縮めていく。
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永井先生の春期ゼミと記述演習
春休み後半は、永井先生の記述強化ゼミに参加した。
内容は、東大の過去問を軸にした実戦演習と添削指導。
「“わかっている”と“書ける”の間には、海ほどの距離がある。
今からその海を泳ぎ切る練習を始めよう」
英語の自由英作文、現代文の要約・記述、数学の論証問題——
一問一問に“思考”と“構築”が必要だった。
高村は数学の論述力が一気に伸びていた。
西原は記述型の現代文に鋭さを増していた。
そして悠真は、「丁寧に書く」「論理をつなげる」「採点者に伝わる文章」という三つの柱を意識することで、記述答案に“芯”が通り始めていた。
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それぞれの進路の輪郭
春期ゼミの最終日、永井先生が言った。
「志望理由書や面接は、“なぜ東大か”ではなく、“なぜ自分が東大でなければならないか”を語れるかが鍵になる」
その言葉が、悠真の胸に刺さった。
その夜、ノートに自分なりの言葉を書きつけた。
> 「自分の可能性を、最も広く開ける場所で、最も深く学びたい。
それが東大であると、今の自分は信じている。」
高村は、「工学部でAIの研究がしたい。将来、社会を変える技術者になりたい」と宣言し、理一を志望に据えた。
西原は、「教育に関わる仕事がしたい。心とことばの繋がりに興味がある」と言って、文三を第一志望に決めた。
三人のビジョンが、それぞれ“輪郭”を持ち始めていた。
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高村との再宣言
春休み最後の日、学校の図書室で、悠真と高村は向き合っていた。
「いよいよ、だな。高三」
「そうだな。でも、怖くない。今は」
高村が笑う。
「怖いままでいいんだよ。ただ、それでも前を向いて、勉強し続ける。それが、強さだと思うから」
ふと、高村が手帳を取り出し、赤い文字でこう書いて見せた。
> 「2026年2月25日 東大合格発表。全員、笑っていること。」
悠真はそれを見て、小さくうなずいた。
「必ず、な」
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進級と、新しい春
四月。いよいよ三年生へ進級。
廊下のクラス表に、悠真の名前が見つかる。西原も同じクラスだった。
新しい一年が始まる。
受験という長い旅の、ラストステージ。
ここからは“本気の一年”だ。
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