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第23話 『聖獣さまは『親』をさがす』1

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色々な事件があって、珍しく平和なある日のこと。

レンが珍しく、ジルに『スピカの工房に行きたい』とねだった。

だから、今彼らはそこに居た。



「え?レンちゃんが俺に用?」



作業用のゴーグルを上げたスピカは、工房の中で煤まみれだ。



「これは、おかしくないか」



レンが、あの凶悪な獣の牙じみた大剣アスレインを呼び出し、無遠慮に工房の石造りの床に突き立てた。



スピカが頷く。



「うん。確かに」



レンとスピカの間には何かが通じあっているようだった。



「何がおかしいんだ?」



レンが呼び出した大剣アスレインは刃こぼれひとつなく、表面もなめらかで傷1つない。



「今まで戦闘が多くて言わなかったが…これは、私の武器ではないんだ」



ジルには意味がわからなかった。

必ず戦闘にはレンは大剣アスレインを呼び出していた。



「知らない?ジル」



テキトーにゴーグルをあげたせいで前髪がぴゃんぴゃんに跳ねたスピカが説明してくれる。



「本来、幻獣はおのれの名前を冠した武器を持つんだよね。レンと名前が違う大剣アスレインはとっても使いにくいでしょ?何でそうなってるか、俺もちょーふしぎ」



レンが話し始める。



「まず、私には『親』がいない。私は僅かなアストラルー誰かが捨てたアストラルから、生まれた」

「誰かが捨てたアストラル?」

「そうだ」



レンは頷く。



「私たちは、神話級聖獣や魔獣から溢れるアストラルから生まれ、その源となった神話級の彼らを『親』と呼ぶ。だが、私は誰かに『捨てられた』アストラルから生まれたから、『親』がいない」



レンが難しい顔をする。



「それでも私には『親』がいるはずなんだ。そのアストラルを捨てた誰かが」



彼はぎらり、と光る大剣アスレインを見つめた。



「だが、それがどうなったか、誰も教えてくれない」

「つまりその武器は『アスレイン』って名前があるやつの武器なんだよな。アスレインかあ…どっかで聞いたことあるような……」



煤をかぶったゴーグルを外しながらスピカが呟く。

そして真面目な顔で、ジルにレンチを渡した。



「ジル。これで思い切り俺を殴ってくれ」

「?!」

「俺は大事なことを思い出せない時はそうしてる。お前なら、もっと強く俺を殴れる」



『鍛冶を追求する神様』は、義肢や武器だけでなく、己も徹底的に叩くようだった。

「…分かった」



ジルはレンチを構えーフルスイングしてスピカの頭に叩きつけた。

力は8割程度に抑えた。



「いってええええ!!」

「ただ苦痛に悶えているようにしか見えないんだが」



フルスイングで殴られたスピカはぶっ倒れて、頭を抱えて右に左にぐるぐる転がっている。

ーが、ある瞬間。転がるのを止めて、真顔で呟いた。



「思い出した。俺が30年前に行った、ラグナロクシティの隣の港町、クラウン・ポートの酒場にいた。サラスティ=カウス=アスレイン」



レンが息を飲む。



「アスレイン…!!」

「そこで飲んだんだけどな。寂しげな顔で、『変わった子がもしかして生まれそうなんだけど、事情があったから捨てたんだ』って。変なこと言うやつだな、って思ったよ。使えそうなものは託したけど、生きてるかなあってぼやいてた」

「……」

「ひょっとしたらその『子供』ってレンちゃんのことじゃねーの?」

「……」



レンは、大剣アスレインを睨みつけている。

ジルがその肩を叩いた。



「行ってみるか?クラウン・ポート」

「…行きたい。が、正直腸が煮えくり返っている。私がそいつが捨てたアストラルから生まれたせいで、私は不完全なのだから」

「行くなら早くがいいぞ?レンと『カウス』がかぶってるあたり、かなり怪しいだろ。当時のアスレインは20代くらいだったし。…ただ、どう見ても『人間』にしか見えなかったから、生きてるなら今はおっさん」

「クラウン・ポートなら2日あれば行けるな。ラグナロクシティがその交易路だから」

「…」

「そこは、荷積みのキャラバンの護衛がたくさんある。それで行ってみよう」





ジルは冒険者ギルドに来た。

レンはそれどころではないらしく、酒場に戻って大剣アスレインを片手に何かぶつぶついっている。

ジルはAAAランク依頼を、速攻で依頼ボードからはぎとった。



『ラグナロクシティからクラウンポートまでの道中の往復の護衛をしてください』



出発は明日の明朝、ラグナロクシティの北門が集合場所。

その紙を、依頼受付カウンターのおねーさんに提出する。



「これ、受けたいんだけど。…というか、なんでAAAランクなの」



クラウン・ポートまでは、ラグナロクシティの交易路として、依頼で定期的に魔物が討伐されているはずだった。

生息する魔物も、あまり強くない。



「普通なら、誰でも簡単な依頼なんですが、事情があって誰も来なかったんですよ。ベビーモスが最近住み着いたということもあって」



ベヒーモスはAAAからSランクの冒険者が相手にする魔物だ。

ジルなら1人でしとめられる。



「どうして。俺に回してくれればいいのに」

「ジルさん、『 至高最悪の魔術師』との戦いでかなり負傷していたじゃないですか」



ジルは腕を見せてみた。

裂傷のあとはもうなくて、古傷と化しただけだ。



「治るの早くないですか?!」

「例の件で追加報酬としてスピカにラグナ・ラグーンのチケットもらって、治湯ってやつ入ったら、傷口ふさがって、ほっといたら治った」

「だからそんなにお顔がつやつやなんですね…!」」



受付嬢は羨ましそうだ。

が、我に返って、手をあてて上品にこほん、と咳払いする。



「…それなら大丈夫そうですね。では、正式な依頼の承諾書と、その旨を依頼主に伝えておきます。ついでに役所の街道整備科から、その道中のベヒーモス及び、もしいたらですが、それに準ずる強さの魔物の退治の依頼が別にありますが、受けますか?」

「おっけーおっけー」



お役所の依頼の報酬額を見た。

お役所なだけに破格だった。

物流を絶たれるのは、ラグナロクシティとしても厳しいからだ。





依頼承諾書を持って、ジルは帰った。



「レン。依頼、正式に受けてきたぞ」

「本当か!?」

「明日の明朝出発。ベヒーモスが出るから誰も受けなかったんだと。そのくらいなら、俺しとめられるから」



アイリーンの件で懐は暖かくて、2ヶ月分の義手のメンテナンス代は絶対受け取らない!というスピカに、せめて武器の作成代は、払うつもりだった。

彼は武器も無料でいいと言ってくれたが、そこまでされると気が引けてくる。

…武器制作は、ジルのダガーとナイフと合わせると、冒険者ギルドからもらった報酬と同額払ってもいいくらいだ。



「私たちだけで行けばいいんじゃないのか?」

「……ここで暮らしていくには懐というものがあるのです」

「俺はキッチリ取るからな。ったく、スピカからのプレゼントなら払わなくていいのに、お前も律儀だなあ」



キッチリ拠点代を取るレクゼルが苦笑いした。



「だって、Sランク級の依頼だったとしても、新しい義手にラグナ・ラルーン、んで俺専用の武器の作成無料、ってありあまりすぎて逆に申し訳ないわ」



オーダーメイド武器は、注文した本人の要望にあわせて作る為、本来、かなりの高額だ。

スピカが作ってくれたのは、ジルが灼牙流を使いこなすことができる武器だった。



スピカが頑としてジルの最初の義手の料金の上乗せを譲らなかったように、ジルもこういう時は頑固だったりする。

それに、スピカの工房は特別だ。

アイリーンからぶんどった慰謝料や修復費があって、『懐には困らない』と言ってはいても、多分今回で財布にかなりダメージを受けたのは、見てとれる。



それを聞いて、レンも納得した。



「ベヒーモス退治を引き受けた上での護衛という二重の依頼だからな。スピカにいろいろ返しても、やはり懐はきっちり締めねば」



最近はレンも、ジルやレクゼルが教えたおかげで、お金のことを理解してきた。



「んじゃー、旅の準備を始めますか」



明朝。

ジルたちは、集合場所にて待機していた。

ぱかぱかと、馬の蹄のなる音がした。

霧の中から、ひとつの大型の馬車が現れる。

馬は先頭に一頭、後方に二頭。

御者はーまさかの少年だった。

ジルとレンを見て、彼は不機嫌な顔をした。

少年は御者台から飛び降りた。

深深と、こちらに頭を下げるーが、その顔はやっぱり不機嫌そうだ。



「今回は依頼を受けて下さり、ありがとうございます。疾風のジル様。私はヤタと申します。…パーティは、組んでいらっしゃらないのですか。ベヒーモスが出ると伺ったのですが」

「基本俺は可能なら戦闘が単体スタイルなの。ベヒーモスも1人でしとめられるし、冒険者ギルドが俺で十分だと判断した。それに聖獣のレンがついてる」

「あなたが、例の……」



青年はレンの顔を見て、すぐに顔をそらした。

彼の顔は、常人には直視するのすら無礼だと思わせるほどに整っている。



「私はレンで、ジルが契約した召喚獣だ。私も単体でベヒーモス程度は10頭来ても狩れるし、足は引っ張らんよ」



やだ。めっちゃ強い。とジルは思った。

確かに、レンは力こそ落ちてはいる。

それでも、その力は、ベヒーモスを遥かに上回る。



「いくらSランクでも単体はきつそうですけどね…聖獣様がついているなら、安心です」



商人は大抵、パーティで人数がある護衛を好む。

ジルは気にせずに馬車の屋根に飛び乗った。

ここからが一番、見通しが利く。

レンもついてきた。



「さっさと出してくれ」



ヤタは無理矢理納得したようだった。

御者台に乗って、慣れた手つきで馬にムチを打つ。

ぱかぱかと3頭の馬が歩き出した。



街道の道中、途中までは平和だった。

多少の魔物が出たが、全部ジルが綺麗に駆逐していく。

珍しいの毛色の狼も出たので、手早く血抜きして皮と骨と肉をはぎとって、袋に入れた。

袋は馬車の中に放り込んだ。



「Sランク冒険者様とあろうものが、こんな依頼でそんなに稼ぎたいんですか?」



解体したジルに、ヤタが問いかけてきた。

ジルは馬車の屋根の上でくつろぎながら、



「高給取りでも、いろいろ税金とか、かかんの。それに武器とかも消耗するし、手入れが欠かせない」

「そういうもんですか。だからSランクでもわびしいんですね、冒険者様は」



バカにしたような言い方に、ジルはむっとした。

だが、相手は依頼主で、依頼をうけた自分には達成する義務があるから、黙って無視する。

それに、ここで顰蹙を買うと、冒険者ギルドにも迷惑がかかる。

ヤタは上質な服を着ていた。

父親は相当儲かっている商人とみえる。



「…それで、ヤタとやら。なぜ、少年が荷運びをしている?」



ヤタは冒険者ジルを皮肉っても、さすがに聖獣様は怖いようだった。



「…父上に言われたんですよ。修行のために、商品の買い取りから運搬、護衛の手配まで全て一人でやってみろと。そんな時に運悪くベヒーモスです」



なら感謝しろ、とジルは思った。

大抵、AAAランクかSランクでしか仕留められない魔物だ。

それより低いランクでやるなら、最低限Aランクであり、パーティを組んでやっと、というところだ。



街道をたどっては森へと入っていく。

その森の途中。

ベヒーモス特有の低い唸り声が聞こえてきた。

2頭。左右からだ。

ジルは寝そべっていた体を起こす。



「左右かー。めんどくさいな、レン、この馬車の御者台に乗ってる人の護衛を頼む」



ヤタ様、なんて呼びたくなかった。



「承知した」



ジルは右の方に向かって跳ねた。

轟音をたてて木がなぎ倒される音がする。

ヤタが恐怖に体をすくめた。



「ああ、これじゃ、こ、殺される」

「……」



レンは動かない。

先程彼が大事な番を皮肉った恨みがあるので、レンは敢えて彼を励ます声をかけなかった。





500年くらい生きた大樹くらいの高さと太さを持つ白い巨体が見えた。

その白いベヒーモスを見て、ジルは目を輝かせた。



「ラッキー、でかい上にアルビノじゃん。解体したら高く売れるな」



ジルはその辺の木を壁のように蹴りながら移動する。

ここに、見ているものはいない。

森の深いところまで潜り込んだから、ヤタですら見えていない。



「闘気零式」



だから、ジルはスピカが作ってくれた武器の性能を試そうと、気軽に切り札を切った。

どくん、と心臓がはね、血流が激しくなり、筋肉が力を増す。

血液にのった『気』の密度が爆発的に上昇して、魔法を弾くレベルの壁になる。

闘気零式は、身体能力をも爆発的にあげる。

たん、とジルは地面を踏んだ。

それだけで土が抉れ、ジルの体は、一気にベヒーモスの顔の対面まで打ち上げられる。



ベヒーモスが、自ら口元に飛び込んできた獲物ジルに、噛み付こうと踏み出して口を開いた。

ずらりと並ぶ、岩すら噛み砕く鋭い牙を見て、ジルの胸が高鳴る。

ああ、自分より凶暴な相手をねじ伏せるのは、楽しい。

もはやベヒーモスは、自分以下になってしまったが、それでも魔物の中では強いから、嬲って遊んで殺すのは楽しい。

ジルは苦笑いした。



「ごめんな、もうちょっと遊んでやりたいけど、護衛の仕事があるんだ。ー反転」



タクティカルベストからナイフを取り出して飛ばす。

それらはあやまたず、ベヒーモスの両目を捉えてー



「ギャアアアア!」



ベヒーモスが、尋常ならざる悲鳴を上げた。

ベヒーモスは強大な魔力で魔術も行使するが、ジルの投げたナイフは、スピカの特別製で、その魔力の流れを逆流させる。

それはさながら血液が逆流するようで、魔力の根源に、己の魔力のナイフがぶっささるようなものだ。



ジルは低くなったベヒーモスの頭に飛び乗り、ダガーをぶっさした。赤い血が跳ねて、ジルを濡らす。興奮した。

再び唱えた。



「反転」



魔力の逆流の勢いが強くなりーそれが、ベヒーモスの魔力の貯蔵量を、ついに超えた。



「グギャアアア!!」



断末魔の咆哮と共に、ベヒーモスが木をなぎ倒しながら倒れ伏す。

それが完全に死んだのを確認したところで、同じような轟音が響いた。



「あ、もう、残り1匹仕留められちゃった?」



ジルは残念そうに笑った。





―木をなぎ倒しながら、ベヒーモスが現れる。

ジルが倒したものと違って、こちらは本来の黒色で、身体も小さい。



「う、うわあああ!!」



怯えたヤタが、馬に必死に鞭を打つ。

だが、馬の全力の速度など、ベヒーモスには劣る。



「…やれやれ」



レンはゆっくりと体を起こした。



「来い、大剣アスレイン」



併走するベヒーモスを眺めながら、大剣アスレインを呼び出す。

それを斜めに構えて、彼は跳んだ。



一瞬だった。



血を浴びることも無く、レンはまた馬車の屋根に着地した。

ベヒーモスの頭が一拍遅れてごとり、と音をたてて落ち。轟音をたててその巨体が倒れ伏した。

少し先で、向こうでも轟音が響いていた。



「馬車を止めろ。私の主は、『やくしょ』からベヒーモス退治の依頼も受けているから、証拠としてその一部を持ち帰る必要がある」



ヤタは恐怖でガタガタ震えながらも、馬車を止める。

御者台から体をよじって、さっきまで恐れていた聖獣を睨みつけて、口から唾を飛ばしながらわめいた。



「そんな、一撃で仕留められるなら早くしてくださいよ!」



レンはどこ吹く風で答える。



「私が主に命じられたのはお前の護衛だよ。危なくなったから助けた。それだけだ」



レンは馬車から飛び降りて、ジルに習った解体作業を始める。

片手でベヒーモスの巨体を逆さまに持ち上げた。

びちゃびちゃと血がながれおちる。首を飛ばしたおかげで、血抜きは楽だ。

それを、ジルに貰ったナイフで皮から肉に至るまで丁寧に削ぎ落としていく。



「っ、あまり時間をかけないでくださいよ!また魔物が来たら」

「ベヒーモスを恐れて、周囲の魔物は逃げ出した。危険はない。私はお前の護衛を命じられているから、もし来るようなら仕留めてやる」



ベヒーモスは全身が高く売れる。

皮は防具、骨は魔術師の杖の原料、肉とモツは高級食品。

その巨体の全てを解体して小分けしてまとめたところで、ジルも大袋を手に笑顔で帰ってきた。



「いやー。アルビノででかいヤツとかまじ幸運。狩り甲斐があるわー」

「アルビノのベヒーモス?」



ヤタがジルの方を振り返って、微笑んだ。



「ベヒーモスの排除、があなたが受けた依頼ですよね、ジルさん。だったら聖獣様が仕留めたものをギルドに提出するだけで良いはずです。実際に街道で僕に襲ってきたのは1匹だけ。あなたは僕を離れて仕事を放棄したも同然です。ギルドに黙ってて欲しかったら、そのアルビノ、僕にください」

「は?」



突然の申し出に、ジルは目をぱちくりした。

その後、理解して、ジルは笑った。



「うまい上手い、さすが商人サマらしく理由をつけて俺につけこんできましたねえ。でもね、俺がお役所から受けた依頼は、『ベヒーモス及びそれに準ずる強さの魔物の排除』。このアルビノも排除対象です。俺はちゃんと召喚獣にヤタ様を『護衛しろ』と命じて、召喚獣はそれをきちんと守りました」

「でも、召喚獣は従属で、あなた自身が仕事をすべきでは」



ジルは真顔になる。



「召喚士だって戦闘は従属に任せて自分は何もしないとかザラだわ。それと同じこと。ちなみにアルビノはこっちにに向かっていて襲う可能性があったので、俺はその可能性を考慮し、雇い主を守るために迅速に排除しました。ギルドに同じ言い分をいってみなよ。笑われるわ」

「くっ」



ヤタの顔が、悔しさに歪んだ。

だが、すぐに口角を皮肉下にあげる。



「…いいですよ。僕の父親はね、ラグナロクシティと海を隔てた大陸の商品を扱うヤタル=ナブディスです。ギルドの報告なんて、いくらでも圧力で書き換えられますからね。『冒険者が依頼をサボり、ギリギリでやっと動き、こちらは九死に一生を得た。あのSランク冒険者は信頼できない』と伝えます。ラグナロクシティとの取引は激減して、あなたの街が困る。全部あなたのせいになるんですよ、ジルさん。それがアルビノを僕に渡すだけで助かるんでよ」

「いいえ、渡しません。これはお役所に見せる証拠です。やれるならやってみてください、ヤタ様」



ジルはとられると困るので、解体したベヒーモスの袋を抱えて馬車の屋根に跳んだ。

レンも小さな袋をいくつか屋根に載せている。



「いやー、いい獲物だったわ。試せたし」

「どうだった?」

「最高です」



ヤタには分からないように、灼牙流の話をする。

スピカが作ってくれた灼牙流に適応した武器の威力は抜群だった。

さすが『 鍛治を追求し続ける神』の打った武器だ。



「ちっ」



2人の会話を聞きながら、ヤタは舌打ちした。

絶対、この冒険者を窮地に追い込んでやろうと思った。

ぱかぱかと、馬車は走っていく。

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