ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃

文字の大きさ
14 / 24
社会人 編

好きな人の匂いは3km先からでもわかるのがオオカミ獣人

しおりを挟む



 なんとかアパートの自室に帰り着き、震える指で鍵を閉めた。

 カタカタ震える身体。
 ドキドキ高鳴る心。
 相反する反応に、どうして良いのかわからない。

 玄関先で、蹲るように座り込んでしまった。

 はぁ……はぁ……。

 息が、荒くなる。
 これは、走っただけは、恐らく無い。
 数年ぶりに感じる、発情期。
 身体が火照り、どうしようもなくなって泣きたくなる、あの感覚。

 確信、してしまう。
 あの匂いが、あの人物が……狼谷、だという事に。

 あの出来事以来、ハッキリとは感じてこなかった発情期。やはり、首筋をアルファに嚙まれる、というのはそれぐらい強制的なものだった。自分で治めるか、薬に頼るだけで良かったのに。

 でも、思い出してしまった。
 熱が、収まらない。
 膝に顔を埋める。
 本当に、泣けてくる。
 オレは、今でも、あいつが……。

 ドンドンドン!!

 ふいに、乱暴にドアが叩かれ、ビクッとした。
 今は、それどころではない、のだが。

 ドンドン!!

 しばらく無視したのだが、かまわず叩かれ続ける。
 また、隣人の苦情だろうか。ドアを閉める音がうるさいとか、神経質すぎるよ、ネズミ獣人……。
 仕方ない。

 はぁ、と一つ溜息を吐いて、なるべくヒートのフェロモンがもれないように服のボタンを閉め、はいと、ガチャリとドアを開けた。

 そこには、

「やっと! 見つけた!!」

「えっ」




 狼谷、だった。

 まさかと思った。
 これは夢かとも思った。
 だけど、目の前の必死な顔をして、顔に汗をかいて、扉をガッと掴んで立ちふさがるのは、まさしく大人のアルファになった、狼谷オオカミだった。

 前と同じように、喉がヒュッと鳴った。
 どっと、オレの背中から汗が出てきた。冷や汗ではない、涎が口の中であふれ、フェロモンが出ているのを感じる。濃い、知った匂いも。

「せ、せんぱい」
「っつ、帰ってくれ!!」

 思いっきりドアを引くが、それは阻止された。ガッと、足を差し込まれ、扉を反対方向に引っ張られる。

「センパイ! 何すんだよ!」
「なっ、何するもなにも! お、お前、なんでここに居るんだよ!」

 オレの家がわかるはず無い。だって、あの時、確かにまいたはずだ。あれだけの人だかりができていたなら、オレの足ならかなり離したと思う。ウサギは逃げ足だけは早いのだ。オオカミだって追いつけない。
 だから、本当に驚いたのだ。ここに、今、狼谷が居る、という事実に。
 ムッと、狼谷は眉間に皺を寄せた。……あっ、これ、あの時の表情…。

「オオカミ舐めてんの。センパイの匂いなら、すぐわかる」
「はぁ? なんで、オレを……」
「とにかくっ、入れてくれ」
「ダメだ!」
「なんで!」

 一生懸命扉を閉めようとするのだが、足も入れられ、力比べでかなうはずもなく。

 ついに押し問答の末、狼谷に家の中に入られてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。

ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日” ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、 ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった 一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。 結局俺が選んだのは、 “いいね!あそぼーよ”   もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと 後から思うのだった。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

処理中です...