ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃

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社会人 編

好きな人の匂いは3km先からでもわかるのがオオカミ獣人




 なんとかアパートの自室に帰り着き、震える指で鍵を閉めた。

 カタカタ震える身体。
 ドキドキ高鳴る心。
 相反する反応に、どうして良いのかわからない。

 玄関先で、蹲るように座り込んでしまった。

 はぁ……はぁ……。

 息が、荒くなる。
 これは、走っただけは、恐らく無い。
 数年ぶりに感じる、発情期。
 身体が火照り、どうしようもなくなって泣きたくなる、あの感覚。

 確信、してしまう。
 あの匂いが、あの人物が……狼谷、だという事に。

 あの出来事以来、ハッキリとは感じてこなかった発情期。やはり、首筋をアルファに嚙まれる、というのはそれぐらい強制的なものだった。自分で治めるか、薬に頼るだけで良かったのに。

 でも、思い出してしまった。
 熱が、収まらない。
 膝に顔を埋める。
 本当に、泣けてくる。
 オレは、今でも、あいつが……。

 ドンドンドン!!

 ふいに、乱暴にドアが叩かれ、ビクッとした。
 今は、それどころではない、のだが。

 ドンドン!!

 しばらく無視したのだが、かまわず叩かれ続ける。
 また、隣人の苦情だろうか。ドアを閉める音がうるさいとか、神経質すぎるよ、ネズミ獣人……。
 仕方ない。

 はぁ、と一つ溜息を吐いて、なるべくヒートのフェロモンがもれないように服のボタンを閉め、はいと、ガチャリとドアを開けた。

 そこには、

「やっと! 見つけた!!」

「えっ」




 狼谷、だった。

 まさかと思った。
 これは夢かとも思った。
 だけど、目の前の必死な顔をして、顔に汗をかいて、扉をガッと掴んで立ちふさがるのは、まさしく大人のアルファになった、狼谷オオカミだった。

 前と同じように、喉がヒュッと鳴った。
 どっと、オレの背中から汗が出てきた。冷や汗ではない、涎が口の中であふれ、フェロモンが出ているのを感じる。濃い、知った匂いも。

「せ、せんぱい」
「っつ、帰ってくれ!!」

 思いっきりドアを引くが、それは阻止された。ガッと、足を差し込まれ、扉を反対方向に引っ張られる。

「センパイ! 何すんだよ!」
「なっ、何するもなにも! お、お前、なんでここに居るんだよ!」

 オレの家がわかるはず無い。だって、あの時、確かにまいたはずだ。あれだけの人だかりができていたなら、オレの足ならかなり離したと思う。ウサギは逃げ足だけは早いのだ。オオカミだって追いつけない。
 だから、本当に驚いたのだ。ここに、今、狼谷が居る、という事実に。
 ムッと、狼谷は眉間に皺を寄せた。……あっ、これ、あの時の表情…。

「オオカミ舐めてんの。センパイの匂いなら、すぐわかる」
「はぁ? なんで、オレを……」
「とにかくっ、入れてくれ」
「ダメだ!」
「なんで!」

 一生懸命扉を閉めようとするのだが、足も入れられ、力比べでかなうはずもなく。

 ついに押し問答の末、狼谷に家の中に入られてしまったのだった。
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