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社会人 編
謝ったら、抱きしめられると思わなかった
無理やりオレの家に入った狼谷は、ずっとむすっとして座っていたかと思ったら、オレの部屋をキョロキョロ見回しだした。
とりあえず、家にあったペットボトルのお茶を出してやり、自分の分の蓋を開ける。
ジッとペットボトルを見たかと思ったら、狼谷は、オレを見た。
眉に力を入れて、ギロっと睨むように、オレを。
怒っているのだろうか……当たり前か。
あんな事させておいて、オレは、こいつの前から逃げたんだから。
でも、大人になった今、それを無言で責められるのは、違うと思う。
不満があるなら、口に出して欲しい。そんな意味を込めて、正直大人のオオカミににらまれるのは怖かったが、恐る恐る聞いてみる。
「な、なんなんだよ」
狼谷は、オレと目が合うと、フイっと目を逸らした。
「オレも、わかんねぇ」
「はっ?」
手を、ぎゅっと握りこぶしに握る狼谷の声は、震えていた。
「だけど、センパイの匂いがして、誰かと居るのを見た瞬間、追いかけなきゃいけないって、ここで逃がしたら、絶対ダメだって、何でか思って……」
言葉尻が、だんだん自身無さげにすぼんでいく。
本当に、自分でも何故だかわかっていない様子だった。
オレは首をかしげるしかなかったのだが、ハッとある仮定にいきついた。やっぱり、そうなんだな。
「お前、やっぱりまだ怒ってるんだな……」
だから、一言いってやろうと、オレを追いかけてきたんだ。何年も、嗅がずに済んだ、ウサギの匂いを追ってまで。
オレも、ちゃんと謝らなきゃいけない。
でも、やっぱり苦しくて、狼谷の顔が見れない。頭を下げるような形にして、声を絞り出した。
「悪かったよ、大学の頃。お前を騙して、側に居たこと。ウサギ嫌いだって、知ってたのに」
「ちがう!」
オレの言葉に、カッとしたような声が返ってきた。思わず顔を上げると、狼谷はしまったという顔をしていた。そして、顔をゆがめた。
オレは、なおも謝罪を口にする事しか、できなかった。許して欲しい。でも、許さなくても、いい。
「……あれは、事故だった。でもお前は仕方なくても、オレを助けてくれた。ウサギである、オレを。ごめんな、しんどかったよな」
狼谷は、何かを言いたそうだったが、言葉が出ないようだった。
「あの時のこと、謝れっていうなら、いくらでも謝るから。だから」
一旦言葉を区切り、オレは椅子から立ち上がる。そして、上着を手に取った。狼谷が、なんだという風にオレを見ていた。
「はやく出て行ってくれないか。じゃなきゃ……」
ああ。オレ自身でもわかる。この部屋に充満する、オメガの匂い。オレを噛んだアルファを、誘う、フェロモン。最悪だ。
「また間違いが、おこる」
狼谷が出て行かないなら、オレが出るしかない。この状況はまずいが、一旦、どこか公共の施設に行くか、と玄関に向かった次の瞬間。
後ろから、ガタッと何かが倒れた音がした。
「いやだ!!」
「わっ」
なんだと振り返ると、何かを認識する間もなく、目の前が真っ暗になった。いや、正確には真っ暗ではない。硬い、服の感触と、ぬくもり。
これは。
「行かないでセンパイっ」
まさか、狼谷に、抱きしめられている?
あっという間に背中まで腕がまわり、オレは動きを封じられた。すごく近い所で香る狼谷の匂いは、当時と一緒で。
一気に、下半身に熱が集まるのを感じた。
「お、お前! やめろ! はやく離れろ!! ばかやろう!」
一生懸命もがき、押し返そうとするが、びくともしない身体。力じゃ、かなわない。
大学の頃からさらに大きくなっているようだ。
オレの頭一つ分ぐらいの身長差だったのに、今やオレは狼谷の胸あたりに頭がきているらしかった。
動いているからか、お互いの匂いが、濃くなっていくのを感じる。
「っ、ほんとに、やめろ。離れて、くれよ……」
泣きそうになってくる。
なんで、あの時の過ちを繰り返そうとするのかわからない。
「いっ、いやだ」
苦しそうに吐き出される狼谷の言葉。
この腕を離せば終わるのに。
何故。
とりあえず、家にあったペットボトルのお茶を出してやり、自分の分の蓋を開ける。
ジッとペットボトルを見たかと思ったら、狼谷は、オレを見た。
眉に力を入れて、ギロっと睨むように、オレを。
怒っているのだろうか……当たり前か。
あんな事させておいて、オレは、こいつの前から逃げたんだから。
でも、大人になった今、それを無言で責められるのは、違うと思う。
不満があるなら、口に出して欲しい。そんな意味を込めて、正直大人のオオカミににらまれるのは怖かったが、恐る恐る聞いてみる。
「な、なんなんだよ」
狼谷は、オレと目が合うと、フイっと目を逸らした。
「オレも、わかんねぇ」
「はっ?」
手を、ぎゅっと握りこぶしに握る狼谷の声は、震えていた。
「だけど、センパイの匂いがして、誰かと居るのを見た瞬間、追いかけなきゃいけないって、ここで逃がしたら、絶対ダメだって、何でか思って……」
言葉尻が、だんだん自身無さげにすぼんでいく。
本当に、自分でも何故だかわかっていない様子だった。
オレは首をかしげるしかなかったのだが、ハッとある仮定にいきついた。やっぱり、そうなんだな。
「お前、やっぱりまだ怒ってるんだな……」
だから、一言いってやろうと、オレを追いかけてきたんだ。何年も、嗅がずに済んだ、ウサギの匂いを追ってまで。
オレも、ちゃんと謝らなきゃいけない。
でも、やっぱり苦しくて、狼谷の顔が見れない。頭を下げるような形にして、声を絞り出した。
「悪かったよ、大学の頃。お前を騙して、側に居たこと。ウサギ嫌いだって、知ってたのに」
「ちがう!」
オレの言葉に、カッとしたような声が返ってきた。思わず顔を上げると、狼谷はしまったという顔をしていた。そして、顔をゆがめた。
オレは、なおも謝罪を口にする事しか、できなかった。許して欲しい。でも、許さなくても、いい。
「……あれは、事故だった。でもお前は仕方なくても、オレを助けてくれた。ウサギである、オレを。ごめんな、しんどかったよな」
狼谷は、何かを言いたそうだったが、言葉が出ないようだった。
「あの時のこと、謝れっていうなら、いくらでも謝るから。だから」
一旦言葉を区切り、オレは椅子から立ち上がる。そして、上着を手に取った。狼谷が、なんだという風にオレを見ていた。
「はやく出て行ってくれないか。じゃなきゃ……」
ああ。オレ自身でもわかる。この部屋に充満する、オメガの匂い。オレを噛んだアルファを、誘う、フェロモン。最悪だ。
「また間違いが、おこる」
狼谷が出て行かないなら、オレが出るしかない。この状況はまずいが、一旦、どこか公共の施設に行くか、と玄関に向かった次の瞬間。
後ろから、ガタッと何かが倒れた音がした。
「いやだ!!」
「わっ」
なんだと振り返ると、何かを認識する間もなく、目の前が真っ暗になった。いや、正確には真っ暗ではない。硬い、服の感触と、ぬくもり。
これは。
「行かないでセンパイっ」
まさか、狼谷に、抱きしめられている?
あっという間に背中まで腕がまわり、オレは動きを封じられた。すごく近い所で香る狼谷の匂いは、当時と一緒で。
一気に、下半身に熱が集まるのを感じた。
「お、お前! やめろ! はやく離れろ!! ばかやろう!」
一生懸命もがき、押し返そうとするが、びくともしない身体。力じゃ、かなわない。
大学の頃からさらに大きくなっているようだ。
オレの頭一つ分ぐらいの身長差だったのに、今やオレは狼谷の胸あたりに頭がきているらしかった。
動いているからか、お互いの匂いが、濃くなっていくのを感じる。
「っ、ほんとに、やめろ。離れて、くれよ……」
泣きそうになってくる。
なんで、あの時の過ちを繰り返そうとするのかわからない。
「いっ、いやだ」
苦しそうに吐き出される狼谷の言葉。
この腕を離せば終わるのに。
何故。
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