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短編 ホワイトクリスマス
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―結婚後、大和就職して2年目、司1年目の12月頃の話―
「大和、今月のクリスマスは休日だけど、休めそう?」
12月の始め。
カレンダーを見ながら司は、後ろでモソモソ遅い晩御飯を食べている大和を振り返りながら聞いた。
大和は、一瞬わけがわからないような顔をし、ああ、と納得いった表情になった。
「もう、12月か。1年って早いよな……クリスマスって、何日だっけ。あ、25日か。明日会社で確認してみる」
そしてまた、目の前の料理を口に運び始めた。その様子に、司が眉を顰める。
「大和……秋口頃から言おうと思ってたんだけど、ちゃんと休まないと、身体壊すぞ。明らかに働き方おかしいって。最近はもう、週一も休んでないだろ」
苦言というには、心配の成分がふんだんに含まれたその言葉に、大和ははぁあ~と重い溜息を返した。
「仕方ないだろ。今が、リリースを延期するかどうかの瀬戸際なんだよ。みんな、オレより頑張ってるんだ。新人のオレが休めるわけないだろ」
明らかにブラックな働き方だが、大和が就職したのはゲーム業界では大手の筈だ。つまり、ゲーム業界全体が、こんな働き方なのだろうか。業界の事がわからない司は、少しだけ痩せて目の下にクマができた大和の向かいの椅子に座った。
「大和、もう一人の身体じゃないんだ、大事にしてくれよ」
真剣に真っすぐ見つめながら司が言と、大和は思わずといった風にブフッと口の中にあったものを吹き出しそうになった。慌てて口を押えて、呆れたように口の中のものを飲み込んだ。
「おまっ、何言ってんの。ないからっ、一人だよっ」
「え~、でも大和、最近ヒート来てないじゃん」
「それはっ、前にも説明しただろ。今は大事な時期だから、先生と相談してちょっと強い抑制剤使って、遅らせてるんだって。ひと段落ついたら、その……ちゃんと、来るよ」
最後は、ちょっとだけ恥ずかしそうに頬を染め、大和は俯いた。
可愛いなあ、と思うと同時に、司には言いようのない焦燥感が湧き上がってきたが、胸の奥底に押し込めた。
コミュニケーションとしての触れ合いはたまにするが、発情期のような飢えが満たされるような快楽ではない。それは普段性欲をコントロールできるアルファにとって魅力的で、司はここしばらくお預けをくらっているようなものだった。もちろん、大和の為だから我慢しているし我慢している事を言う事もないが、今はただ純粋に、大和の身体が心配だった。
そんな司の気持ちを、なんとなく察しているが、大和にとって今は夢みたいな時間なので止めるつめりはなかった。
ゲームを作る事は、幼い頃からの夢だった。一度は、体質のせいで諦めなければならないと思った、だけど、周りに恵まれいま夢の職業につけている。応援してくれている人の為にも、ここで投げ出すわけにはいけない。そう、強く決意していた。……たとえその夢が、自分の身体を蝕んでいるとしても。
「ひと段落って、いつになったらくるんだよ。大和、ずっとそう言ってるけど、全然来ないじゃん」
「それは」
大和は司から目線を逸らした。渦中の大和が、ひと段落がいつ来るのか、一番わかっていなかった。
二年目という事で、雑用ばかりやらされていた一年目とは違い、ちゃんと仕事を任されるようになったのだが、それはエラーとバグとの闘いの日々で、思うように進まない進捗に焦っていた。
司には言っていないが、職場でも先輩や上司からもう少し休め、と言われている。それを蹴って残業や休日出勤しているのは、他でも無い大和自身だったのだ。
ただでさえ、過労と少ない睡眠時間にイライラしがちな大和は、残りのご飯をかき込み、会話は終わりだと言わんばかりにご馳走様、と食器を流しに持っていき洗い出した。
こうなっては、聞く耳を持たないだろう。喧嘩をしたいわけでない。
司は、悲しそうな表情で大和の後ろ姿を見た。大和は食器を洗い終わると、振り返りもせずに、風呂場に向かって行った。
そして、それからなんとなくお互い気まずいまま、クリスマスイブを迎えた。
イブは平日なので、今日も大和は遅いのだろう。
そう思い、司は作っていたローストチキンやデパ地下で買った総菜などにラップをかけて、ダイニングテーブルの大和の席の前に並べた。
クリスマスのプレゼントももちろん準備していた。あの調子の大和がクリスマスを覚えているとは思えないが、せめて自分だけでもあげたいと用意した物だ。
今は少し気まずいだけだ。
大和を愛しているし、どんな大和でも受け入れるつもりだ。
司も、祖父の会社で後継ぎのアルファとしてきつく扱かれているが、それも仕方ない事必要な事だと理解しているので、文句も言わず仕事や教育を受け入れて頑張っている。だが自分の要領の良さは知っていたので、こうやって日々の家事だってできていた。
でも大和は。
良い意味でも悪い意味でも、まっすぐな性格だ。手を抜くなんて考えないだろう。それが大和の魅力であり愛おしい所であり、怖い所だ。自分の事を軽視する気がある。
本当は、仕事を止めて、家の中に居て欲しい。家事も何もかも全て自分がするから、此処にただ居て、オレを出迎えて欲しい。
そんな事言えないのはわかっている。
でもふとした瞬間、たとえばそう、大和が泣いて帰って来た日や、徹夜で帰ってこなかった日に、むくりと頭をもたげる想いがある。隠す事に難は無いが、隠さないほうが良いのかもしれないと、司も日々悩んでいた。
大和の事を思い、大和が身体を壊すまで見守るのか。
大和の想いを無視し、大和を囲うのか。
生粋のアルファなら、間違いなく後者を選ぶだろう。そしてきた種族だ。
だけど、俺は、違う。
そう司は自分に言い聞かせていた。大和の事が、アルファやオメガが関係無い時から好きだったから、大和の意思を第一に尊重するんだ、と決めている。
司が一人、夜の葛藤をしていると、玄関のカギがガチャリと開く音がした。
大和が帰ってきたのだ。
ハッと時計を見ると、日付が変わるまでまだだいぶ時間があった。最近にしては珍しく早い時間だ。
急いで玄関まで出迎えに行く。
「おかえり、大和。早かったね。外寒かっただろ、早く、中に」
いつも通り出迎えると、大和は、靴も脱がず突っ立って俯いていた。何事かと、司が大和の顔を覗き込むと、何故か顔が赤かった。
大和は、お酒を呑むと顔が赤くなるタイプだ。息も少し、酒臭い気がする。
まさか、と司が口にするより早く、
「あっ、あのさっ。いや……えっと、ただいま」
「おかえり?」
大和がしどろもどろに口を開いた。何かを言いたげだが、躊躇ってもいるようだ。
わけがわからないが、司はとりあえず大和のコートを脱がせ、鞄を取り、中に入れた。
大和は、なすがままだ。だが、ずっと俯いている。
いつもの席に座った大和の目の前に、暖かいコーヒーを置く。大和は、ありがとと一瞬顔を上げたが、また俯いた。耳まで真っ赤だ。
このクリスマスイブの日に、酒を呑んできたのだ、この家に帰る時間を削ってまで。めらっと嫉妬の炎が湧き上がったが、あくまで普通に司は大和に話しかけた。
「どしたの、大和。さっきから俯いてるけど、具合悪いのか? 飯は良いから、今日はもうベッドに……」
「いやっ、あのっ」
さっきから大和は単語の否定ばかりするが、何が言いたいのかさっぱりわからない。疲れている所に酒が入っているから、思考がまとまらないのだろうか?
仕方なく司は、自分にも淹れたコーヒーを啜る。
少しだけ、溜息が漏れた。
自分には言い難い事があることや、お酒を飲んで帰ってきたこと、色々と司も感情が渦巻いての事だった。
だが、その溜息に大和は大げさにビクッとした。
思わずといった風に上げた顔、その瞳にはなぜか水が溜まっていた。
それに、司も驚いた。
「どうしたの、大和。さっきから変だけど……オレに、言えない事?」
自分で言っていて、胸がしめつけられる。大和は、目に水を浮かべたまま、焦ったように否定した。
「ちがっ、うんだ。えっと、その、あの……司、オレの事、呆れた?」
そして出てきた言葉は、酷く弱気なものだった。わけがわからず、司は首を傾げた。
「呆れ……はちょっとしたかもしれないけど、それだけ、大和が仕事をやりたかったって事だろ? だから別に、オレは」
「ごめん司!」
思った事を全て口にするより先に、大和がガバッと頭を下げた。
驚いて、言葉が出ない司。
そんな司を半ば無視するような形で、大和が言葉を張り上げる。
「オレ、お前に対して酷い事ばっかりしてるよなっ。オレの事考えて言ってくれてるのに聞かなかったり、ご飯や家事全部してくれてるのに、当たり前になって感謝も忘れたり……今日だって、帰るまでクリスマスイブだって事や、クリスマス休めるか聞いてきた事すら、忘れてた。本当に、ごめん! オレ、ダメな奴だから、お前に愛想つかされるかもしれないって、思ったら、みんな早く帰してくれたのに、帰ってくる勇気が出なくて、こんな時間に……」
最後の方は、もうぐずぐずと鼻を鳴らしながら独り言のように呟いていたので、ハッキリとは聞き取れなかった。
大和は頭を下げた姿勢のまま、額をテーブルにつけて、ぐずぐずと泣き始めた。
大和の夢を知ってた。
ずっと憧れていた業界だというのも知ってた。それを応援したいと思ったのは、ほかならぬ司自身だ。
だから、大和が不安に思う事なんて、無いのに。
司も、どう言っていいのかわからず、大和、と静かに呼びかけて、ひっくひっくと揺れている背中を優しくさする事しかできなかった。
大和は未だに、ぐずぐずと何やら自分を卑下する言葉を言っているようだった。
背中を優しく撫でながら、情緒不安定気味な番に、司は眉を寄せた。
こんな庇護欲をそそる姿を見てしまったら、本当に囲い込んで、一歩も外に出したくなる。
だが、その欲望はグッと堪えて、司は口を開いた。
「大和。大和は凄いよ。夢を諦めずに叶えたし、その夢をずっと実現させ続ける為に頑張ってる。そんな大和を、嫌いになるわけないだろ。なんたってオレら、運命の番だぜ。離れたり嫌ったりするなんて、ありえない。オレが、どれだけ大和の事愛してるか知ってたら、そんな言葉は出てこないハズだけど」
最後は、少し茶化すように言った。それで、大和のグズグズもちょっとだけ治まったようだった。
ゆっくり顔を上げた大和の顔は、涙と鼻水でグチャグチャだったが、それでも司にとっては何よりも愛おしかった。当たり前だ。
苦笑する大和の顔を、拭ってやる。
「こんなオレで、良いの?」
「当たり前だろ。大和以外に、誰が居るんだよ。お前がいなくなったら、オレは死ぬぜ」
真顔で当たり前の事を言うと、それも茶化していると思ったのか、さっきより明るい表情で大和が笑った。冗談だと思われた事は心外だが、大和が笑うならそれでもいいかと思った、
「司、お前って本当に良い奴だよな」
「大和限定だけどね。で、どうする? 今日は、もう寝る?」
司としては、お酒も入っているし疲れているだろうから眠るか、という意味で聞いたのだが、思考が緩んでいる大和は、別の意味ととったようだった。
「……えっち」
「えっ?」
恥ずかしそうに頬をさらに染める大和に、司は一瞬本気で何を言っているのかわからなかった。が、すぐに察した。今日は、クリスマスイブ。自分達は新婚だが、性の七時間としてカップルたちが楽しみに待っている時間だ、という事を。
「大和の方がえっちじゃん。オレは、純粋に寝るかって聞いたんだけど」
くすりと笑うと、大和はハッとした顔をして、恥ずかしそうに目を逸らした。
「じゃっ、じゃあ。寝る! おやすみ!」
バッと立ち上がった大和の手をギュッと掴む。
その強い力と、体温に、大和はハッと司を見下ろした。その目は、先ほどまでの心配や慈しみを残しているが、ギラギラと欲望に光っていた。
久しぶりのそういう雰囲気に、大和は、少しだけ戸惑いながらも、身をゆだねる事にした。
「あっ、あ、司、司。もっと、激しくしてっ」
キングサイズのベッドの上で、ゆっさゆっさとゆすぶられながら、うわ言のように大和が言う。その大和の上で腰を動かしている司は、落ちて来た前髪をかき上げ、意地悪に笑う。
「だぁ~め。大和、疲れてるだろ。激しくしたら、明日に響くよ。だから今日は、ゆっくりするよ」
「でもっ、奥、奥がぁ、あっ、さみし」
酒で思考が蕩けている大和は、破壊的に可愛かった。だけど、自分のせいで大和に負担をかけるわけにはいかない。今は発情期でなく、これはコミュニケーションの一つだ。自分に言い聞かせ、司は大和の頬を撫でた。すりっと擦り寄って来る大和が本当に愛おしい。
「じゃあ、発情期が来たら、思う存分奥を突いて、抉って、気持ち良くしてやるよ。だから、今日は我慢な。だって、ひと段落ついたら来るんだろ、発情期」
すこしだけ意地悪を言うと、大和は眉を下げて、甘えるように、
「だってぇ、だって、仕事、やりたいんだもん。頑張って、一人前って、認めて欲しいんだよ、っあ、ああ、いいっ、そこ」
そう、嬌声を上げた。
思考が蕩けても、快楽を拾っていても、揺るがないその答えに、司は苦笑する。
手を伸ばし、大和の立ち上がったモノをやわく掴んだ。いつもは、アナだけでイかせる事に心血を注ぐが、今日はそうも言ってられない。速やかにイかせる為に前にも刺激を与える。すると、大和は声を上げてあっけなくイった。
そして、安らかな寝息が聞こえ始めた。
気持ち良くイったのと、疲労と、精神的に張りつめていたのが解けたのだろう。
司はズルリと大和の中から自身を取り出し、数回自分で擦ってティッシュの中に欲望を吐き出した。
ふぅと一息吐き、大和の身体を清めて服をしっかり着せて、自分も着替えた後大和の横に潜り込んだ。
ここ最近で、一番安らかな大和の寝顔だった。
それこそが、クリスマスプレゼントだろう。
司は、大和に甘い自分に苦笑しながら、枕元に自分が用意したプレゼントの包みを置いた。最高級のカシミヤのマフラーだ。これが少しでも大和を狙う者の牽制になれば良い、との考えからだった。
ふと時計を見ると、日付が変わっていた。
「お休み、大和。良い夢を」
額にキスを落とし、そっと大和を抱きしめて、司も眠りについた。
外では、チラチラと雪が降りだしていた。
ホワイトクリスマスが、色んな感情や問題を、今だけは白く染め上げて隠していくようだった。
おわり。
おまけ――次の日
「つ、司、これっ」
「大和、メリークリスマス。オレからのプレゼント、気に入ってくれた? あと、昨日ケーキ食べられなかっただろ、今日食べれそう?」
2、3個答えないといけない司からの言葉に、大和は一瞬フリーズしたが、ハッとしたようにキッチンにいる司にトトトと小走りで近寄った。
そして、右手に包みを持ったまま、司に抱き着いた。
「めっ、メリークリスマス。プレゼントはオレだよ……なんちゃって」
自分が言ったのに、恥ずかしそうに司の服に顔を埋める大和に、司は思わず笑ってしまった。
「ああ、そうだな。昨日、プレゼント貰ったから、これであいこだな」
それを聞いた大和は、ぎゅーっと司を抱き締める腕に力を込めた。
「……イケメンすぎて、ムカつくまである」
「そうか? 大和限定だけど」
「そういう所だよっ」
苦笑して顔を上げた大和の唇に、司は不意打ちのようにキスを落とす。大和は一瞬ビックリしたような顔をしたが、そのまま大人しくキスを受け入れた。
キスも、セックスも、久方ぶりのように感じた。この行為が、どれほど心を満たしてくれるのか、久しぶりに確認できた気が大和はしていた。そして、それを我慢させているのが、自分だという事も。
「今日は、ゆっくりできるのか?」
唇を離し、司が何気なく聞く。大和は、目線を逸らした。
「えっと、午後からちょっと会社行って、調整したい事が……」
「わかった。なるべく早く帰ってきてくれると嬉しい」
いつも通りの会話だ。だが大和は、昨日の酒に酔って言った事も言われた事も、全てばっちり覚えているタイプだったので、またぎゅっと司を抱き締めた。
「努力する。……ひと段落も、なるべく早く来るように、がんばる」
「ほどほどにな。オレは、大和の身体が一番大事だから。大和も、大事にしてくれ」
優しくて暖かい腕が、大和にもまわってきた。だけどなぜか、その暖かさに大和は泣きたくなった。
うん、と頷く事しかできずに、大和はただ、司を抱きしめていた。
本当に終わり
「大和、今月のクリスマスは休日だけど、休めそう?」
12月の始め。
カレンダーを見ながら司は、後ろでモソモソ遅い晩御飯を食べている大和を振り返りながら聞いた。
大和は、一瞬わけがわからないような顔をし、ああ、と納得いった表情になった。
「もう、12月か。1年って早いよな……クリスマスって、何日だっけ。あ、25日か。明日会社で確認してみる」
そしてまた、目の前の料理を口に運び始めた。その様子に、司が眉を顰める。
「大和……秋口頃から言おうと思ってたんだけど、ちゃんと休まないと、身体壊すぞ。明らかに働き方おかしいって。最近はもう、週一も休んでないだろ」
苦言というには、心配の成分がふんだんに含まれたその言葉に、大和ははぁあ~と重い溜息を返した。
「仕方ないだろ。今が、リリースを延期するかどうかの瀬戸際なんだよ。みんな、オレより頑張ってるんだ。新人のオレが休めるわけないだろ」
明らかにブラックな働き方だが、大和が就職したのはゲーム業界では大手の筈だ。つまり、ゲーム業界全体が、こんな働き方なのだろうか。業界の事がわからない司は、少しだけ痩せて目の下にクマができた大和の向かいの椅子に座った。
「大和、もう一人の身体じゃないんだ、大事にしてくれよ」
真剣に真っすぐ見つめながら司が言と、大和は思わずといった風にブフッと口の中にあったものを吹き出しそうになった。慌てて口を押えて、呆れたように口の中のものを飲み込んだ。
「おまっ、何言ってんの。ないからっ、一人だよっ」
「え~、でも大和、最近ヒート来てないじゃん」
「それはっ、前にも説明しただろ。今は大事な時期だから、先生と相談してちょっと強い抑制剤使って、遅らせてるんだって。ひと段落ついたら、その……ちゃんと、来るよ」
最後は、ちょっとだけ恥ずかしそうに頬を染め、大和は俯いた。
可愛いなあ、と思うと同時に、司には言いようのない焦燥感が湧き上がってきたが、胸の奥底に押し込めた。
コミュニケーションとしての触れ合いはたまにするが、発情期のような飢えが満たされるような快楽ではない。それは普段性欲をコントロールできるアルファにとって魅力的で、司はここしばらくお預けをくらっているようなものだった。もちろん、大和の為だから我慢しているし我慢している事を言う事もないが、今はただ純粋に、大和の身体が心配だった。
そんな司の気持ちを、なんとなく察しているが、大和にとって今は夢みたいな時間なので止めるつめりはなかった。
ゲームを作る事は、幼い頃からの夢だった。一度は、体質のせいで諦めなければならないと思った、だけど、周りに恵まれいま夢の職業につけている。応援してくれている人の為にも、ここで投げ出すわけにはいけない。そう、強く決意していた。……たとえその夢が、自分の身体を蝕んでいるとしても。
「ひと段落って、いつになったらくるんだよ。大和、ずっとそう言ってるけど、全然来ないじゃん」
「それは」
大和は司から目線を逸らした。渦中の大和が、ひと段落がいつ来るのか、一番わかっていなかった。
二年目という事で、雑用ばかりやらされていた一年目とは違い、ちゃんと仕事を任されるようになったのだが、それはエラーとバグとの闘いの日々で、思うように進まない進捗に焦っていた。
司には言っていないが、職場でも先輩や上司からもう少し休め、と言われている。それを蹴って残業や休日出勤しているのは、他でも無い大和自身だったのだ。
ただでさえ、過労と少ない睡眠時間にイライラしがちな大和は、残りのご飯をかき込み、会話は終わりだと言わんばかりにご馳走様、と食器を流しに持っていき洗い出した。
こうなっては、聞く耳を持たないだろう。喧嘩をしたいわけでない。
司は、悲しそうな表情で大和の後ろ姿を見た。大和は食器を洗い終わると、振り返りもせずに、風呂場に向かって行った。
そして、それからなんとなくお互い気まずいまま、クリスマスイブを迎えた。
イブは平日なので、今日も大和は遅いのだろう。
そう思い、司は作っていたローストチキンやデパ地下で買った総菜などにラップをかけて、ダイニングテーブルの大和の席の前に並べた。
クリスマスのプレゼントももちろん準備していた。あの調子の大和がクリスマスを覚えているとは思えないが、せめて自分だけでもあげたいと用意した物だ。
今は少し気まずいだけだ。
大和を愛しているし、どんな大和でも受け入れるつもりだ。
司も、祖父の会社で後継ぎのアルファとしてきつく扱かれているが、それも仕方ない事必要な事だと理解しているので、文句も言わず仕事や教育を受け入れて頑張っている。だが自分の要領の良さは知っていたので、こうやって日々の家事だってできていた。
でも大和は。
良い意味でも悪い意味でも、まっすぐな性格だ。手を抜くなんて考えないだろう。それが大和の魅力であり愛おしい所であり、怖い所だ。自分の事を軽視する気がある。
本当は、仕事を止めて、家の中に居て欲しい。家事も何もかも全て自分がするから、此処にただ居て、オレを出迎えて欲しい。
そんな事言えないのはわかっている。
でもふとした瞬間、たとえばそう、大和が泣いて帰って来た日や、徹夜で帰ってこなかった日に、むくりと頭をもたげる想いがある。隠す事に難は無いが、隠さないほうが良いのかもしれないと、司も日々悩んでいた。
大和の事を思い、大和が身体を壊すまで見守るのか。
大和の想いを無視し、大和を囲うのか。
生粋のアルファなら、間違いなく後者を選ぶだろう。そしてきた種族だ。
だけど、俺は、違う。
そう司は自分に言い聞かせていた。大和の事が、アルファやオメガが関係無い時から好きだったから、大和の意思を第一に尊重するんだ、と決めている。
司が一人、夜の葛藤をしていると、玄関のカギがガチャリと開く音がした。
大和が帰ってきたのだ。
ハッと時計を見ると、日付が変わるまでまだだいぶ時間があった。最近にしては珍しく早い時間だ。
急いで玄関まで出迎えに行く。
「おかえり、大和。早かったね。外寒かっただろ、早く、中に」
いつも通り出迎えると、大和は、靴も脱がず突っ立って俯いていた。何事かと、司が大和の顔を覗き込むと、何故か顔が赤かった。
大和は、お酒を呑むと顔が赤くなるタイプだ。息も少し、酒臭い気がする。
まさか、と司が口にするより早く、
「あっ、あのさっ。いや……えっと、ただいま」
「おかえり?」
大和がしどろもどろに口を開いた。何かを言いたげだが、躊躇ってもいるようだ。
わけがわからないが、司はとりあえず大和のコートを脱がせ、鞄を取り、中に入れた。
大和は、なすがままだ。だが、ずっと俯いている。
いつもの席に座った大和の目の前に、暖かいコーヒーを置く。大和は、ありがとと一瞬顔を上げたが、また俯いた。耳まで真っ赤だ。
このクリスマスイブの日に、酒を呑んできたのだ、この家に帰る時間を削ってまで。めらっと嫉妬の炎が湧き上がったが、あくまで普通に司は大和に話しかけた。
「どしたの、大和。さっきから俯いてるけど、具合悪いのか? 飯は良いから、今日はもうベッドに……」
「いやっ、あのっ」
さっきから大和は単語の否定ばかりするが、何が言いたいのかさっぱりわからない。疲れている所に酒が入っているから、思考がまとまらないのだろうか?
仕方なく司は、自分にも淹れたコーヒーを啜る。
少しだけ、溜息が漏れた。
自分には言い難い事があることや、お酒を飲んで帰ってきたこと、色々と司も感情が渦巻いての事だった。
だが、その溜息に大和は大げさにビクッとした。
思わずといった風に上げた顔、その瞳にはなぜか水が溜まっていた。
それに、司も驚いた。
「どうしたの、大和。さっきから変だけど……オレに、言えない事?」
自分で言っていて、胸がしめつけられる。大和は、目に水を浮かべたまま、焦ったように否定した。
「ちがっ、うんだ。えっと、その、あの……司、オレの事、呆れた?」
そして出てきた言葉は、酷く弱気なものだった。わけがわからず、司は首を傾げた。
「呆れ……はちょっとしたかもしれないけど、それだけ、大和が仕事をやりたかったって事だろ? だから別に、オレは」
「ごめん司!」
思った事を全て口にするより先に、大和がガバッと頭を下げた。
驚いて、言葉が出ない司。
そんな司を半ば無視するような形で、大和が言葉を張り上げる。
「オレ、お前に対して酷い事ばっかりしてるよなっ。オレの事考えて言ってくれてるのに聞かなかったり、ご飯や家事全部してくれてるのに、当たり前になって感謝も忘れたり……今日だって、帰るまでクリスマスイブだって事や、クリスマス休めるか聞いてきた事すら、忘れてた。本当に、ごめん! オレ、ダメな奴だから、お前に愛想つかされるかもしれないって、思ったら、みんな早く帰してくれたのに、帰ってくる勇気が出なくて、こんな時間に……」
最後の方は、もうぐずぐずと鼻を鳴らしながら独り言のように呟いていたので、ハッキリとは聞き取れなかった。
大和は頭を下げた姿勢のまま、額をテーブルにつけて、ぐずぐずと泣き始めた。
大和の夢を知ってた。
ずっと憧れていた業界だというのも知ってた。それを応援したいと思ったのは、ほかならぬ司自身だ。
だから、大和が不安に思う事なんて、無いのに。
司も、どう言っていいのかわからず、大和、と静かに呼びかけて、ひっくひっくと揺れている背中を優しくさする事しかできなかった。
大和は未だに、ぐずぐずと何やら自分を卑下する言葉を言っているようだった。
背中を優しく撫でながら、情緒不安定気味な番に、司は眉を寄せた。
こんな庇護欲をそそる姿を見てしまったら、本当に囲い込んで、一歩も外に出したくなる。
だが、その欲望はグッと堪えて、司は口を開いた。
「大和。大和は凄いよ。夢を諦めずに叶えたし、その夢をずっと実現させ続ける為に頑張ってる。そんな大和を、嫌いになるわけないだろ。なんたってオレら、運命の番だぜ。離れたり嫌ったりするなんて、ありえない。オレが、どれだけ大和の事愛してるか知ってたら、そんな言葉は出てこないハズだけど」
最後は、少し茶化すように言った。それで、大和のグズグズもちょっとだけ治まったようだった。
ゆっくり顔を上げた大和の顔は、涙と鼻水でグチャグチャだったが、それでも司にとっては何よりも愛おしかった。当たり前だ。
苦笑する大和の顔を、拭ってやる。
「こんなオレで、良いの?」
「当たり前だろ。大和以外に、誰が居るんだよ。お前がいなくなったら、オレは死ぬぜ」
真顔で当たり前の事を言うと、それも茶化していると思ったのか、さっきより明るい表情で大和が笑った。冗談だと思われた事は心外だが、大和が笑うならそれでもいいかと思った、
「司、お前って本当に良い奴だよな」
「大和限定だけどね。で、どうする? 今日は、もう寝る?」
司としては、お酒も入っているし疲れているだろうから眠るか、という意味で聞いたのだが、思考が緩んでいる大和は、別の意味ととったようだった。
「……えっち」
「えっ?」
恥ずかしそうに頬をさらに染める大和に、司は一瞬本気で何を言っているのかわからなかった。が、すぐに察した。今日は、クリスマスイブ。自分達は新婚だが、性の七時間としてカップルたちが楽しみに待っている時間だ、という事を。
「大和の方がえっちじゃん。オレは、純粋に寝るかって聞いたんだけど」
くすりと笑うと、大和はハッとした顔をして、恥ずかしそうに目を逸らした。
「じゃっ、じゃあ。寝る! おやすみ!」
バッと立ち上がった大和の手をギュッと掴む。
その強い力と、体温に、大和はハッと司を見下ろした。その目は、先ほどまでの心配や慈しみを残しているが、ギラギラと欲望に光っていた。
久しぶりのそういう雰囲気に、大和は、少しだけ戸惑いながらも、身をゆだねる事にした。
「あっ、あ、司、司。もっと、激しくしてっ」
キングサイズのベッドの上で、ゆっさゆっさとゆすぶられながら、うわ言のように大和が言う。その大和の上で腰を動かしている司は、落ちて来た前髪をかき上げ、意地悪に笑う。
「だぁ~め。大和、疲れてるだろ。激しくしたら、明日に響くよ。だから今日は、ゆっくりするよ」
「でもっ、奥、奥がぁ、あっ、さみし」
酒で思考が蕩けている大和は、破壊的に可愛かった。だけど、自分のせいで大和に負担をかけるわけにはいかない。今は発情期でなく、これはコミュニケーションの一つだ。自分に言い聞かせ、司は大和の頬を撫でた。すりっと擦り寄って来る大和が本当に愛おしい。
「じゃあ、発情期が来たら、思う存分奥を突いて、抉って、気持ち良くしてやるよ。だから、今日は我慢な。だって、ひと段落ついたら来るんだろ、発情期」
すこしだけ意地悪を言うと、大和は眉を下げて、甘えるように、
「だってぇ、だって、仕事、やりたいんだもん。頑張って、一人前って、認めて欲しいんだよ、っあ、ああ、いいっ、そこ」
そう、嬌声を上げた。
思考が蕩けても、快楽を拾っていても、揺るがないその答えに、司は苦笑する。
手を伸ばし、大和の立ち上がったモノをやわく掴んだ。いつもは、アナだけでイかせる事に心血を注ぐが、今日はそうも言ってられない。速やかにイかせる為に前にも刺激を与える。すると、大和は声を上げてあっけなくイった。
そして、安らかな寝息が聞こえ始めた。
気持ち良くイったのと、疲労と、精神的に張りつめていたのが解けたのだろう。
司はズルリと大和の中から自身を取り出し、数回自分で擦ってティッシュの中に欲望を吐き出した。
ふぅと一息吐き、大和の身体を清めて服をしっかり着せて、自分も着替えた後大和の横に潜り込んだ。
ここ最近で、一番安らかな大和の寝顔だった。
それこそが、クリスマスプレゼントだろう。
司は、大和に甘い自分に苦笑しながら、枕元に自分が用意したプレゼントの包みを置いた。最高級のカシミヤのマフラーだ。これが少しでも大和を狙う者の牽制になれば良い、との考えからだった。
ふと時計を見ると、日付が変わっていた。
「お休み、大和。良い夢を」
額にキスを落とし、そっと大和を抱きしめて、司も眠りについた。
外では、チラチラと雪が降りだしていた。
ホワイトクリスマスが、色んな感情や問題を、今だけは白く染め上げて隠していくようだった。
おわり。
おまけ――次の日
「つ、司、これっ」
「大和、メリークリスマス。オレからのプレゼント、気に入ってくれた? あと、昨日ケーキ食べられなかっただろ、今日食べれそう?」
2、3個答えないといけない司からの言葉に、大和は一瞬フリーズしたが、ハッとしたようにキッチンにいる司にトトトと小走りで近寄った。
そして、右手に包みを持ったまま、司に抱き着いた。
「めっ、メリークリスマス。プレゼントはオレだよ……なんちゃって」
自分が言ったのに、恥ずかしそうに司の服に顔を埋める大和に、司は思わず笑ってしまった。
「ああ、そうだな。昨日、プレゼント貰ったから、これであいこだな」
それを聞いた大和は、ぎゅーっと司を抱き締める腕に力を込めた。
「……イケメンすぎて、ムカつくまである」
「そうか? 大和限定だけど」
「そういう所だよっ」
苦笑して顔を上げた大和の唇に、司は不意打ちのようにキスを落とす。大和は一瞬ビックリしたような顔をしたが、そのまま大人しくキスを受け入れた。
キスも、セックスも、久方ぶりのように感じた。この行為が、どれほど心を満たしてくれるのか、久しぶりに確認できた気が大和はしていた。そして、それを我慢させているのが、自分だという事も。
「今日は、ゆっくりできるのか?」
唇を離し、司が何気なく聞く。大和は、目線を逸らした。
「えっと、午後からちょっと会社行って、調整したい事が……」
「わかった。なるべく早く帰ってきてくれると嬉しい」
いつも通りの会話だ。だが大和は、昨日の酒に酔って言った事も言われた事も、全てばっちり覚えているタイプだったので、またぎゅっと司を抱き締めた。
「努力する。……ひと段落も、なるべく早く来るように、がんばる」
「ほどほどにな。オレは、大和の身体が一番大事だから。大和も、大事にしてくれ」
優しくて暖かい腕が、大和にもまわってきた。だけどなぜか、その暖かさに大和は泣きたくなった。
うん、と頷く事しかできずに、大和はただ、司を抱きしめていた。
本当に終わり
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