19 / 29
第二章
第十話
しおりを挟む
ハーレクインではエニシダとボラゴが研究所で暇をつぶしていた。
「アシュガ様ったら、顔真っ赤にしてミチルなんか追いかけて」
エニシダはハイヒールの音をかつかつと鳴らして足を組んで座った。ボラゴはまた始まったとばかりに尻尾を揺らして、前足を舐めた。
「そんなにぶつぶつ文句言ってんなら、追いかけていきいなさんな。そんなこともせずに暇を持て余して。ああ、もう愛しのアスター。今頃クリセンマムで何してるのでしょう」
エニシダは重いため息をついて、窓の外の人だかり眺めた。古くも美しい背の高い家々が居並ぶ街頭。装飾されたドレスを身に着けて歩いていく女達。
「嫌よ、ミチルなんかに精一杯尽くすあの人を見るのは」
「だから、ぶつくさ追いかけていきなさい。それが嫌なら新しい男でも探すんだね」
「嫌っそんなの」
立ち上がって出ていくエニシダを見ながら、悪魔というものはとその後姿を見た。人間界の人達を見下ろし大して変わらないもんだと嘆息する。
______どこもかしこもいなくなったアシュガ先生を賞金付きで探している。
「無駄無駄、クリセンマム」
そんな猫の声も聞こえないほど人は騒いでいる。
「アスター、世界一間抜けで優しいアスター」
そんなアスターの危機をボラゴは肌身で感じ取っていた。
「アスターは世界一優しい悪魔の猫」
人だかりは一層ざわめきを帯びている。
「ミチル、アスターのためにも元気になって」
一滴、涙が垂れた。その涙は花に落ち土の肥やしになる。
「早く戻ってきてアスター」
「アシュガ様ったら、顔真っ赤にしてミチルなんか追いかけて」
エニシダはハイヒールの音をかつかつと鳴らして足を組んで座った。ボラゴはまた始まったとばかりに尻尾を揺らして、前足を舐めた。
「そんなにぶつぶつ文句言ってんなら、追いかけていきいなさんな。そんなこともせずに暇を持て余して。ああ、もう愛しのアスター。今頃クリセンマムで何してるのでしょう」
エニシダは重いため息をついて、窓の外の人だかり眺めた。古くも美しい背の高い家々が居並ぶ街頭。装飾されたドレスを身に着けて歩いていく女達。
「嫌よ、ミチルなんかに精一杯尽くすあの人を見るのは」
「だから、ぶつくさ追いかけていきなさい。それが嫌なら新しい男でも探すんだね」
「嫌っそんなの」
立ち上がって出ていくエニシダを見ながら、悪魔というものはとその後姿を見た。人間界の人達を見下ろし大して変わらないもんだと嘆息する。
______どこもかしこもいなくなったアシュガ先生を賞金付きで探している。
「無駄無駄、クリセンマム」
そんな猫の声も聞こえないほど人は騒いでいる。
「アスター、世界一間抜けで優しいアスター」
そんなアスターの危機をボラゴは肌身で感じ取っていた。
「アスターは世界一優しい悪魔の猫」
人だかりは一層ざわめきを帯びている。
「ミチル、アスターのためにも元気になって」
一滴、涙が垂れた。その涙は花に落ち土の肥やしになる。
「早く戻ってきてアスター」
0
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
お月様とオオカミのぼく
いもり〜ぬ(いもいもぶーにゃん)
絵本
ある日の雲一つない澄みわたった夜空にぽっかり浮かぶ大きな満月。その下に広がる草原に一匹の…まだ子供の真っ黒なオオカミがちょこんと座っていた。
「今日は、すごい大きくて、すごい丸くて、立派なお月様…こんなお月様の夜は、人間になれるって森の図書室の本で読んだけど…ええっと…えーっと…どうするんやっけ…?」
と、うーんと考え込む子供のオオカミ。
「えーっと、まずは、立つんやったっけ?」
うーん…と言いながら、その場で立ち上がってみた。
「えーっと、次は、確か…えーっと…お月様を見上げる?…」
もしよろしければ、続きは本文へ…🌝🐺
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる