たから島のぼうけん

つくねこだま

文字の大きさ
9 / 12

たから島のぼうけん8

しおりを挟む
 ヘビはその大きな口を開け、私たちに近づいてきた。まずい、逃げろ!言葉に出さなくても分かった。それほど危険な状況だった。
 巨大はヘビは辺りの木をなぎ倒しながら、ものすごい勢いで迫ってくる。私たちは必死に走った。森の中の道を必死に。だから、道を間違えたことに気づかなかった。木が少なくなってきたことに気づいたのは、しばらくしてからだった。
「はぁ、はぁ、あれ?」
「どうした、スーフォ」
「へ、ヘビがいない。」
 振り向くと、ヘビの姿はなかった。何とか逃げ切ったようだ。
 私たちは一息つこうとして、道のわきに腰を下ろした。その時、何かがおかしいときに気がついたのだ。
 なんだか空気が冷たい。おまけに木の代わりにキラキラとした柱がそこら中に生えている。
「こ、これは…。」
 イーワンがその透き通った柱をなでる。
「冷たっ!これは氷の柱だ!」
 私は気づいた。ヘビがあきらめたのではない。この先に来られなかったのだ。
 そう、ここは氷に囲まれた、北国のような場所だったのだ。
 いくら寒いとはいえ、戻ることはできない。あの大蛇が、道の途中で待っていないとも限らない。私たちは震えながら、前に進むしかなかった。
「なんだか、前が見えづらいな。」
 先頭を行くイーワンがつぶやく。霧というか煙というか、もやもやした白いものがあたりに立ち込めていた。幸いなことに進むべき道は見える。私たちは自分たちの目を頼りに進み続けた。
 薄煙の中に、トンネルが現れた。道はその奥に続いている。仕方ない、危険を冒すことになるが、そこをくぐっていくしかなさそうだ。
「通って、だいじょうぶかなぁ。」
 スーフォが震える声で言った。怖くても進むしかない…が、以外にもトンネルはすぐに終わった。トンネルというより門か、アーチのようだった。
 私が最後にそのアートをくぐった時、
「グルルルル…」
 という低いうなり声を聞いた。また、危険な動物か…。
「イーワン、スーフォ、さっきのアーチを背にするんだ!何かが近くにいる!」
 私がそう叫ぶと、とっさに二人は背を柱にぴったりとつけ、息を殺した。うなり声は続いている。一体、どこからやってくるのか…。
「ジャン、いやな予想なんだが…。」
 イーワンがつぶやく。
「ぼ、ぼくも同じこと考えてるかも…。」
 スーフォもつぶやく。
 私もうすうす感づいていた。
 声は、上から聞こえている!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

処理中です...