ちょっとした忘れ物

つくねこだま

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ちょっとした忘れ物

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「喰った喰った…よし、はよ帰ろ。」
 
 夕食を終えたファミレス。俺は心持ち勢いよく席から立ち上がった。勘定をしようとレジに向かう。すると不意に、後ろから店員が声をかけてきた。                                      
「お客様…お客様!あの、お忘れ物です!」 
                                                      
 オレか!?少しあわてた大きな声にはじかれて、反射的に持ち物を確認する。マフラーはあるし、コートも着てる。タバコも持ってるし、財布は手に持っている…他に荷物は何もない。
                                                  
「別に何も忘れてないけど…?」                                                 
 そういったオレの言葉を遮って、店員はこともなげに言った               
「いえ、お客様、”お体” をお忘れになってます!」                                   
 まさか、いや、そんなはずは…オレは半信半疑のまま、さっきまで座っていた席を振り返る。
                                               
「…あ」                                                                   
 テーブルには食事後の食器がまだそのまま残っていた。カルボナーラにコーンスープとチョコパフェが今日の夕食だった。確かにオレが喰った皿だ。

 …その食器類の前に、ぐったりとして目もうつろな“オレ”が座っていた!                                 
「ね?お忘れでしたでしょ、お客様…!」                                             

 スタスタとオレのあとをついてきたさっきの店員が、にっこりとこっちを見ている。 
「ああ…どうもすいません。ありがとうございます。」
 オレは一度、席に座りなおすといったん目を閉じ、深呼吸した。
 よし、今度は忘れないぞ。                                                   

 まさかこんなところでオレの癖がでてしまうとは…。それにしても、“見ることのできる人”が店員の中にいて本当に良かった。危うく死ぬところだったぜ…。オレはほっとした。
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