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第2章 初めての異世界
城壁の町と迷い人の噂
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森を抜けると、視界の先に巨大な石壁がそびえていた。
その中央には分厚い木製の門。槍を持った兵士たちが立ち並び、異様な視線でブレイザーを睨んでいる。
「なんだ、あの鉄の馬車は……」
「魔導具か? いや、見たことがない……」
やがて一人の兵士が声を張り上げた。
「乗っている者、身分証と名を名乗れ!」
翔はドアを開けて降り立ち、胸を張って答える。
「清水翔。こっちは松田忍。……俺たちは、迷い込んだ旅人だ身分証は盛ってない。」
忍も丁寧に会釈する。しかし兵士たちの警戒は解けず、すぐさま詰所へ連行された。
城壁沿いの詰所。石造りの質素な部屋に通されると、兵士隊長らしき壮年の男が腕を組んで睨んでいた。
「……迷い人、だと?」
低い声で呟き、しばらく翔と忍を観察したあと、隊長はゆっくりと頷いた。
「昔からこの大陸には“異界から迷い込む者”の噂がある。空から落ちてきたり、海の彼方から流れ着いたり……稀だが確かに報告がある」
翔と忍は顔を見合わせた。
「つまり……俺たちみたいな存在が前にも?」
「噂程度だ。だが“迷い人”と呼ばれる者は確かに知られている」
隊長はさらに視線を鋭くする。
「問題は――お前たちが“幸運を呼ぶ迷い人”なのか、“災厄をもたらす迷い人”なのか、ということだ」
翔は一歩踏み出し、静かな声で言った。
「俺たちは争う気はない。ただ旅をしたいだけだ」
忍も柔らかな笑みを添える。
「この“馬車”も、危険なものではありません。私たちの国で使う旅の道具なんです」
隊長は胡散臭そうに睨んでいたが、やがて肩を落として息をついた。
「……よかろう。すぐに処刑台へ送るほどの理由もない。町で行動できるよう、“仮滞在証”を与える。ただし一か月だけだ」
机の上に羊皮紙のカードが二枚置かれる。
【仮滞在証】
有効期限:一か月
効力:町内での買い物・宿泊が可能
忍はそれを受け取り、ほっと息をついた。
「ありがとうございます」
翔も頭を下げる。
「恩に着る」
――その帰り道。
門を出てブレイザーに戻ると、相棒がすぐに声を上げた。
《なあ翔、忍。腹減った。なんかくれ》
「……お前の“飯”ってなんなんだ?」
《決まってるだろ。魔力だ。食い方はいろいろだが――いらねえアイテムやゴミでも、俺の変換炉に突っ込めば魔力に変換できる》
忍が興味深そうに首を傾げる。
「ゴミでもいいんですか?」
《ああ。木の枝や石はおやつ程度だが、魔物の角や牙は最高のご馳走だ。金属や宝石なんかは……もう極上だな》
翔は懐から、昨日仕留めたブラッドウルフの牙を取り出した。
「これでも食えるのか?」
《おう、試してみろ!》
後部の《魔力変換炉》と刻まれた小さなハッチに牙を入れる。
ゴウン、と低い音が響き、緑色の光が吸い込まれるように消えた。
《ぷはぁ! 濃厚で上等な魔力の旨味だな! 最高のステーキって感じだ!》
翔と忍は顔を見合わせ、吹き出した。
「……ブレイザー、食レポするなよ」
《俺だって味は大事なんだよ!》
笑い合いながら、三人は町へ向かって歩き出した。
――異世界キャンプ旅、次の舞台は「人の町」。
そして新しい仲間“食いしん坊なキャンピングカー”の存在は、今後ますます旅を面白くしていくことになる。
その中央には分厚い木製の門。槍を持った兵士たちが立ち並び、異様な視線でブレイザーを睨んでいる。
「なんだ、あの鉄の馬車は……」
「魔導具か? いや、見たことがない……」
やがて一人の兵士が声を張り上げた。
「乗っている者、身分証と名を名乗れ!」
翔はドアを開けて降り立ち、胸を張って答える。
「清水翔。こっちは松田忍。……俺たちは、迷い込んだ旅人だ身分証は盛ってない。」
忍も丁寧に会釈する。しかし兵士たちの警戒は解けず、すぐさま詰所へ連行された。
城壁沿いの詰所。石造りの質素な部屋に通されると、兵士隊長らしき壮年の男が腕を組んで睨んでいた。
「……迷い人、だと?」
低い声で呟き、しばらく翔と忍を観察したあと、隊長はゆっくりと頷いた。
「昔からこの大陸には“異界から迷い込む者”の噂がある。空から落ちてきたり、海の彼方から流れ着いたり……稀だが確かに報告がある」
翔と忍は顔を見合わせた。
「つまり……俺たちみたいな存在が前にも?」
「噂程度だ。だが“迷い人”と呼ばれる者は確かに知られている」
隊長はさらに視線を鋭くする。
「問題は――お前たちが“幸運を呼ぶ迷い人”なのか、“災厄をもたらす迷い人”なのか、ということだ」
翔は一歩踏み出し、静かな声で言った。
「俺たちは争う気はない。ただ旅をしたいだけだ」
忍も柔らかな笑みを添える。
「この“馬車”も、危険なものではありません。私たちの国で使う旅の道具なんです」
隊長は胡散臭そうに睨んでいたが、やがて肩を落として息をついた。
「……よかろう。すぐに処刑台へ送るほどの理由もない。町で行動できるよう、“仮滞在証”を与える。ただし一か月だけだ」
机の上に羊皮紙のカードが二枚置かれる。
【仮滞在証】
有効期限:一か月
効力:町内での買い物・宿泊が可能
忍はそれを受け取り、ほっと息をついた。
「ありがとうございます」
翔も頭を下げる。
「恩に着る」
――その帰り道。
門を出てブレイザーに戻ると、相棒がすぐに声を上げた。
《なあ翔、忍。腹減った。なんかくれ》
「……お前の“飯”ってなんなんだ?」
《決まってるだろ。魔力だ。食い方はいろいろだが――いらねえアイテムやゴミでも、俺の変換炉に突っ込めば魔力に変換できる》
忍が興味深そうに首を傾げる。
「ゴミでもいいんですか?」
《ああ。木の枝や石はおやつ程度だが、魔物の角や牙は最高のご馳走だ。金属や宝石なんかは……もう極上だな》
翔は懐から、昨日仕留めたブラッドウルフの牙を取り出した。
「これでも食えるのか?」
《おう、試してみろ!》
後部の《魔力変換炉》と刻まれた小さなハッチに牙を入れる。
ゴウン、と低い音が響き、緑色の光が吸い込まれるように消えた。
《ぷはぁ! 濃厚で上等な魔力の旨味だな! 最高のステーキって感じだ!》
翔と忍は顔を見合わせ、吹き出した。
「……ブレイザー、食レポするなよ」
《俺だって味は大事なんだよ!》
笑い合いながら、三人は町へ向かって歩き出した。
――異世界キャンプ旅、次の舞台は「人の町」。
そして新しい仲間“食いしん坊なキャンピングカー”の存在は、今後ますます旅を面白くしていくことになる。
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