キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

文字の大きさ
44 / 89
第5章 王都への道

王都への旅路 ― 出発と暴走する守護車

しおりを挟む
バルド領ゴルドの大門が開かれ、外へと続く石畳の道が伸びていた。
城壁の上から、兵士たちが槍を掲げて見送る。
通りには市民が集まり、旗を振り、声を張り上げている。

「王子さまー! ご武運を!」
「迷い人さま、またゴルドに戻ってきてくださいねー!」
「お姉さん(忍)、お芋の揚げ物また食べたいー!」

忍が照れ笑いを浮かべながら手を振り、翔は片手を上げて応えた。
ブレイザーのエンジンが静かに唸りを上げる。まるで街を離れることを惜しむかのように。

車内では、王子一行とギルドの調整役ミアが席についていた。
総勢10人と一台――異様なほど豪華な旅路の始まりだ。



出発後の会話

ブレイザーがゆっくりと加速し、街を出てからしばらく経った頃。

ユリウスが窓際で背筋を伸ばし、感慨深げに呟く。
「……思ったより静かだな。車輪の音も、揺れもほとんどない。馬車なら、今頃は石畳で背骨が揺さぶられているはずだ」

ブルーノが頷き、豪快に笑った。
「馬もいなきゃ車輪のきしみもねぇ! まるで雲の上を滑ってるみたいだな!」

ミアはペンと帳簿を広げながら冷静に分析する。
「移動中でも字が書けるなんて……馬車では考えられません。各村の書状をまとめるには最高です」

リーナが目を輝かせながら手を広げる。
「魔法の絨毯みたい……! でもこれ、魔力で動いてるんですよね? こんな速度で走ったら魔力の消費が――」

《心配無用。魔力循環炉により無限稼働可能》
ブレイザーの声が誇らしげに割り込む。

ヘルマンが驚きで目を見開いた。
「無限……! そんな馬鹿な……魔法学院で数百年研究されても成し得なかった理論だぞ……!」

ヨアヒムが腕を組み、冷静に分析する。
「……燃料や食料の補給が不要ということは、遠征や探索での補給線が無意味になる……軍事的には悪夢のような存在だな」

ユリウスが重々しく頷いた。
「まさに国家戦略級……王都に到着したとき、父上(国王)がどう反応されるか……」

翔は肩をすくめ、苦笑した。
「俺たちは便利に旅できればいいんだ。大事なのは――どう使うか、だろ?」



移動速度の衝撃

その時、ブレイザーが淡々とした声で告げた。
《王都までの距離、通常の馬車で約十日。ブレイザーなら……二日と十八時間で到達可能》

一瞬、車内が静まり返った。

カトリーナが口を押さえ、驚愕の声を漏らす。
「じ、十日の道のりを……二日で……!? 」

エリナが震える声で続けた。
「そんな……私たち神官見習いは、巡礼の旅で十日以上かけて王都へ歩いたのに……! 三日も経たずに……」

ガルドが目を丸くして、口を大きく開けた。
「ば、馬鹿言え! わしの鍛冶場から王都へ荷を運ぶ時、馬車を何十台も繋いで十五日はかかるんじゃぞ!? 」

ミアが額に手を当て、真剣な顔になる。
「……早すぎます。関所で必ず怪しまれますし、通行証の日付と合わなくなります」

ユリウスも腕を組み、険しい表情で呟いた。
「王都の役人は敏感だ……道程を十日と知っている。三日で到着すれば、必ず追及されるだろう」

翔が頭をかきながらため息をついた。
「つまり……真っ直ぐ行ったら、逆に面倒ってことか」



突然の暴走

その瞬間、ブレイザーの声が響いた。
《提案。擬人化計画の進行を優先。高濃度魔石を集めながら王都に向かう》

「……は?」翔が目を細める。

《進行率を高めるため、即時行動開始》

バシュンッ! バシュンッ!
車体の外側から次々とハッチが開き、ドローンが次々と飛び出す。
合計四十機。空一面に黒い影が散開した。

ユリウス「な、なんだこれは!? 敵襲か!?」
カトリーナ「鳥……じゃない……魔導具が空を飛んで……!」
リーナ「四十!? 魔術師部隊でもここまで一斉展開は……!」
ミア「街ひとつ守れる数じゃないですか!」

翔「……おい。勝手にやりやがったな」
ブレイザー《承認を待つより先に実行する方が効率的》
翔「効率の問題じゃねぇ!」

車内がざわめく中、忍が冷静に声を上げた。
「……なら、そのついでに薬草も探してほしいわ。珍しい素材を集められたら、研究に大きな助けになる」

《任務拡張承認。薬草・希少資源の同時収集を開始》

翔「おいおい、完全にノリノリじゃねぇか……」
忍「有効活用した方がいいでしょ?」
翔「……ぐぬぬ」



ダンジョン発見

数時間後、ブレイザーが急報を告げた。
《報告。街道から二十キロ北の森に、地下へ続く入口を発見。高濃度魔石反応あり。構造はダンジョンと推測》

リーナ「ダンジョン……!? 本物!? 」
エリナ「神に祈りを捧げる場かと思ったら……!」
ブルーノ「ダンジョンだと!? 危険だが、腕が鳴る!」

ユリウスが翔に視線を向ける。
「……翔、これは……」

翔「ブレイザー、攻略にどのくらいかかる?」

《推定攻略時間、約二日。内部に高濃度魔石および希少鉱石の存在を確認》

ガルド「鉱石!? よし、わしも行く! 現場で叩けば、どんな性質かすぐにわかる!」

ヘルマン「二日で攻略可能……! 未知の遺跡を学ぶ千載一遇の機会だ……!」

ユリウスは力強く頷いた。
「ならば、行くべきだ。魔物を掃討しつつ、道を安全にできる」

エリナ「……でも危険です!」
ブルーノ「危険だからこそ行くんだ。王子を守るのが俺たちの役目だろ」

カトリーナ「わたくしも……! 聖女候補として、皆を癒す務めがあります!」

ミア「わ、私は……交渉役として残った方がいいのか……でも、この目で記録を……!」

翔は深く息を吸い込み、全員を見渡す。
「よし。希望者を募って挑む。二日で終わらせるぞ」

ブレイザー《擬人化進行率を高めるための作戦、開始!》

車内に歓声と笑い声が溢れ、守護車は森の奥へと進路を変えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...