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第7章 迷宮都市編
創世域アルカディア・ネクサス
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静まり返った最下層の空間。
ブレイザーが静かに両手を広げ、掌から光を放った。
《ダンジョンコアとの融合、安定しました。
空間制御モジュール、再構築完了。
新機能――“亜空間展開ゲート”を起動します。》
床に青白い光の輪が浮かび、空気がわずかに震えた。
やがて、直径三メートルほどの光の門が開く。
表面は水のように揺らめき、向こう側には青空と草原が広がっていた。
「……これが、ブレイザーの中なのか?」翔が小さく呟く。
《はい。新たに生成された独立亜空間です。名称を登録しますか?》
「アルカディア・ネクサス。」翔が迷いなく答える。
《登録完了。内部環境安定。転送を許可します。》
ゲートの光が強くなり、風が流れ込む。
翔たちは顔を見合わせ、順に中へ足を踏み入れた。
一瞬の反転感覚のあと、視界が広がる。
眼前には、どこまでも続く草原と澄んだ空。
遠くに小川が走り、丘の上には白銀の塔が輝いていた。
「……まるで別の世界ね。」忍が目を細める。
「匂いまで“地上”と同じだ。」翔が草を握る。
《酸素濃度・湿度・気圧を地球環境に調整しています。
今後の定住に支障はありません。》
ブレイザーが皆の方へ向き直る。
《では、これより街の構想をお伺いします。
どのような都市を築きたいか、全員の意見を。》
翔が腕を組み、考える。「……そうだな。
俺の理想は“誰もが安心して暮らせる街”。
便利で、清潔で、安全。けど自然もちゃんと残したい。」
忍が微笑みながら言う。
「じゃあ、風の通る街ね。木々があって、花の香りがする広場。
でも、ただの自然公園じゃなくて、テクノロジーと共存した街。」
ガルドが大声で笑う。「酒場を忘れてんじゃねぇか!
夜は明るくて、音楽が流れて、飲んで歌える場所だ!」
ヨアヒムが真面目な顔で頷く。
「医療と教育の整備も必須です。
病気や怪我に怯えず、誰でも学び、働けるように。」
「子どもたちが学べて、老人が安心して暮らせる……いいね。」翔が頷く。
「交通も考えよう。電車やバス、自動運転でいい。
事故のない交通網を作ってくれ、ブレイザー。」
《自動運転交通網、構想に追加。》
忍がさらに言葉を重ねた。
「それと――食料。無人農園と畜産場、それに加工施設も。
この世界の人たちも安心して暮らせるように。」
「うむ、それは賛成だ。」ヨアヒムが頷く。
「食料が自給できれば、都市は自立できる。」
ガルドが豪快に笑う。
「畜産があるなら、ドワーフ向けの肉料理屋も頼むぜ!」
《承認。料理文化再現区画に登録します。》
翔が肩をすくめて笑う。「お前、肉と酒しか言わねぇな。」
「それが生きる糧だ!」ガルドが胸を張る。
そんなやり取りに、忍が小さく笑った。
「ねぇブレイザー、みんなの意見をまとめると――
現代日本の技術と異世界の文化を融合した“未来都市”ね。」
《解析完了。
提案内容:自動運転交通網、統合型複合都市核“セントラル・アーク”、
医療・教育・商業・居住を統合。
加えて自然循環ゾーン、無人農園、畜産・加工施設、娯楽区、鍛冶工房区を含む。》
ブレイザーの瞳が静かに輝く。
《この規模の構築には――およそ二十時間を要します。》
「二十時間か。思ったより早いな。」翔が感心したように言う。
《ドローン群五十機を展開し、同時多層建設を実施。
資材は内部再構成によって生成します。》
「よし、頼む。夢の街を作ろう。」翔が言った。
《了解。建設モード起動――ドローン展開開始。》
ブレイザーが手をかざす。
上空が光を帯び、五十機のドローンが無音で浮上した。
編隊を組んだそれらが空に光の線を描き、地上へと降下していく。
草原の一角が変化し、道路、橋、塔の骨格が現れ始めた。
《資材転送開始。都市形成プロセスを実行中。》
光が広がる。
空気が震え、街が少しずつ姿を現す。
それを見上げながら、忍が呟いた。
「本当に……作れるんだね、街を。」
「作るんじゃねぇ。」ガルドが肩を叩いた。
「“創る”んだ。神話だぜ、こりゃ。」
ヨアヒムが微笑む。「科学と魔法が、初めて一つになった瞬間ですね。」
《都市核“セントラル・アーク”形成中。進捗率三パーセント。》
「……いい街になるな。」翔が静かに呟いた。
《この世界に風が吹く限り、成長を続けるでしょう。》
ブレイザーが再び手を伸ばし、草原にゲートを開いた。
《構築が完了するまで、この空間は自動防御モードに入ります。
マスター、地上へ戻りますか?》
「ああ。王都に報告もしないといけないしな。」翔が頷く。
「建設は任せた、ブレイザー。」
《了解。アルカディア・ネクサス、建設モード維持。》
翔たちは光の門をくぐり、迷宮の空気に戻った。
地上へ向け、静かな通路を歩きながら、誰もが先ほどの景色を思い返していた。
「……本当にあんな街ができるのかしら。」忍が呟く。
「できるさ。」翔が笑う。
「ブレイザーを信じろ。あいつはもう、AIじゃなくて――仲間だ。」
ガルドが笑う。「仲間っていうか、もはや神だな。」
ヨアヒムがうなずいた。「彼の作る街は、きっと未来の礎になる。」
その時だった。
ブレイザーの声が、緊迫した調子で響く。
《――緊急事態発生。》
全員が立ち止まる。
「ブレイザー? どうした?」翔が問い返す。
《迷宮都市エルグラードの地表構造に異常反応。
地盤崩落、魔力振動の波形を確認。
……都市全域が、崩壊を始めています。》
「なっ……崩壊!?」忍が息を呑む。
《震源は塔の中心部。封印層が解放されつつあります。》
「くそっ、嫌な予感が的中したか……!」翔が顔を上げた。
《至急戻りましょう。王都にも影響が出る可能性があります。
転送ゲートを再展開します!》
足元に光の輪が広がり、風が渦を巻いた。
翔は拳を握る。
「……わかった。急ぐぞ、みんな!」
光が弾け、全員の姿が白に飲み込まれた。
その直後、地上では――
迷宮都市エルグラードの中心塔が音を立てて崩れ始めていた。
ブレイザーが静かに両手を広げ、掌から光を放った。
《ダンジョンコアとの融合、安定しました。
空間制御モジュール、再構築完了。
新機能――“亜空間展開ゲート”を起動します。》
床に青白い光の輪が浮かび、空気がわずかに震えた。
やがて、直径三メートルほどの光の門が開く。
表面は水のように揺らめき、向こう側には青空と草原が広がっていた。
「……これが、ブレイザーの中なのか?」翔が小さく呟く。
《はい。新たに生成された独立亜空間です。名称を登録しますか?》
「アルカディア・ネクサス。」翔が迷いなく答える。
《登録完了。内部環境安定。転送を許可します。》
ゲートの光が強くなり、風が流れ込む。
翔たちは顔を見合わせ、順に中へ足を踏み入れた。
一瞬の反転感覚のあと、視界が広がる。
眼前には、どこまでも続く草原と澄んだ空。
遠くに小川が走り、丘の上には白銀の塔が輝いていた。
「……まるで別の世界ね。」忍が目を細める。
「匂いまで“地上”と同じだ。」翔が草を握る。
《酸素濃度・湿度・気圧を地球環境に調整しています。
今後の定住に支障はありません。》
ブレイザーが皆の方へ向き直る。
《では、これより街の構想をお伺いします。
どのような都市を築きたいか、全員の意見を。》
翔が腕を組み、考える。「……そうだな。
俺の理想は“誰もが安心して暮らせる街”。
便利で、清潔で、安全。けど自然もちゃんと残したい。」
忍が微笑みながら言う。
「じゃあ、風の通る街ね。木々があって、花の香りがする広場。
でも、ただの自然公園じゃなくて、テクノロジーと共存した街。」
ガルドが大声で笑う。「酒場を忘れてんじゃねぇか!
夜は明るくて、音楽が流れて、飲んで歌える場所だ!」
ヨアヒムが真面目な顔で頷く。
「医療と教育の整備も必須です。
病気や怪我に怯えず、誰でも学び、働けるように。」
「子どもたちが学べて、老人が安心して暮らせる……いいね。」翔が頷く。
「交通も考えよう。電車やバス、自動運転でいい。
事故のない交通網を作ってくれ、ブレイザー。」
《自動運転交通網、構想に追加。》
忍がさらに言葉を重ねた。
「それと――食料。無人農園と畜産場、それに加工施設も。
この世界の人たちも安心して暮らせるように。」
「うむ、それは賛成だ。」ヨアヒムが頷く。
「食料が自給できれば、都市は自立できる。」
ガルドが豪快に笑う。
「畜産があるなら、ドワーフ向けの肉料理屋も頼むぜ!」
《承認。料理文化再現区画に登録します。》
翔が肩をすくめて笑う。「お前、肉と酒しか言わねぇな。」
「それが生きる糧だ!」ガルドが胸を張る。
そんなやり取りに、忍が小さく笑った。
「ねぇブレイザー、みんなの意見をまとめると――
現代日本の技術と異世界の文化を融合した“未来都市”ね。」
《解析完了。
提案内容:自動運転交通網、統合型複合都市核“セントラル・アーク”、
医療・教育・商業・居住を統合。
加えて自然循環ゾーン、無人農園、畜産・加工施設、娯楽区、鍛冶工房区を含む。》
ブレイザーの瞳が静かに輝く。
《この規模の構築には――およそ二十時間を要します。》
「二十時間か。思ったより早いな。」翔が感心したように言う。
《ドローン群五十機を展開し、同時多層建設を実施。
資材は内部再構成によって生成します。》
「よし、頼む。夢の街を作ろう。」翔が言った。
《了解。建設モード起動――ドローン展開開始。》
ブレイザーが手をかざす。
上空が光を帯び、五十機のドローンが無音で浮上した。
編隊を組んだそれらが空に光の線を描き、地上へと降下していく。
草原の一角が変化し、道路、橋、塔の骨格が現れ始めた。
《資材転送開始。都市形成プロセスを実行中。》
光が広がる。
空気が震え、街が少しずつ姿を現す。
それを見上げながら、忍が呟いた。
「本当に……作れるんだね、街を。」
「作るんじゃねぇ。」ガルドが肩を叩いた。
「“創る”んだ。神話だぜ、こりゃ。」
ヨアヒムが微笑む。「科学と魔法が、初めて一つになった瞬間ですね。」
《都市核“セントラル・アーク”形成中。進捗率三パーセント。》
「……いい街になるな。」翔が静かに呟いた。
《この世界に風が吹く限り、成長を続けるでしょう。》
ブレイザーが再び手を伸ばし、草原にゲートを開いた。
《構築が完了するまで、この空間は自動防御モードに入ります。
マスター、地上へ戻りますか?》
「ああ。王都に報告もしないといけないしな。」翔が頷く。
「建設は任せた、ブレイザー。」
《了解。アルカディア・ネクサス、建設モード維持。》
翔たちは光の門をくぐり、迷宮の空気に戻った。
地上へ向け、静かな通路を歩きながら、誰もが先ほどの景色を思い返していた。
「……本当にあんな街ができるのかしら。」忍が呟く。
「できるさ。」翔が笑う。
「ブレイザーを信じろ。あいつはもう、AIじゃなくて――仲間だ。」
ガルドが笑う。「仲間っていうか、もはや神だな。」
ヨアヒムがうなずいた。「彼の作る街は、きっと未来の礎になる。」
その時だった。
ブレイザーの声が、緊迫した調子で響く。
《――緊急事態発生。》
全員が立ち止まる。
「ブレイザー? どうした?」翔が問い返す。
《迷宮都市エルグラードの地表構造に異常反応。
地盤崩落、魔力振動の波形を確認。
……都市全域が、崩壊を始めています。》
「なっ……崩壊!?」忍が息を呑む。
《震源は塔の中心部。封印層が解放されつつあります。》
「くそっ、嫌な予感が的中したか……!」翔が顔を上げた。
《至急戻りましょう。王都にも影響が出る可能性があります。
転送ゲートを再展開します!》
足元に光の輪が広がり、風が渦を巻いた。
翔は拳を握る。
「……わかった。急ぐぞ、みんな!」
光が弾け、全員の姿が白に飲み込まれた。
その直後、地上では――
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