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第7章 迷宮都市編
崩壊する迷宮都市
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――転送ゲートの光が弾けた。
翔たちは、再び地上へ戻っていた。
だが、目の前にあったのは、もはや“都市”ではなかった。
大地が裂け、建物が沈み、地鳴りが休みなく続く。
空は灰と土埃で覆われ、太陽の光が斑に差し込む。
耳の奥で何かが軋むような音がして、鼓膜が痛い。
《――緊急事態発生。地表構造に崩壊現象を確認。塔の中心部より異常魔力の放出を検知しました。》
「ブレイザー!? まさか……!」翔が声を上げた。
《風の核石が台座から外れました。封印層、完全に解放。》
塔の中心が眩く光り、次の瞬間、爆風のような風が街全体を吹き飛ばした。
砂塵の中で、逃げ惑う人々の叫びが響く。
「子どもがっ! 誰か、手を――!」
「助けて! 家が潰れる!」
「聖堂へ! 聖堂の地下なら――!」
人々の声が重なり、悲鳴が風に飲み込まれていく。
翔は剣を抜いた。
「ブレイザー、避難を急げ!」
《了解。アルカディア・ネクサスを展開。ドローン二十五機を救出任務に転送します。》
空が一瞬だけ青白く光った。
ブレイザーのドローン群が、音もなく飛び出していく。
瓦礫の隙間から子供を引き上げ、母親と一緒に光のゲートへ導く。
光の帯が夜空のような空間へ伸び、人々を包み込んで消えていく。
街の端で泣き叫ぶ声が聞こえた。
「こっちにも人がいる! 屋根が崩れるぞ!」
ガルドが叫び、ヨアヒムが治癒魔法で瓦礫を吹き飛ばす。
《第一搬送完了。残存人口、推定四万八千。収容可能範囲内です。》
「ギリギリ間に合うな……!」翔が歯を食いしばる。
《ただし、塔の上部より異常魔力反応が拡大中。》
ブレイザーの声が途切れると、空が鳴った。
風の柱が雲を突き抜け、青白い閃光が走る。
その中から――巨大な翼が姿を現した。
ガルーダだった。
その翼は都市ひとつを覆うほど広く、羽ばたくたびに雷鳴が走る。
《魔力反応を照合。以前、ダンジョン最下層で交戦した“ガルダ・コア・アルファ”と一致。出力はその二十倍。》
「……分身体じゃなくて、本体かよ!」翔が叫ぶ。
塔の上に立つ影が、ゆっくりとこちらを見た。
眼孔が紅く光り、風そのものが獣のように唸り始める。
「ブレイザー! 迎撃態勢を取れ!」
《戦闘ドローン六十機、即応可能。迎撃を開始します!》
空が再び閃光で満たされる。
六十の光が一斉に放たれ、ガルーダへ向かって飛ぶ。
だが、風の壁がそれを弾いた。
ドローンの光線が曲がり、軌道を逸れて地上を焼く。
《攻撃が通りません! 風圧と魔力障壁が干渉しています!》
「くそっ、あの分体とは格が違う……!」
翔が地面を蹴り、暴風の中を走る。
風の刃が地面を削り、背後で瓦礫が爆ぜる。
その瞬間、忍の声が響いた。
「翔、右だっ!」
翔は反射的に体を捻る――だが避けきれず。
空気が裂ける音と同時に、脇腹に焼けるような痛み。
熱いものが流れ、視界が赤く染まった。
翔の体が後方へ吹き飛ぶ。
「翔っ!!」忍が駆け寄る。
翔は苦痛に顔を歪めながらも、かすかに笑った。
「……お前、無事か……」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「……生きろよ……忍……」
その声と同時に、光が翔を包み込む。
《マスター重傷! メディカルポッドへ転送します!》
翔の姿が消え、忍の周囲に静寂が落ちた。
次の瞬間、風が逆巻く。
忍の髪が宙に浮かび、目が赤く光る。
「……翔を……傷つけた……」
声が震え、空気が焦げる。
《忍様、魔力暴走の兆候。生命力の変換が始まっています!》
「止めないで……止めたら……私が壊れる!」
ガルドが叫ぶ。「忍! 落ち着け!」
「落ち着けるわけないでしょっ!」
彼女の周囲に雷光が走った。
《王都防衛隊より通信。ドローン十五機を転送可能。転送を開始します。》
上空に光の柱が立ち、十五の新たな影が現れた。
《援軍到着。総戦力七十五機!》
ブレイザーの報告が響く。
だが、それでもガルーダの巨体は揺るがない。
《避難搬送、残り三分。――忍様、あと少し時間を稼げれば!》
「なら、私がやるわ!」
忍が魔力をさらに放出する。
だが、ブレイザーの声が重なる。
《警告。現在の出力では忍様の生命活動が三分以内に停止します。》
「翔が死にかけてるのに、私だけ生き延びるなんてできない!」
忍が叫んだ瞬間、風の核が赤く染まった。
その時、ブレイザーが別の報告を告げる。
《避難完了! 全住民、アルカディア・ネクサスに収容済み! ――これより、全戦闘ドローン一一〇機を攻撃に転用します!》
ブレイザーの声が震えを帯びていた。
「忍様、もう無理は――!」
「翔を傷つけたあの翼を焼き尽くすまで、私は止まらないっ!」
雷鳴が轟いた。
忍の全身が光に包まれる。
空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、風が吸い込まれていく。
「――雷槍(ライ・スピア)・オーバードライブッ!!!」
世界が白く塗りつぶされた。
百十機のドローンが同時に砲撃を開始し、雷の嵐がガルーダを飲み込む。
嵐の中心で、獣の咆哮が上がり、それが次第に途切れていった。
《敵性反応、急速低下。撃破を確認――!》
空気が静まり、風が止まる。
ガルーダの巨体が炎の中に崩れ落ちた。
焦げた匂いと土煙が漂い、遠くで建物が最後の悲鳴を上げる。
忍の体が揺らぎ、膝が崩れた。
地面に手をつき、肩で息をしている。
《忍様! 生命力が限界です!》
「……翔……見てた……? 勝ったよ……」
ガルドが駆け寄り、彼女を抱き留めた。
「おい、限界超えてんぞ!」
ヨアヒムが膝をつき、治癒魔法を施す。
「生命力がほとんど残っていない……!」
忍は薄く笑った。
「……翔に……怒られちゃうね……」
「怒られる前に戻ってこい!」ガルドが叫ぶ。
そのとき、空からブレイザー号が降りてきた。
機体の底部が光を放ち、風を鎮めるようにゆっくりと着地する。
《戦闘終了。避難完了を確認。全員の収容を開始します。》
崩れ落ちた都市を背に、ブレイザーのゲートが開く。
その光の中で、翔の胸元の“風の核石”が淡く輝いた。
まるで――彼の命そのものが、再び動き出そうとしているかのように。
翔たちは、再び地上へ戻っていた。
だが、目の前にあったのは、もはや“都市”ではなかった。
大地が裂け、建物が沈み、地鳴りが休みなく続く。
空は灰と土埃で覆われ、太陽の光が斑に差し込む。
耳の奥で何かが軋むような音がして、鼓膜が痛い。
《――緊急事態発生。地表構造に崩壊現象を確認。塔の中心部より異常魔力の放出を検知しました。》
「ブレイザー!? まさか……!」翔が声を上げた。
《風の核石が台座から外れました。封印層、完全に解放。》
塔の中心が眩く光り、次の瞬間、爆風のような風が街全体を吹き飛ばした。
砂塵の中で、逃げ惑う人々の叫びが響く。
「子どもがっ! 誰か、手を――!」
「助けて! 家が潰れる!」
「聖堂へ! 聖堂の地下なら――!」
人々の声が重なり、悲鳴が風に飲み込まれていく。
翔は剣を抜いた。
「ブレイザー、避難を急げ!」
《了解。アルカディア・ネクサスを展開。ドローン二十五機を救出任務に転送します。》
空が一瞬だけ青白く光った。
ブレイザーのドローン群が、音もなく飛び出していく。
瓦礫の隙間から子供を引き上げ、母親と一緒に光のゲートへ導く。
光の帯が夜空のような空間へ伸び、人々を包み込んで消えていく。
街の端で泣き叫ぶ声が聞こえた。
「こっちにも人がいる! 屋根が崩れるぞ!」
ガルドが叫び、ヨアヒムが治癒魔法で瓦礫を吹き飛ばす。
《第一搬送完了。残存人口、推定四万八千。収容可能範囲内です。》
「ギリギリ間に合うな……!」翔が歯を食いしばる。
《ただし、塔の上部より異常魔力反応が拡大中。》
ブレイザーの声が途切れると、空が鳴った。
風の柱が雲を突き抜け、青白い閃光が走る。
その中から――巨大な翼が姿を現した。
ガルーダだった。
その翼は都市ひとつを覆うほど広く、羽ばたくたびに雷鳴が走る。
《魔力反応を照合。以前、ダンジョン最下層で交戦した“ガルダ・コア・アルファ”と一致。出力はその二十倍。》
「……分身体じゃなくて、本体かよ!」翔が叫ぶ。
塔の上に立つ影が、ゆっくりとこちらを見た。
眼孔が紅く光り、風そのものが獣のように唸り始める。
「ブレイザー! 迎撃態勢を取れ!」
《戦闘ドローン六十機、即応可能。迎撃を開始します!》
空が再び閃光で満たされる。
六十の光が一斉に放たれ、ガルーダへ向かって飛ぶ。
だが、風の壁がそれを弾いた。
ドローンの光線が曲がり、軌道を逸れて地上を焼く。
《攻撃が通りません! 風圧と魔力障壁が干渉しています!》
「くそっ、あの分体とは格が違う……!」
翔が地面を蹴り、暴風の中を走る。
風の刃が地面を削り、背後で瓦礫が爆ぜる。
その瞬間、忍の声が響いた。
「翔、右だっ!」
翔は反射的に体を捻る――だが避けきれず。
空気が裂ける音と同時に、脇腹に焼けるような痛み。
熱いものが流れ、視界が赤く染まった。
翔の体が後方へ吹き飛ぶ。
「翔っ!!」忍が駆け寄る。
翔は苦痛に顔を歪めながらも、かすかに笑った。
「……お前、無事か……」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「……生きろよ……忍……」
その声と同時に、光が翔を包み込む。
《マスター重傷! メディカルポッドへ転送します!》
翔の姿が消え、忍の周囲に静寂が落ちた。
次の瞬間、風が逆巻く。
忍の髪が宙に浮かび、目が赤く光る。
「……翔を……傷つけた……」
声が震え、空気が焦げる。
《忍様、魔力暴走の兆候。生命力の変換が始まっています!》
「止めないで……止めたら……私が壊れる!」
ガルドが叫ぶ。「忍! 落ち着け!」
「落ち着けるわけないでしょっ!」
彼女の周囲に雷光が走った。
《王都防衛隊より通信。ドローン十五機を転送可能。転送を開始します。》
上空に光の柱が立ち、十五の新たな影が現れた。
《援軍到着。総戦力七十五機!》
ブレイザーの報告が響く。
だが、それでもガルーダの巨体は揺るがない。
《避難搬送、残り三分。――忍様、あと少し時間を稼げれば!》
「なら、私がやるわ!」
忍が魔力をさらに放出する。
だが、ブレイザーの声が重なる。
《警告。現在の出力では忍様の生命活動が三分以内に停止します。》
「翔が死にかけてるのに、私だけ生き延びるなんてできない!」
忍が叫んだ瞬間、風の核が赤く染まった。
その時、ブレイザーが別の報告を告げる。
《避難完了! 全住民、アルカディア・ネクサスに収容済み! ――これより、全戦闘ドローン一一〇機を攻撃に転用します!》
ブレイザーの声が震えを帯びていた。
「忍様、もう無理は――!」
「翔を傷つけたあの翼を焼き尽くすまで、私は止まらないっ!」
雷鳴が轟いた。
忍の全身が光に包まれる。
空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、風が吸い込まれていく。
「――雷槍(ライ・スピア)・オーバードライブッ!!!」
世界が白く塗りつぶされた。
百十機のドローンが同時に砲撃を開始し、雷の嵐がガルーダを飲み込む。
嵐の中心で、獣の咆哮が上がり、それが次第に途切れていった。
《敵性反応、急速低下。撃破を確認――!》
空気が静まり、風が止まる。
ガルーダの巨体が炎の中に崩れ落ちた。
焦げた匂いと土煙が漂い、遠くで建物が最後の悲鳴を上げる。
忍の体が揺らぎ、膝が崩れた。
地面に手をつき、肩で息をしている。
《忍様! 生命力が限界です!》
「……翔……見てた……? 勝ったよ……」
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「おい、限界超えてんぞ!」
ヨアヒムが膝をつき、治癒魔法を施す。
「生命力がほとんど残っていない……!」
忍は薄く笑った。
「……翔に……怒られちゃうね……」
「怒られる前に戻ってこい!」ガルドが叫ぶ。
そのとき、空からブレイザー号が降りてきた。
機体の底部が光を放ち、風を鎮めるようにゆっくりと着地する。
《戦闘終了。避難完了を確認。全員の収容を開始します。》
崩れ落ちた都市を背に、ブレイザーのゲートが開く。
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