【休載中】転生RPG世界に欠けていたのはBGMだった 奏でてみたら超絶支援効果発動、いつしか神曲の魔奏士とか呼ばれてみた

カズサノスケ

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第2話 BGM使いの魔奏士とやらを始めてみた

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 その日から何日間かが過ぎた。何回も魔物と戦ってみて気づいたのはこの前みたい妙に強くなっている時、そうでない時があった事。で、強くなった時に何か特別な事をやってないだろうか?

「そうか! 通常バトルBGMだ!!」

 ゲームの時に感じていた胸の奥底から湧いてくる勇気とか力みたいなもの。鼻歌BGMをやった時、それと同じ様な感覚があったかもしれない。この世界ではそれがハッキりと戦う力として付与されるという事か?

 そう言えば何かのインタビューで作曲を担当したウエスギノブイチが言ってたな。『全てのBGMは私から冒険に挑むプレイヤーへの贈り物、応援ソングです』と。まさしく、この世界では先生の想いが形になる。ウエスギノブイチ大先生様、ずっと呼び捨てだったけど今日からそう呼んで感謝だ。

 この世界は本来あったはずのBGMが欠けた世界。つまり、この世界に生きている人達は本来出せるはずの力を出せないまま生きている。人間を脅かす巨大な力に抗って戦っている人達もいる。俺はその欠けたものを取り戻す事が出来る、みたいだ。

 そう言えば、ここがFクエの世界だと気付いてからちょっと妙だなと思っていた事。ゲームの時だと何とか魔物達の侵攻に耐えていたはずの国がいくつか陥落していた。BGMが喪われている事により人間達が真の力を発揮出来ず持ち堪えられなかったという事だろうか?


 BGMの効果に気付いてから俺はそもそも存在したはずのあらゆるBGMを思い出す事に多くの時間を割いて過ごした。しがない戦士稼業はお休み、それだけの価値があるはず。

 そして、とてつもなく試してみたいものがあった。何か試したいプレイがある時、まずは安全策を採って最弱の魔物でやってみるのはプレイヤーの常識みたいなもの。今回はライトスライム君でいってみるとする。

「♪テケテケテー ドラリー ドラリロリロ~~」

 真のラスボス『混帝ケルヌンノス』の時にだけ流れる専用バトルBGM【光と闇の狭間にて】。序盤はおぞましい感じで始まるが途中から曲の流れをぶった切る様な勇壮なメロディが入り込む様になる。俺の解釈だと闇で覆われた世界をぶち破ろうと差し込んでは弾かれ、差し込んでは弾かれるが次第に輝きを増していく光を表しているんじゃないか?と。

「ぐっ……。だ、だめだ……、全部持っていかれたっ……」

 鼻歌を始めてから5秒も立たない内に全身からチカラが抜けていく感じがわかった。この感じは魔法力の消費だ。傭兵ギルドに入る際、自分の戦闘スタイルを確立していく参考とする為に調べたら大して容量のないのがわかった魔法力。それが一気に尽きた。

 そう言えば……。鼻歌BGMをやった後に戦うといつもより少しばかり疲れた感じがしていた。強化された身体で戦っているから少し負荷がかかり過ぎているのかな?程度に思っていたが違う。BGMを使うと魔法力を消費していたからだ。

 通常バトルBGMじゃなくラスボス戦BGMを使えば一気に化け物級の力を得られるかと思ったがそうもいかない様だ。全てを振り絞る最後の戦い専用とあって魔法力の消費量も半端ない。取り敢えず試してよかった、暫くは分相応に通常バトルBGMを使っていく事になりそうだ。

「ギュギュギュ~~!」

 しばらく俺の様子を伺っている様だったライトスライムが飛び掛かってきた。はいはい、君の存在を忘れたわけじゃないよ。君が実験相手に選ばれたのはこういう副作用的なものが起きてしまった場合に備えての事。

 ヘトヘトではあるがグーパンチ1発で撃墜。ブジュル、そんな音を残してライトスライムは潰れた。

「この潰れ方だといつも通りか。ほんのちょっとBGMのさわりをやったくらいじゃ強化効果は付かないって事かな」

 その検証も兼ねた一撃だったが結果はそういう事に。取り敢えず、当面の俺の目標はちゃんとラスボス戦BGMを奏でられるほどに魔法力を高めていくのに尽きる。


 BGMの使い方というものがわかり、少しは扱いに慣れた頃。俺は剣を置く事にした。新たな武器として選んだのはティンホイッスルという縦笛。BGMはただの鼻歌なんかよりちゃんと楽器で演奏した方が効果は高まるらしい。

 超高級なバイオリンとかピアノとかでやった方が更に高い効果を期待出来るかもしれないが色々と事情もある。まず、今の俺に高級な楽器を買うだけの金はない……。それに、幼少期からそれらを習う様な御上品育ち方をしていないから仮に手元にあっても演奏出来ない。あと、ピアノは持ち運べないから実戦的じゃない、とか。

 で、この世界に来る前の俺が何とか出来た楽器と言えば縦笛のリコーダー。義務教育、音楽の授業に感謝だ。お陰で上手か下手かは別としてティンホイッスルを演奏出来るまでになるのはそれなりに早かった。


 さて、俺はずっと通っていた傭兵ギルドの受付に来ていた。

「登録情報の変更手続きですね、職業はいかがなされますか?」

 受付のお姉さんはいつもの様にうつむいたままで紙の束をめくりながらそう尋ねてきた。クエストの依頼書やら魔物の討伐依頼、さっさと処理しなければ明日には更に厚みを増していそうな書類の山の相手をするのに忙しいらしい。

「魔奏士でお願いします」

「はい? まそうし?」

 思わず手を止めて顔を上げてズレ気味の眼鏡の位置を直しているお姉さんと初めて目が合った。

「聞いた事ありませんが、どういったものを得意とされるので?」

「俺が考えた全く新しい支援系の職業です。魔力を込めた音楽で冒険者をサポートするんです」

「はぁ? よっ、よくわかりませんがあなた様がそれでよければ、その『まそうし』とやらで登録させてもらいますね」

 こうして、俺だけの職業『魔奏士』はじめてみた。
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