社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第7話 公然のイチャイチャと、深まる絆

 医務室の改革は、驚くべき速さで進んでいた。
 美月の導入した衛生管理システム――ベッドの間隔を空け、器具を煮沸消毒し、負傷者ごとに布を使い分けるといった、この世界では革新的すぎる手法――により、化膿して命を落とす兵士の数は、劇的に減少した。
 いつしか、彼女は兵士たちから、畏敬と親しみを込めて「キャメロットの天使」と呼ばれるようになっていた。

 そして、その天使のそばには、いつも、甲斐甲斐しく(そして、少し邪魔なくらいに)付き従う、太陽の騎士の姿があった。

「ミツキ! 重いものは、全部、俺が持つ! お前は、指一本、動かすな!」
「ガウェインさん、これは薬草です。全然、重くないんですけど……」
「ダメだ! ミツキは、か弱いんだから!」

 そう言うと、彼は美月から薬草の籠をひったくり、誇らしげに胸を張る。その大型犬のような過保護ぶりに、医務室のあちこちから、くすくすと笑い声が漏れた。

 ガウェインの溺愛ぶりは、とどまるところを知らなかった。
 美月が棚の上にある薬瓶に手を伸ばそうとすれば、背後から、彼女をすっぽりと包み込むようにして、彼がひょいと取ってくれる。そのたびに、彼の筋肉質な胸板が背中に当たり、美月の心臓は、仕事に集中できないほど、大きく跳ねるのだった。

「ミツキ、疲れただろ? ちょっと、休憩だ」
 そう言うと、彼は、当然のように、床にどっかりと座り込み、自分の膝をぽんぽんと叩いた。

「ほら、膝枕してやる」
「結構です! みんな、見てますから!」

 美月が真っ赤になって断っても、彼は「遠慮するな!」と、全く気にする様子がない。
 騎士たちにからかわれても、「ミツキは、俺の特別な姫君だ! 文句あるか!」と公言してはばからず、美月をさらなる羞恥の渦へと叩き落とすのが、もはや日常の風景となっていた。

 だが、そんな彼のストレートすぎる愛情表現が、孤独だった美月の心を、急速に溶かしていく。
 彼がそばにいるだけで、安心できる。
 彼が笑うだけで、世界が、明るくなる。
 現代社会で、常に気を張り、完璧なプロジェクトマネージャーであり続けようとしていた彼女にとって、ガウェインの、何の裏表もない純粋な好意は、何よりの癒しだった。

 その日の午後、アーサー王が、満足げな顔で医務室を視察に訪れた。

「うむ! ミツキ、見事だ! 負傷兵の回復が早いと、城中、もっぱらの噂だぞ!」
「王様のお力添えあってこそです」

 美月が、貴婦人らしく優雅に微笑むと、王は、にやりと、悪戯っぽく笑った。

「それに、ガウェイン。お前も、最近は、やけに医務室に入り浸っているそうではないか。騎士の務めは、どうした?」
「はっ! 我が王よ! 俺は、ミツキの護衛という、最も重要な任務を遂行しております!」

 ガウェインが、大真面目な顔でそう答えると、王は、腹を抱えて、豪快に笑い出した。

「はっはっは! 面白い! お前たちを見ていると、全く飽きんな!」

 王が去った後、ガウェインは、少しだけ拗ねたように、美月に囁いた。

「……なあ、ミツキ。俺、お前の護衛、ちゃんと、できてるか?」
「ええ、もちろんです。ガウェインさんがいてくれると、すごく、心強いですよ」

 美月が、心からの気持ちを伝えると、彼の顔が、ぱっと、太陽のように輝いた。
 そして、彼は、周りの目も気にせず、ぎゅっと、美月の体を、背後から抱きしめた。

「ミツキ……!」
「きゃっ! ガウェインさん、仕事中です!」

 その、あまりにも公然と繰り広げられる二人のやり取りを、廊下の影から、エルリックが、静かに、しかし、以前よりは、少しだけ和らいだ瞳で見つめていた。
 彼の隣には、いつの間にか、賢者マーリンが立っていた。

「ほほう。太陽の騎士も、異国の姫君の前では、ただの男よのう」
「……あの女、確かに、ただ者ではないようですな」

 エルリックの呟きに、マーリンは、意味深に、ふふっと笑った。
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