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第9話 私の騎士様と、戦場の指揮官
城壁の上から見下ろす戦場は、混沌そのものだった。
兵士たちは、闇雲に剣を振り、それぞれが孤立して戦っている。その動きは非効率的で、魔物の圧倒的な数の前に、じりじりと後退を余儀なくされていた。
(ダメだわ……これじゃ、ただの消耗戦。戦力を集中させ、効率的に敵を削らないと……!)
美月の頭脳が、プロジェクトマネージャーとしての、最適解を探し始める。
彼女は、傍らで必死に兵を鼓舞していた、衛兵隊長らしき男の肩を掴んだ。
「隊長さん! 指揮系統が乱れています! 私に、少しだけ、兵を動かす許可をください!」
「なっ、女が、何を……!」
戸惑う隊長に、美月は、有無を言わさぬ、力強い口調で告げた。
「敵は、光に怯み、影に潜むこちらの動きを捉えきれていません! 全軍を二手に分けます!」
彼女の、自信に満ちた声が、混乱する城壁の上に、凛と響いた。
「一手は、松明を掲げ、光の壁を作って、敵の注意を引きつけてください! そして、もう一手は、闇に紛れて、敵の側面を突くんです!」
それは、この世界の常識にはない、あまりにも大胆な作戦。
だが、彼女の瞳に宿る、揺るぎない確信と、絶望的な戦況が、隊長に決断を促した。
「……わかった! 姫君の策に、乗ろう!」
兵士たちの動きが、変わった。
美月の指示通り、光の壁が、魔物たちの進攻を食い止める。眩しい炎に目をくらまされた獣たちが、混乱して、雄叫びを上げた。
「今です! 側面部隊、一斉攻撃!」
その隙を、闇に潜んだもう一隊が見逃さない。横合いから突き出された無数の槍が、魔物たちの脇腹を、的確に貫いていく。
戦況は、明らかに、変わり始めていた。
「ミツキ……?」
地上で、苦しい戦いを続けていたガウェインが、その変化に気づき、城壁の上を見上げた。
そこにいたのは、いつもの、はにかみ屋の姫君ではない。
月光を背に受け、兵士たちに的確な指示を飛ばす、威風堂々とした、一人の、指揮官の姿だった。
その瞬間、ガウェインの役割も、変わった。
彼は、もはや、一人で戦う英雄ではない。美月の作戦を、成功に導くための、最も重要な、剣となる。
彼は、光の壁を作る兵士たちの前に立つと、盾を構え、残った力を振り絞り、彼らを守ることに、徹した。
「ミツキの策は、俺が、絶対に、守り抜く!」
彼の獅子奮迅の働きで、防衛線は、鉄壁のものとなった。
やがて、東の空が、白み始める。夜明けの光が、地上を照らし始めたその時、残っていた魔物の群れは、怯えたように、森の奥へと退却していった。
「……勝ったぞ!」
「我々の、勝利だ!」
夜明けの光の中、兵士たちの、歓喜の声が、城壁にこだまする。
その、賞賛と、畏敬の視線は、全て、城壁の上に立つ、一人の異国の女性へと、注がれていた。
完全に疲弊しきったガウェインが、ふらつきながら、城壁の下まで歩み寄り、彼女を見上げた。
夜明けの光が、彼の金色の髪を、優しく照らす。少しずつ、彼の体に、力が戻ってくるのがわかった。
彼は、ありがとう、とも、すごいな、とも言わなかった。
ただ、その青い瞳を、どうしようもないほどの、愛おしさと、誇りと、そして、熱烈な愛情で潤ませて、黙って、両腕を広げた。
その意味を、美月は、瞬時に、理解した。
彼女は、駆け足で、城壁の階段を駆け下りると、歓声の上がる、戦場の真ん中で、ためらうことなく、彼の胸へと、飛び込んだ。
兵士たちの、どよめきと、祝福の口笛が、二人を包む。
「ミツキ……」
彼女を、強く、強く、抱きしめながら、ガウェインが、掠れた声で、囁いた。
「お前こそが、俺の、太陽だ」
兵士たちは、闇雲に剣を振り、それぞれが孤立して戦っている。その動きは非効率的で、魔物の圧倒的な数の前に、じりじりと後退を余儀なくされていた。
(ダメだわ……これじゃ、ただの消耗戦。戦力を集中させ、効率的に敵を削らないと……!)
美月の頭脳が、プロジェクトマネージャーとしての、最適解を探し始める。
彼女は、傍らで必死に兵を鼓舞していた、衛兵隊長らしき男の肩を掴んだ。
「隊長さん! 指揮系統が乱れています! 私に、少しだけ、兵を動かす許可をください!」
「なっ、女が、何を……!」
戸惑う隊長に、美月は、有無を言わさぬ、力強い口調で告げた。
「敵は、光に怯み、影に潜むこちらの動きを捉えきれていません! 全軍を二手に分けます!」
彼女の、自信に満ちた声が、混乱する城壁の上に、凛と響いた。
「一手は、松明を掲げ、光の壁を作って、敵の注意を引きつけてください! そして、もう一手は、闇に紛れて、敵の側面を突くんです!」
それは、この世界の常識にはない、あまりにも大胆な作戦。
だが、彼女の瞳に宿る、揺るぎない確信と、絶望的な戦況が、隊長に決断を促した。
「……わかった! 姫君の策に、乗ろう!」
兵士たちの動きが、変わった。
美月の指示通り、光の壁が、魔物たちの進攻を食い止める。眩しい炎に目をくらまされた獣たちが、混乱して、雄叫びを上げた。
「今です! 側面部隊、一斉攻撃!」
その隙を、闇に潜んだもう一隊が見逃さない。横合いから突き出された無数の槍が、魔物たちの脇腹を、的確に貫いていく。
戦況は、明らかに、変わり始めていた。
「ミツキ……?」
地上で、苦しい戦いを続けていたガウェインが、その変化に気づき、城壁の上を見上げた。
そこにいたのは、いつもの、はにかみ屋の姫君ではない。
月光を背に受け、兵士たちに的確な指示を飛ばす、威風堂々とした、一人の、指揮官の姿だった。
その瞬間、ガウェインの役割も、変わった。
彼は、もはや、一人で戦う英雄ではない。美月の作戦を、成功に導くための、最も重要な、剣となる。
彼は、光の壁を作る兵士たちの前に立つと、盾を構え、残った力を振り絞り、彼らを守ることに、徹した。
「ミツキの策は、俺が、絶対に、守り抜く!」
彼の獅子奮迅の働きで、防衛線は、鉄壁のものとなった。
やがて、東の空が、白み始める。夜明けの光が、地上を照らし始めたその時、残っていた魔物の群れは、怯えたように、森の奥へと退却していった。
「……勝ったぞ!」
「我々の、勝利だ!」
夜明けの光の中、兵士たちの、歓喜の声が、城壁にこだまする。
その、賞賛と、畏敬の視線は、全て、城壁の上に立つ、一人の異国の女性へと、注がれていた。
完全に疲弊しきったガウェインが、ふらつきながら、城壁の下まで歩み寄り、彼女を見上げた。
夜明けの光が、彼の金色の髪を、優しく照らす。少しずつ、彼の体に、力が戻ってくるのがわかった。
彼は、ありがとう、とも、すごいな、とも言わなかった。
ただ、その青い瞳を、どうしようもないほどの、愛おしさと、誇りと、そして、熱烈な愛情で潤ませて、黙って、両腕を広げた。
その意味を、美月は、瞬時に、理解した。
彼女は、駆け足で、城壁の階段を駆け下りると、歓声の上がる、戦場の真ん中で、ためらうことなく、彼の胸へと、飛び込んだ。
兵士たちの、どよめきと、祝福の口笛が、二人を包む。
「ミツキ……」
彼女を、強く、強く、抱きしめながら、ガウェインが、掠れた声で、囁いた。
「お前こそが、俺の、太陽だ」
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