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第11話 嫉妬という名の、甘い熱
ガウェインの穏やかな寝息が、静かな部屋に響いている。
美月は、自分の膝の上で無防備に眠る彼の顔を、飽きることなく、じっと見つめていた。
(……そっか。これが、恋)
プロジェクトのように、計画性も、論理性も、効率性もない。ただ、胸の奥が、じんわりと温かくなる、この感情。
現代で、仕事という鎧で心を固めていた彼女にとって、それは、あまりにも久しぶりで、甘い、心の疼きだった。
やがて、ガウェインが、んん、と小さく身じろぎをして、ゆっくりと目を開けた。
目が合った瞬間、彼は、大きな猫が伸びをするように、気持ちよさそうに笑う。
「……ミツキか。おはよう。お前の膝、最高の寝心地だな」
「もう、お昼過ぎですよ、私の騎士様」
つい、口からこぼれた、甘やかすような呼び名。美月は、はっと、自分の言葉に顔を赤らめた。
ガウェインは、そんな彼女の内心には全く気づかず、「そうか!腹が減ったな!ミツキ、一緒に飯を食いに行こう!」と、快活に笑った。
食堂へ向かう廊下を歩く。
いつものように、彼が、大きな手で、彼女の手を握っていた。
だが、美月にとっては、もう、「いつもの」ではなかった。触れ合う指先から伝わる彼の体温が、意識の全てを奪っていく。肩が軽く触れ合うだけで、心臓が、ドキドキと音を立てる。
(重症だわ、私……)
そんな彼女の戸惑いをよそに、ガウェインは、すれ違う騎士たちに、「どうだ、俺のミツキは!」と、得意げに彼女を自慢している。
その時だった。
廊下の向こうから、涼やかな佇まいの騎士が、歩いてきた。黒髪に、どこか憂いを帯びた、整った顔立ち。円卓の騎士が一人、ランスロットだった。
彼は、美月の前で、優雅に立ち止まると、礼儀正しく、一礼した。
「ミツキ殿。昨夜の戦でのご活躍、実に見事でした。つきましては、城の防衛について、貴女の知恵を拝借したく、少しお時間をいただけませんか?」
彼の、真摯で、丁寧な申し出。
美月は、側近として、純粋に嬉しく思った。
「はい、ランスロット様。もちろんです。私でお役に立てることがあれば……」
彼女が、そう答え終えるか、終えないかのうちに。
ガウェインが、ずいっと、美月とランスロットの間に、割り込んできた。さっきまでの、上機嫌な笑顔は、どこにもない。
「ランスロット! 城の防衛は、我々騎士の仕事だ! ミツキは、俺の側近で、今は、俺と飯を食いに行くので、忙しい! 貴様と話す時間など、ない!」
その、あまりにも子供っぽく、剥き出しの独占欲。
美月は、呆気にとられ、ランスロットは、面白そうに、片方の眉を上げた。
「おや、ガウェイン卿。私は、ただ、ミツキ殿の素晴らしい知恵を、キャメロットのために、お借りしたいだけなのだが?」
「ミツキの知恵は、まず、俺のために使うものだ! パートナーの俺を、差し置いて、話を進めるな!」
ぎゅっと、美月の手を、さらに強く握りしめるガウェイン。
美月は、その光景に、羞恥と、しかし、それ以上に、こみ上げてくる愛おしさで、いっぱいになった。
(この人は、本当に……!)
「ガウェインさん。ランスロット様は、お仕事の話をしているだけですよ。ね?」
彼女が、宥めるように、彼の腕を軽く叩く。
ガウェインは、ぷいっと、拗ねたように顔を背けたが、彼女の言葉には、逆らえないらしい。
「……ふん。だがな、ミツキは、俺のパートナーだ! 何かあれば、まず、この俺を通せ!」
その、大声での宣言に、ランスロットは、くすりと笑うと、「心得たよ、太陽の騎士殿」と、優雅に一礼して、去っていった。
二人きりになると、ガウェインは、まだ、むすっとした顔で、呟いた。
「……ちぇっ。ランスロットのやつ、いつも、涼しい顔をしやがって。あいつが、お前を見てるの、気に入らん」
その、あまりにも素直な嫉妬の言葉に、美月は、もう、笑いを堪えきれなかった。
「ふふっ。ガウェインさんって、本当に、大きなワンちゃんみたいですね」
すると、彼は、ぴたりと足を止め、真剣な顔で、美月を見つめた。
「犬ではない。俺は、お前の、騎士だ」
その、真っ直ぐな、青い瞳。
「そして、騎士は、自分の姫君を、他の男から、守るものだろうが」
その、あまりにも単純で、揺るぎない、愛の言葉。
自覚したばかりの、美月の恋心は、彼の、不器用で、熱烈な、この独占欲によって、さらに、深く、甘く、育っていくのだった。
美月は、自分の膝の上で無防備に眠る彼の顔を、飽きることなく、じっと見つめていた。
(……そっか。これが、恋)
プロジェクトのように、計画性も、論理性も、効率性もない。ただ、胸の奥が、じんわりと温かくなる、この感情。
現代で、仕事という鎧で心を固めていた彼女にとって、それは、あまりにも久しぶりで、甘い、心の疼きだった。
やがて、ガウェインが、んん、と小さく身じろぎをして、ゆっくりと目を開けた。
目が合った瞬間、彼は、大きな猫が伸びをするように、気持ちよさそうに笑う。
「……ミツキか。おはよう。お前の膝、最高の寝心地だな」
「もう、お昼過ぎですよ、私の騎士様」
つい、口からこぼれた、甘やかすような呼び名。美月は、はっと、自分の言葉に顔を赤らめた。
ガウェインは、そんな彼女の内心には全く気づかず、「そうか!腹が減ったな!ミツキ、一緒に飯を食いに行こう!」と、快活に笑った。
食堂へ向かう廊下を歩く。
いつものように、彼が、大きな手で、彼女の手を握っていた。
だが、美月にとっては、もう、「いつもの」ではなかった。触れ合う指先から伝わる彼の体温が、意識の全てを奪っていく。肩が軽く触れ合うだけで、心臓が、ドキドキと音を立てる。
(重症だわ、私……)
そんな彼女の戸惑いをよそに、ガウェインは、すれ違う騎士たちに、「どうだ、俺のミツキは!」と、得意げに彼女を自慢している。
その時だった。
廊下の向こうから、涼やかな佇まいの騎士が、歩いてきた。黒髪に、どこか憂いを帯びた、整った顔立ち。円卓の騎士が一人、ランスロットだった。
彼は、美月の前で、優雅に立ち止まると、礼儀正しく、一礼した。
「ミツキ殿。昨夜の戦でのご活躍、実に見事でした。つきましては、城の防衛について、貴女の知恵を拝借したく、少しお時間をいただけませんか?」
彼の、真摯で、丁寧な申し出。
美月は、側近として、純粋に嬉しく思った。
「はい、ランスロット様。もちろんです。私でお役に立てることがあれば……」
彼女が、そう答え終えるか、終えないかのうちに。
ガウェインが、ずいっと、美月とランスロットの間に、割り込んできた。さっきまでの、上機嫌な笑顔は、どこにもない。
「ランスロット! 城の防衛は、我々騎士の仕事だ! ミツキは、俺の側近で、今は、俺と飯を食いに行くので、忙しい! 貴様と話す時間など、ない!」
その、あまりにも子供っぽく、剥き出しの独占欲。
美月は、呆気にとられ、ランスロットは、面白そうに、片方の眉を上げた。
「おや、ガウェイン卿。私は、ただ、ミツキ殿の素晴らしい知恵を、キャメロットのために、お借りしたいだけなのだが?」
「ミツキの知恵は、まず、俺のために使うものだ! パートナーの俺を、差し置いて、話を進めるな!」
ぎゅっと、美月の手を、さらに強く握りしめるガウェイン。
美月は、その光景に、羞恥と、しかし、それ以上に、こみ上げてくる愛おしさで、いっぱいになった。
(この人は、本当に……!)
「ガウェインさん。ランスロット様は、お仕事の話をしているだけですよ。ね?」
彼女が、宥めるように、彼の腕を軽く叩く。
ガウェインは、ぷいっと、拗ねたように顔を背けたが、彼女の言葉には、逆らえないらしい。
「……ふん。だがな、ミツキは、俺のパートナーだ! 何かあれば、まず、この俺を通せ!」
その、大声での宣言に、ランスロットは、くすりと笑うと、「心得たよ、太陽の騎士殿」と、優雅に一礼して、去っていった。
二人きりになると、ガウェインは、まだ、むすっとした顔で、呟いた。
「……ちぇっ。ランスロットのやつ、いつも、涼しい顔をしやがって。あいつが、お前を見てるの、気に入らん」
その、あまりにも素直な嫉妬の言葉に、美月は、もう、笑いを堪えきれなかった。
「ふふっ。ガウェインさんって、本当に、大きなワンちゃんみたいですね」
すると、彼は、ぴたりと足を止め、真剣な顔で、美月を見つめた。
「犬ではない。俺は、お前の、騎士だ」
その、真っ直ぐな、青い瞳。
「そして、騎士は、自分の姫君を、他の男から、守るものだろうが」
その、あまりにも単純で、揺るぎない、愛の言葉。
自覚したばかりの、美月の恋心は、彼の、不器用で、熱烈な、この独占欲によって、さらに、深く、甘く、育っていくのだった。
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