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第12話 手を繋ぐ、騎士様の言い訳
翌朝、美月の部屋の扉は、もはやノックの音ではなく、「ミツキ! 朝だぞ、迎えに来た!」という、太陽のように明るい声によって開かれるのが、すっかり当たり前になっていた。
「おはようございます、私の騎士様。今日も、朝から元気ですね」
美月が、少しだけからかうように言うと、ガウェインは、にっと笑って、当然のように、彼女の手を取った。
「当たり前だ! ミツキの護衛は、俺の、最も重要な任務だからな!」
その大きな手は、温かく、力強い。
すっかり、この感触に慣れてしまった自分がいることに、美月は気づいていた。
「医務室は、この廊下の突き当りですよ? ここで、悪い虫がつく心配は、あまりないと思うのですが」
彼女が、悪戯っぽく、上目遣いで言うと、ガウェインは、大真面目な顔で、首を横に振った。
「油断大敵だ! ランスロットのような、すました顔の奴が、いつ、どの角から現れるか、分からんからな!」
その、あまりにも真剣な物言いに、美月は、思わず、噴き出してしまった。
(これは、彼の、騎士としての論理なのね……。子供っぽくて、馬鹿みたいで、でも……)
彼女は、握られた手に、そっと、力を込めた。
(……でも、この温かさは、嫌いじゃない)
二人が、手を繋いで廊下を歩く姿は、もはや、城の日常風景だった。
すれ違う騎士たちは、咎めるどころか、ニヤニヤと笑いながら、敬礼と共に、親指を立てて見せる。
そのたびに、ガウェインは、まるで王に褒められたかのように、誇らしげに胸を張り、美月は、羞恥心で、俯いてしまうのだった。
だが、その開けっ広げで、単純明快な愛情表現は、常に人の顔色を窺い、複雑な人間関係の中で生きてきた美月にとって、不思議な解放感を与えてくれた。
医務室に着いても、彼は、なかなか、手を離そうとしない。
美月が、薬草をすり潰したり、負傷兵の包帯を替えたり、どうしても両手が必要な時だけ、名残惜しそうに、しぶしぶ、手を離す。
そして、彼女の手が空いた瞬間を、見計らったかのように、再び、その手を、捕まえるのだ。
「ミツキ、これ、読むんだろ? 俺が持っててやる」
美月が、カルテを片手に、薬草を棚から下ろそうとしていると、ガウェインが、ひょいと、そのカルテを取り上げた。片手は、美月と繋がれたまま。もう片方の手で、彼女が見やすいように、カルテを広げてくれる。
その、不器用で、でも、一生懸命なサポートに、美月は、自然と、笑みがこぼれた。
「ありがとうございます、私の騎士様。助かります」
その日の午後。
仕事の合間に、二人は、医務室の隅にある、小さなベンチで、休憩していた。もちろん、手は、繋がれたままだ。
「どうだ、ミツキ」と、ガウェインが、得意げに言った。
「こうして、俺が、ずっと手を繋いでいれば、お前は、つまづいて転ぶこともないし、変な男に、声をかけられる心配もない。完璧な、護衛だろう?」
その、完璧な計画を思いついたとでも言いたげな、自信満々の顔。
美月は、繋がれた自分たちの手と、彼の、太陽みたいな笑顔を、交互に見つめた。
その、あまりにも純粋で、揺るぎない、愛情の形。
彼女は、もう、からかうのをやめた。
そして、彼の大きな手を、ぎゅっと、握り返すと、心の底からの、優しい笑顔で、言った。
「はい。完璧です」
その、素直な肯定の言葉に、ガウェインの顔が、ぱあっと、これ以上ないくらい、幸せそうに輝いた。
(手を繋ぐ、理由……)
美月は、彼の肩に、そっと、頭を預けた。
(私のいた世界では、みんな、手を離すための、理由ばかりを、探していた気がする)
(でも、この人は、手を繋ぎ続けるための、理由を、一生懸mányで作ってくれる)
それこそが、何よりも、愛されている証拠なのかもしれない。
美月は、もう、自分の気持ちを、分析するのをやめた。ただ、この、温かくて、少しだけ馬鹿で、どうしようもなく愛おしい、騎士様の隣で、この幸せを、感じていよう。そう、思った。
「おはようございます、私の騎士様。今日も、朝から元気ですね」
美月が、少しだけからかうように言うと、ガウェインは、にっと笑って、当然のように、彼女の手を取った。
「当たり前だ! ミツキの護衛は、俺の、最も重要な任務だからな!」
その大きな手は、温かく、力強い。
すっかり、この感触に慣れてしまった自分がいることに、美月は気づいていた。
「医務室は、この廊下の突き当りですよ? ここで、悪い虫がつく心配は、あまりないと思うのですが」
彼女が、悪戯っぽく、上目遣いで言うと、ガウェインは、大真面目な顔で、首を横に振った。
「油断大敵だ! ランスロットのような、すました顔の奴が、いつ、どの角から現れるか、分からんからな!」
その、あまりにも真剣な物言いに、美月は、思わず、噴き出してしまった。
(これは、彼の、騎士としての論理なのね……。子供っぽくて、馬鹿みたいで、でも……)
彼女は、握られた手に、そっと、力を込めた。
(……でも、この温かさは、嫌いじゃない)
二人が、手を繋いで廊下を歩く姿は、もはや、城の日常風景だった。
すれ違う騎士たちは、咎めるどころか、ニヤニヤと笑いながら、敬礼と共に、親指を立てて見せる。
そのたびに、ガウェインは、まるで王に褒められたかのように、誇らしげに胸を張り、美月は、羞恥心で、俯いてしまうのだった。
だが、その開けっ広げで、単純明快な愛情表現は、常に人の顔色を窺い、複雑な人間関係の中で生きてきた美月にとって、不思議な解放感を与えてくれた。
医務室に着いても、彼は、なかなか、手を離そうとしない。
美月が、薬草をすり潰したり、負傷兵の包帯を替えたり、どうしても両手が必要な時だけ、名残惜しそうに、しぶしぶ、手を離す。
そして、彼女の手が空いた瞬間を、見計らったかのように、再び、その手を、捕まえるのだ。
「ミツキ、これ、読むんだろ? 俺が持っててやる」
美月が、カルテを片手に、薬草を棚から下ろそうとしていると、ガウェインが、ひょいと、そのカルテを取り上げた。片手は、美月と繋がれたまま。もう片方の手で、彼女が見やすいように、カルテを広げてくれる。
その、不器用で、でも、一生懸命なサポートに、美月は、自然と、笑みがこぼれた。
「ありがとうございます、私の騎士様。助かります」
その日の午後。
仕事の合間に、二人は、医務室の隅にある、小さなベンチで、休憩していた。もちろん、手は、繋がれたままだ。
「どうだ、ミツキ」と、ガウェインが、得意げに言った。
「こうして、俺が、ずっと手を繋いでいれば、お前は、つまづいて転ぶこともないし、変な男に、声をかけられる心配もない。完璧な、護衛だろう?」
その、完璧な計画を思いついたとでも言いたげな、自信満々の顔。
美月は、繋がれた自分たちの手と、彼の、太陽みたいな笑顔を、交互に見つめた。
その、あまりにも純粋で、揺るぎない、愛情の形。
彼女は、もう、からかうのをやめた。
そして、彼の大きな手を、ぎゅっと、握り返すと、心の底からの、優しい笑顔で、言った。
「はい。完璧です」
その、素直な肯定の言葉に、ガウェインの顔が、ぱあっと、これ以上ないくらい、幸せそうに輝いた。
(手を繋ぐ、理由……)
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(私のいた世界では、みんな、手を離すための、理由ばかりを、探していた気がする)
(でも、この人は、手を繋ぎ続けるための、理由を、一生懸mányで作ってくれる)
それこそが、何よりも、愛されている証拠なのかもしれない。
美月は、もう、自分の気持ちを、分析するのをやめた。ただ、この、温かくて、少しだけ馬鹿で、どうしようもなく愛おしい、騎士様の隣で、この幸せを、感じていよう。そう、思った。
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