社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第13話 王妃様と、初めての恋バナ

 キャメロットでの生活は、驚くほど、穏やかだった。
 美月の心は、ガウェインという、太陽のように温かくて、少しだけ過保護な騎士様によって、すっかり満たされている。

 その日の午後、医務室での仕事が一段落し、美月は、気分転換に、城の美しい庭園を散策していた。色とりどりの薔薇が咲き誇る、甘い香りに満ちた場所だ。

「あなたが、噂のミツキちゃんね?」

 鈴を転がすような、優雅な声に、振り返る。
 そこに立っていたのは、陽光を浴びて、金色のウェーブヘアをきらきらと輝かせている、絶世の美女だった。宝石を散りばめた髪飾り、体に沿うラインが美しい、エメラルドグリーンのドレス。その人は、アーサー王の妃、グィネヴィアだった。

 美月は、慌てて、貴婦人らしい、優雅なカーテシーを試みた。
「はじめまして、王妃様。佐藤美月と、申します」

 すると、グィネヴィアは、くすくすと、楽しそうに笑った。
「まあ、堅苦しいのは、なしよ。私のことは、グィネヴィア、って呼んで。さあ、こちらへ来て、少し、お話ししましょう?」

 その、気さくで、姉のような親しみやすさに、美月の緊張は、自然と解けていく。
 薔薇のアーチの下にある、白いベンチに、二人で並んで腰を下ろした。

「ミツキちゃん、城の皆が、あなたの噂で持ちきりよ。聡明で、心優しくて、まるで、舞い降りた天使のようだって」
 そして、彼女は、悪戯っぽく、エメラルドグリーンの瞳を輝かせた。

「それから……。私たちの、あの太陽の騎士様が、すっかり、あなたの影になってしまった、っていう噂もね」
「!」

 美月の顔が、カッと、熱くなる。

「あ、いえ、王妃様……。ガウェインさんは、その、少し、過保護なだけで……」
「『護衛』と称して、一日中、手を繋いでいるのでしょう? 本当に、微笑ましいわ」

 その、あまりにも的確な指摘に、美月は、もう、返す言葉もなかった。
 グィネヴィアは、そんな彼女の手を、そっと、優しく握った。

「ガウェインは、昔から、単純で、裏表のない人。でも、あんな風に、誰か一人の女性に、夢中になっている姿は、私も、初めて見たわ」
 その言葉は、彼らの関係が、いかに特別であるかを、優しく、肯定してくれていた。

 グィネヴィアの、穏やかで、全てを見透かすような瞳に見つめられて、美月は、ぽつり、と、自分の胸の内を、打ち明けていた。

「……私、こういう気持ちになるの、初めてで。どうしたらいいか、分からなくて……」
「恋とは、そういうものよ、ミツキちゃん」

 グィネヴィアは、慈しむように、微笑んだ。

「彼の笑顔を見るだけで、世界が輝いて見えたり。彼の手の温もりが、いつまでも、心に残っていたり。……違うかしら?」
 その言葉は、美月の心の、一番、柔らかい部分を、的確に、言い当てていた。
 美月は、涙ぐみながら、こくりと、小さく、頷くことしかできない。

「大丈夫よ。あの、不器用で、真っ直ぐな騎士様は、全身全霊で、あなたを愛しているわ。あなたも、自分の心に、素直になればいいのよ」
 グリネヴィアは、まるで、本当の姉のように、美月の背中を、優しく、さすってくれた。
 この世界に来て、初めてできた、女友達。その存在が、どれほど、心強いものか。

 その時だった。

「ミツキ! こんなところにいたのか!」
 訓練を終えたらしいガウェインが、庭園の向こうから、大股で、駆け寄ってくる。
 そして、美月の隣に座るグィネヴィアを見て、一瞬、警戒するように、眉をひそめた。

「……王妃様。ミツキに、何か、いじめたりは、していないでしょうな?」
 その、あまりにも失礼で、過保護な物言いに、美月とグィネヴィアは、顔を見合わせ、そして、同時に、噴き出してしまった。

「ふふっ。大変ね、ミツキちゃん。この、やきもち焼きの騎士様のお世話は」
 グィネヴィアが、楽しそうに、美月の耳元で囁く。

「え? なんだ、二人して、笑って!」
 状況が理解できず、きょとんとしているガウェイン。

 その光景は、あまりにも、平和で、幸せに満ちていた。
 私の、頼もしい騎士様と、優しくて、美しい、お姉様。
 美月は、もう、このキャメロットが、自分の、大切な「居場所」になっていることを、確信していた。
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