社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第15話 星空の下の、本当のキス

 城壁崩落の危機を乗り越えたその夜。
 キャメロット城は、ようやく、静けさを取り戻していた。
 美月は、興奮と疲労で、なかなか寝付けずにいた。彼女は、部屋のバルコニーに出ると、ひんやりとした夜風に当たりながら、満天の星が輝く、どこまでも広い空を見上げていた。

 昼間の、怒涛のような出来事が、頭の中を駆け巡る。
 崩れ落ちる瓦礫の轟音。兵士たちの苦悶の声。そして、自分の指示で、一心不乱に、巨石を持ち上げる、ガウェインの雄々しい姿。

(……私たち、本当に、すごいことを、成し遂げたんだわ)

 共に、戦い、共に、命を救った。その確かな実感は、美月の胸に、今までにない、誇りと、そして、深い、深い、愛情を刻み付けていた。

「……ミツキ」

 静かな声に、振り返る。
 いつの間にか、ガウェインが、バルコニーの入り口に、立っていた。
 夜の闇の中、彼は、昼間のような、太陽の輝きはない。だが、星明かりに照らされたその横顔は、穏やかで、いつもより、ずっと、大人びて見えた。

 彼は、美月の隣に立つと、同じように、黙って、星空を見上げた。
 しばらく、二人の間に、心地よい沈黙が流れる。
 いつもなら、何かと、賑やかに話しかけてくる彼が、今は、何も言わない。その静寂が、昼間の激闘を乗り越えた、二人の間の、新しい、深い絆を、物語っているようだった。

 やがて、彼が、静かに、口を開いた。

「なあ、ミツキ。今日、俺、本当に、分かったんだ」
 その声は、低く、真剣だった。

「俺は、ずっと、騎士の務めとは、女を、危険から、遠ざけることだと思ってた。だが、お前は、違うんだな。お前は、危険の、ど真ん中に、飛び込んでいく。そして、その知恵と、勇気で、周りの奴らまで、強くする。……そんな強さは、俺が、今まで、見たこともないものだ」

 それは、ただの賞賛ではない。
 彼の、騎士としての価値観を、根底から、揺さぶられたという、驚きと、そして、魂からの、尊敬の言葉だった。
 美月の胸が、熱くなる。

「……私、一人じゃ、何もできませんでした。ガウェインさんの、あの、圧倒的な力が、皆に、希望を与えてくれたんです。あなたの強さが、私の作戦に、命を吹き込んでくれたんですよ」

 彼女は、彼に、向き直る。

「私たちが、揃って、初めて、最強のチームになれるんです」

 その言葉に、ガウェインは、息を呑んだ。
 そして、星明かりが映り込む、その青い瞳で、彼女を、じっと、見つめた。
 彼は、そっと、両手で、彼女の手を取る。

「俺は、ずっと、太陽が、俺の力の源だと思ってた。でも、違ったんだ」
 彼は、空いている方の手で、彼女の頬を、優しく、包み込んだ。

「お前だ。ミツキ。お前が、俺の、太陽なんだ。朝も、夜も、いつだって、俺を、照らしてくれる」

 あの、戦場で、彼が叫んだ言葉。
 今、この、静かな星空の下で、囁かれるその言葉は、何倍も、何十倍も、重く、甘く、美月の心に、沁みわたっていく。
 もう、迷いも、不安も、何もかもが、彼の、その熱い瞳の中に、溶けていくようだった。

 美月は、そっと、手を伸ばすと、彼の、日に焼けた頬に、触れた。

「……ガウェインさん」
 彼の顔が、ゆっくりと、近づいてくる。
 美月は、もう、目を逸らさない。彼女もまた、ゆっくりと、顔を上げた。

 星空の下で、交わしたキスは、どこまでも、優しくて、穏やかだった。
 それは、じゃれ合いでも、不意打ちでもない。
 お互いを、かけがえのないパートナーとして、認め合い、そして、愛していることを、確かめ合う、初めての、本当のキス。

 唇が、離れた後も、二人は、額を寄せ合ったまま、しばらく、動けなかった。

「……愛してる、ミツキ。太陽よりも、ずっと」
「私も、愛してます。私の、たった一人の、騎士様」

 キャメロットの、満天の星の下。
 時を超えて、出会った二つの魂は、今、確かに、一つに、結ばれたのだった。
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