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第20話 観察者の変化と、騎士様への手紙
美月の、あまりにも鮮やかな問題解決は、瞬く間に、近隣の村々へと、伝わっていった。
彼女が、エルリックと共に、次の村へと到着する頃には、もはや、彼女を「魔女」と呼ぶ者は、一人もいなかった。
村人たちは、救いを求めるように、彼女を「キャメロットの天使」と呼び、その言葉に、敬虔に、耳を傾けた。
どの村でも、原因は、同じだった。
先の嵐によって、水源が、動物の死骸や、崖崩れの土砂で汚染されていたのだ。
美月は、村人たちに、水源の浄化と、水を煮沸して飲むことの重要性を、根気強く、説いて回った。
その傍らで、エルリックは、何も言わずに、ただ、彼女の働きを、静かに、観察し続けていた。
その日の夕暮れ。
その日に滞在する村の、簡素な宿屋で、美月は、羽ペンを手に、羊皮紙へと、向かっていた。
(ガウェインさんへ。きっと、心配していますよね……)
彼への、初めての、手紙。何を書こうか、迷いながら、彼女の口元には、自然と、笑みが浮かんでいた。
その時、部屋の扉が、静かに、ノックされた。
「……エルリック様?」
入ってきたのは、意外な人物だった。
彼は、いつものように、感情の読めない顔で、部屋の中へと、足を踏み入れる。
「貴様の、働き、見させてもらった」
静寂を破り、彼が、ぽつりと、呟いた。
「貴様の言う、『科学』とやら……。それは、我らの『魔術』とは、全く、理の異なる、力らしいな」
その言葉には、以前のような、敵意はない。ただ、純粋な、知的好奇心の色が、浮かんでいた。
美月は、驚きながらも、静かに、頷いた。
「科学は、現象を観察し、仮説を立て、それを、証明していく、知恵の積み重ねです。誰にでも、学ぶことのできる、普遍的な、力ですよ」
その言葉に、エルリックは、深く、息を吐いた。
「……なるほど。だからか」
彼は、美月を、じっと、見つめた。
「貴様は、その力を、自分のためではなく、民のために、使っている。……魔女とは、己の欲望のために、力を振るう者。貴様は、魔女ではない。それは、この目で、しかと、確認した」
それは、彼からの、完全な、敗北宣言であり、そして、最高の、賛辞だった。
美月の胸に、温かいものが、込み上げてくる。
「……ありがとうございます、エルリック様」
彼は、踵を返すと、部屋から、出て行こうとした。
だが、扉の前で、一度だけ、立ち止まる。
そして、振り返ることなく、静かな声で、言った。
「……太陽の騎士は、息も絶え絶えだぞ。貴様という、太陽を失ってな。……早く、帰ってやれ」
その、あまりにも、人間味のある、不器気な言葉。
美月は、思わず、噴き出してしまった。
扉が、静かに、閉まる。
一人、部屋に残された美月は、先ほどまで書いていた、手紙へと、視線を戻した。
エルリックとの、予期せぬ和解。そして、彼の口から聞いた、愛しい人の、近況。
彼女の胸は、今、キャメロットへ帰りたいという、強い、強い、想いで、いっぱいだった。
彼女は、インク壺に、ペン先を浸すと、迷いのない、滑らかな文字で、羊皮紙を、埋めていく。
『――私の、たった一人の、騎士様へ。
私は、元気です。こちらの仕事も、もうすぐ、終わりそうです。
だから、どうか、私の太陽でいてください。
私が、あなたの光を目指して、帰れるように――』
その手紙を、伝令の鳥の足に、固く、結びつけながら。
美月は、キャメロットの、高い空を、見つめていた。
もうすぐだ。もうすぐ、あなたの元へ、帰れる。
その、確かな希望が、彼女の心を、強く、照らしていた。
彼女が、エルリックと共に、次の村へと到着する頃には、もはや、彼女を「魔女」と呼ぶ者は、一人もいなかった。
村人たちは、救いを求めるように、彼女を「キャメロットの天使」と呼び、その言葉に、敬虔に、耳を傾けた。
どの村でも、原因は、同じだった。
先の嵐によって、水源が、動物の死骸や、崖崩れの土砂で汚染されていたのだ。
美月は、村人たちに、水源の浄化と、水を煮沸して飲むことの重要性を、根気強く、説いて回った。
その傍らで、エルリックは、何も言わずに、ただ、彼女の働きを、静かに、観察し続けていた。
その日の夕暮れ。
その日に滞在する村の、簡素な宿屋で、美月は、羽ペンを手に、羊皮紙へと、向かっていた。
(ガウェインさんへ。きっと、心配していますよね……)
彼への、初めての、手紙。何を書こうか、迷いながら、彼女の口元には、自然と、笑みが浮かんでいた。
その時、部屋の扉が、静かに、ノックされた。
「……エルリック様?」
入ってきたのは、意外な人物だった。
彼は、いつものように、感情の読めない顔で、部屋の中へと、足を踏み入れる。
「貴様の、働き、見させてもらった」
静寂を破り、彼が、ぽつりと、呟いた。
「貴様の言う、『科学』とやら……。それは、我らの『魔術』とは、全く、理の異なる、力らしいな」
その言葉には、以前のような、敵意はない。ただ、純粋な、知的好奇心の色が、浮かんでいた。
美月は、驚きながらも、静かに、頷いた。
「科学は、現象を観察し、仮説を立て、それを、証明していく、知恵の積み重ねです。誰にでも、学ぶことのできる、普遍的な、力ですよ」
その言葉に、エルリックは、深く、息を吐いた。
「……なるほど。だからか」
彼は、美月を、じっと、見つめた。
「貴様は、その力を、自分のためではなく、民のために、使っている。……魔女とは、己の欲望のために、力を振るう者。貴様は、魔女ではない。それは、この目で、しかと、確認した」
それは、彼からの、完全な、敗北宣言であり、そして、最高の、賛辞だった。
美月の胸に、温かいものが、込み上げてくる。
「……ありがとうございます、エルリック様」
彼は、踵を返すと、部屋から、出て行こうとした。
だが、扉の前で、一度だけ、立ち止まる。
そして、振り返ることなく、静かな声で、言った。
「……太陽の騎士は、息も絶え絶えだぞ。貴様という、太陽を失ってな。……早く、帰ってやれ」
その、あまりにも、人間味のある、不器気な言葉。
美月は、思わず、噴き出してしまった。
扉が、静かに、閉まる。
一人、部屋に残された美月は、先ほどまで書いていた、手紙へと、視線を戻した。
エルリックとの、予期せぬ和解。そして、彼の口から聞いた、愛しい人の、近況。
彼女の胸は、今、キャメロットへ帰りたいという、強い、強い、想いで、いっぱいだった。
彼女は、インク壺に、ペン先を浸すと、迷いのない、滑らかな文字で、羊皮紙を、埋めていく。
『――私の、たった一人の、騎士様へ。
私は、元気です。こちらの仕事も、もうすぐ、終わりそうです。
だから、どうか、私の太陽でいてください。
私が、あなたの光を目指して、帰れるように――』
その手紙を、伝令の鳥の足に、固く、結びつけながら。
美月は、キャメロットの、高い空を、見つめていた。
もうすぐだ。もうすぐ、あなたの元へ、帰れる。
その、確かな希望が、彼女の心を、強く、照らしていた。
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